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【読書のきろく】大島 隆, 芝園団地に住んでいます, 明石書店, 2019.

※【読書のきろく】シリーズは自分が見返すための読書記録であり、わかりやすさや正確性を重視していません。
うろ覚えで記載している部分があること、ご了承ください。

ーー住民の半分が外国人になったとき何が起こるか

不動産を学ぶ中で、「外国人は家が借りにくい」と言う話をよく耳にする。

実際にデータでも出ていると言う。

それなら、外国人可の不動産物件を作ってしまえばいいと思った。

ただ、近くに住む住民はどんなイメージを持つのか。
先例を学ぶ気持ちで読み進めた。

多様性を推進するとはどう言うことか。

この度の大統領選でトランプ政権になることが決まり、多様性の在り方について問われている2025年に改めて考えさせられる内容だった。

芝園団地は半数が外国人(主に中国人)が住む。

残りの半数、多くは40年住み続けた70代以上の日本人である。

長く住んできたからこそ「私たち(日本人)の場所に入ってきた新参者」として中国人を一括りに悪い見方をしてしまう。
そして、”長く住み続けた私たち(日本人)”はいまや少数派である。

一方、芝園団地は外国人との交流の好事例として表彰され、取材が入り、先進的な取り組みをしていると評価される一面もある。

著者が自ら住んでみた感想はどうか。

共存と共生

著作の中では共存と共生について考えている。

共存は、ある一定のルールを持ち、
互いに不都合なく、一定の距離感で生活すること。

例えば、ゴミの分別方法や廊下、公園の使い方についてルールを策定し、看板に張り出す。

そうすれば、施設はきれいな状態を保つことができ、生活をするのには困らない。
これはさまざまな困難の末、芝園団地でできてきたことだ。

一方で共生はどうだろう。

共生を実現するには

共に生きる。
そのヒントは第六章で、著者がカナダのケベックの事例や米国の研究者への質疑で述べられている。

アンケートの結果、日本に住む外国人(著作の中では中国人)は、日本に興味を持ち、日本人と交流したいと思っている人が多かった。

一方で、日本人は「前のままが良かった、外国人と交流したいとは思わない」と回答した人が半数だった。

「外国の方と異文化交流をしたい」と思ってその場所を選んだわけではなく、
気がついたら多くの外国人が自分の愛する団地に住み始めてしまったのだから、そう考えるのも当然だろう。

実際、特権を持っている多数派の人が少数派になることには大きな恐怖を覚えるのだと言う。

“グッドマンはケーキを例に取って説明した。「あなたは人口の六割を占めるが、これまではケーキの九割を食べていた。あるとき、『これからはあなたが食べる分は六割です』と言われる。するとあなたは『なんてことだ。私のケーキが全部取られてしまった!』と感じる。実際にはすべて奪われるわけではないが、もっと取り分が多い状態に慣れていた。より公平に分配するわけですが、取り分が少なくなった人たちは、不公平であり、取られたと感じるのです」"(p. 205)

グッドマンは白人男性の特権階級について述べているが、芝園団地の日本人も同じ。
女性が働きにくい男性社会の組織体制も同じだ思った。

共生に必要なものは

共生に必要なものは、
「本当に守りたいのはなにか?」とヒアリングすることでわかるという。

「すべて取られてしまった!」と感じるかもしれないが、現実は多くのルールを外国人も守っているし、日本人コミュニティだって守られている。

公園の1区画はかつて、テニスクラブがいつでもテニスに使えていたのかもしれない。
今、勝手に使われてしまっている、と感じるならば、現に使っている特定の週の特定の時間は必ずテニスクラブが使えるようにして、残りの時間は誰でも使えるようにしたらよい。

日本人が主体になって支えてきた夏祭り。
みんなで作り上げる「集団の活動」が伝統であり、守りたいものかもしれない。
その集団の活動でみんなの協力で作り上げることに外国人が入ってくれたって良いのではないか。

なんとなく奪われてしまう、と表現するのではなく、一度なにが守りたいものなのか、特定することが大切だという。

これから共生する地域を作るなら

芝園団地は、受け入れ態勢ができていなかったために、暗黙の了解を守れない中国人を一括りに悪者扱いしてしまった。

これから新たに外国人を受け入れる環境を作るのであれば以下のことを守りたい。

  1. 受け入れ態勢を事前に準備しておく
    例: 明文化されていないルールを他言語でわかりやすく記載する(ゴミの分別、夜の大声や公園の使用時間、廊下の使い方など)

  2. 地域住民の集まりを定期的に開催する
    例: 日本の文化を教える教室、日本語・外国語教室、料理教室、スポーツ教室など

  3. 集まりに参加したくない、共存できれば良いと考えている人たちにヒアリングをし、「大切にしたいもの」を明らかにする。それをルールに組み込む。

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