居酒屋は衰退し会食サービスは多様化する
withコロナ時代、外食産業がどのように変化するかを考察する。
「居」「酒」の需要減退
居酒屋は読んで字のごとく「一緒に居ながら」「酒を飲む」お客さまにサービスを提供する業態。
withコロナ時代、ただ単に一緒に居る時間はリスクそのものなので、減少していくのではないか。
併せて、酒を飲む人も減るだろう。この予測には2つの背景がある。
1つ目は、そもそもアルコールを摂取しない人が増えるということ。
タバコは、平成初期には年間で約3,300億本吸われていたが、令和元年には約1,200億本まで減少している(出典:一般社団法人日本たばこ協会、年度別 販売数量実績推移)。
健康志向の文脈にて、アルコールも同様の道筋をたどるのではないか。
2つ目は、居酒屋ではなく家で飲む人が増えるということ。
約2ヶ月のstayhome期間やオンライン飲み会を通じて「家で飲むの、いいじゃん」と気づいた人が相当数いるはず。
家で飲んだほうが安いし、楽だし、安心。
「あの人10杯以上飲んでて自分は2杯しか飲んでないのに同じ額での割り勘かよ」的な不満もなくなる。
「会」「食」の需要は不変
「居る」と「会う」は似ているようでまったく違う行動。
忘年会や同窓会等で「仲良くない人と大した意味もなく一緒に居る」ことと、家族や友人、恋人、大事なお取引様と「わざわざ時間とお金を掛けて会う」ことには、雲泥の差がある。
前者は居酒屋業態が¥3,000〜¥5,000で取ってきた需要。人によってはイヤイヤ支払っている。
後者は会食に適したお店が¥8,000〜¥10,000、もしくはそれ以上の金額で取ってきた需要。支払う側もほぼ100%、気持ちよく支払っている。
前者は衰退し、後者はwithコロナ時代も不変だろう。むしろ、前者に掛かっていた時間とお金は後者に流れるのではないか。
会食はアルコール必須ではない
会食需要は「大事な人に会って」「美味しい食事(体験)を共有する」ことが目的なので、アルコールは必需品ではない。
ノンアルコール飲料やお茶、スパークリングウォーター、食事にペアリングをして体験価値を向上することができればそれは必ずしもアルコールである必要がない。
もちろん、人間関係を円滑にする意味でのアルコール需要は残る。
ただそれは飲み放題¥1,500や「ビールやハイボールを水代わりにガバガバ飲む」といったアルコール需要ではなく、想いやストーリーを纏ったワインや日本酒など「会食」という特別な日に相応しいアルコール飲料になる。
2年前にアルコールを辞めた私も、こういう文脈でのワインや日本酒なら適量はいただくと思う。
会食サービスは多様化する
会食需要は不変だからといって、beforeコロナの会食者たちがこれまで同様のbehaviorを継続するかといったら、そこは考察の余地がある。
レストランなら個室ニーズが高まるだろう。
通常席でもソーシャルディスタンスに注意を払うだろう。
個室ニーズに投資額を増やしても良い人には、リッツカールトンやグランドハイアットの空室を利用してルームサービスで食事をし、宿泊せずに解散するというニーズも出てくるかもしれない。
ホテル側も平日に空室にしておくならこうした需要を取り込んだほうが良いし、一般化して1日2回転できるようになったら通常の宿泊よりも利益を生み出すかもしれない。
会食場所として自宅や自宅マンションのラウンジスペースを選択する人も増える気がする。食事はそれなりのお店のテイクアウトや出張シェフ的な人に頼めば特別感も演出できる。
付き合う前のカップルで2人でプライベートな部屋に入るのに抵抗が生まれるケースや、大事なお取引先とはいえ部屋に2人になるのは性別かかわらずコンプライアンス的にどうなんだ的な課題には、新たな会食サービスが解決策として生まれるだろう。
居酒屋はファンビジネスへ
未来が今回の考察通りになると居酒屋業態はこの世から無くなるわけだが、そうなると困る人も出てくる。
アルコールを飲まなくなった私にさえ、守りたい居酒屋はある。
そうなった場合、ファンビジネスに転換できた居酒屋は生存し続けるだろう。
年会費を取ったり、定期的に家呑みセットを郵送してもらったり、家に居ながら店主とzoomと繋がれたり。
スーパーで買う刺し身より居酒屋で食べる刺し身は段違いに美味しいし、コンビニで買うツマミと居酒屋で出てくるツマミは比較にならない程の差がある。
座ったら何も言わずに炭酸水に氷が2個、カットされたレモンが入った一杯目が出てくることや、「いつものを」と言えばごぼうの唐揚げとアボカドのわさび醤油和えが出てくることは、私にとってはナニモノにも変え難い顧客体験だ。
夏になれば野菜嫌いな私も率先して注文する野菜創作料理を楽しみにしているし、ブリしゃぶを注文すると「冬が来たな」と感じる。
衰退すると予測しているからといって、潰すわけにはいかない。というわけで、客に愛された居酒屋は繁栄するだろう。その意味でこれからの居酒屋の競合はアイドルやアーティスト、スポーツチームなのかな、とも思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?