春風日菜
3年E組
春風 日菜
今年の私の誕生日に、私は不思議な体験をしました。
誰も信じてくれませんが、これは本当の事なんです。
私には小学生からの夢がありました。
中央区にあるD大学に行って、将来はEという職に就くことでした。
そのためにこのAという町に越してきてこの高校にはいりました。
成績も悪くなく、私はD大学へ本当に推薦で入学が決まってしまいました。
夢のようでした。
残るはE職に就くだけです。
けれど、私は出会ってしまいました。
誕生日の放課後、もうほとんど部活も授業もないので早い時間に帰路に着いた日がありました。
帰り道、私の知っている道なのに、なんだか知らない道のような、そんな気がしたんです。
ひとりで下校していたので、親友のTはいませんでした。
彼女はこの高校で出来たかけがえのない親友です。例にも漏れず彼女からもお祝いの言葉をもらいました。
なんだか胸騒ぎがしてTに電話をしましたが、「お掛けになった電話番号は、現在使われておりません」とのアナウンスが流れました。
その時は、電源が切れているのかなと思ったのです。
兎も角はやく帰らなくては。今日は家族がお祝いしてくれます。
ケーキも、単身赴任中のパパも待っています。
けれど、家について見たのは、誰かの出棺のときでした。
訳がわかりませんでした。
パパがいました。でも、泣いていました。
ママもケーキではなく誰かの遺影を持っていました。写真はよく見えませんでした。
なにも聞いてない私は動揺を隠せずパパに声をかけます。
「パパ、どうしたの?誰が亡くなったの?」
私が声をかけてもパパはなにもいいませんでした。
その時、ママの持っている遺影が見えました。
そこには私の顔が、卒業アルバムに載る予定だった写真が使われていました。
ビックリして声が出ませんでした。
「まさか日菜ちゃんが卒業一ヶ月前に亡くなるなんて…」
そんな声まで聞こえてきました。
嘘だ、夢だ、覚めろ覚めろ!!
私はその場にしゃがみこみ、何度も何度も唱えました。
その時Tから着信がありました。
「日菜?どうしたの?ごめんさっき充電切れててさ~!」
電話に出ると同時に顔をあげると、いつもの家の前でした。
誰も死んでなんか居ませんでした。
葬儀なんかありませんでした。
「T…?私生きてるよね?」
つい確認してしまいましたが、なに変なこと言ってるの!とTは笑っていました。
「ただいま!」
私は安心して家に入りました。
そこにはパパもママもいて、ケーキも用意されていました。
「おかえり日菜」
「久しぶりだな、日菜。また身長伸びたか?」
「パパ!ママ!」
なんだか悪い夢を見た気持ちでした。
そんな出来事が高校生活で一番印象に残っています。
というのも、明日が丁度、卒業一ヶ月前だからです。
Tも私も元気です。
二人で卒業式は袴を着たいと思っています。