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経産省T検査官 証人尋問再現(統合版)

経産省の上席安全保障貿易管理官T(当時)は、2017年10月から2018年2月に行われた経産省と警視庁公安部の打合せに10回程度出席していました。打合せでは公安部の殺菌概念及び証明方法について難色を示していたことが明らかになっていたところ、T検査官は「個人的な発言であった」と陳述していました。証言台でもそのスタンスを崩さず、曖昧な証言に終始していたことから、当事務所は独自に入手した経産省内部メールを弾劾証拠として提出し、当時の経産省内部の議論を明らかにしました。

以下は、被告東京都、原告による各主尋問をベースに、原告主尋問、被告国反対尋問、被告東京都再主尋問、裁判所補充尋問を統合して、論点ごとに整理したものです。
各尋問及び証言は、当事務所の弁護士のメモをベースにしているため、一部再現に不十分な点がある可能性があることをご了承ください。


1. 導入

〈被告東京都主尋問〉
乙14(陳述書)に訂正はありますか。
→ありません。

 あなたは安保管理課にいましたね。
→はい。

 主な業務はなんですか。
→事後審査を行っている。

 事後審査以外の業務は何かがありますか。
→警察との相談窓口を担当していた。

 全国の警察ですか。
→はい。

 それ以前に、安保関係の業務を行ったことはありますか。
→ありません。

 <原告主尋問>
2016年から2019年までの間、安保管理課内でのあなたの役職は、上席安全保障貿易検査官でしたね?
→はい。

 経済産業省で外為法のリスト規制に携わっている部署には、あなたが所属していた安全保障貿易管理課のほかに、安全保障貿易審査課がありますね?
→はい。

 経済産業省が公表している幹部名簿を見ると、安全保障貿易管理課、審査課のトップとしてそれぞれ課長がいて、検査課内の検査官室のトップとして検査室長がいるようですが、このような理解でいいですか?
→はい。

 2. 警視庁公安部との打合せ

(1)相談の趣旨

〈被告東京都主尋問〉
安保管理課で原告会社の噴霧乾燥器が輸出規制に該当するかの相談を受けましたか。
→はい。

 2017年10月6日〜2018年2月28日の相談のことを伺います。RL5の要件ハ該当性が相談内容でしたか。
→はい。

 どういった内容でしたか。
→最終的には貨物の該非判定、法令判定、意見照会の添付資料に関する相談だった。

 輸出貿易管理令「滅菌又は殺菌ができるもの」の運用、解釈はわかりますか。
→はい。

 公安部に通達の解釈が用いられていることを伝えましたか。
→伝えていると思う。

 どの段階で伝えましたか。
→初期の段階。

 丙2を示します。2枚目以降、別添資料3。資料添付の内容も相談を受けていましたか。
→はい。

 添付する資料についてアドバイスしましたか。
→まず、警察がこういう事を考えているといって出してきた記憶である。

 相談への対応は何名でしたか。
→3名か4名。

 〈被告国反対尋問〉
相談の回数は13回とあるが一般的な外為法の事案として標準的ですか。
→平均かちょっと多い。
 
10回以上はよくあることですか。
→はい。

 (2)打合せでの発言は個人的な見解か。

〈被告東京都主尋問〉
相談での回答は経産省の公的な回答ですか。
→該非判定の途中の段階の発言だったので公的な見解は述べていない。

 相談でのあなたの立場はどのようなものでしたか。
→経産省の相談窓口として対応していた。

 公的な見解はいつの時点で述べるものですか。
→内部で該当非該当の確認をした後である。

 陳述書では個人的な意見を述べていたと記載されているが、該非判定等でどのような意見を述べましたか。
→まだ決まっていない段階なので、非該当の可能性をかなり多く申し上げたと思う。

 数多く言った趣旨はなんですか。
→警察が熱心だったので、待ってください、まだ確認の途中ですとお伝えし、クールダウンしたかった。

 勘違いされては困るということですか。
→そういう事もあった。

 経産省内の理由を伝えましたか。
→私が想像で喋ったこともあるし、一部そういった意見が出たこともある。

 それは個人的な意見ということですか。
→はい。

 個人的な意見と伝えたことはありますか。
→言ったかどうかは記憶にない。まだ途中で少なくとも決定していないとは伝えたと思う。

 本件相談で経産省の意見が決定だとは言っていないということですか。
→はい。

 <原告主尋問>
2017年10月から2月にかけて、一連の警視庁との打合せは、経済産業省本館の会議室で行われましたね?
→そうだったと思う。

あなたが打合せに出席する際には、他の安全保障貿易検査官、具体的にはN検査官、T検査官と一緒に出席していましたね?
→はい。

安全保障貿易管理課の課長補佐、Kさんも何回か打合せに出席していましたね?
→はい。

 あなたは陳述書で、打合せでのあなたの発言について、個人的見解だったと述べていますね?
→はい。

 実際のところ、管理課の上層部や、審査課も巻き込んで、省内で出た意見を踏まえて、あなたが経産省を代表して、警視庁との打合せで発言をしていたのではないですか?
→まだ途中段階のものを個人的な感触として伝えていただけである。私が省内の意見を伝えることもあるし、私が個人的に考えたことを伝えることもあった。誤解して言ったこともあるかもしれない。

 相談の経過は、検査官室長に報告されていましたか?
→逐一ではないがしていた。

 管理課の課長に報告されていましたか?
→逐一ではないがしていた。

 審査課の課長には報告されていましたか?
→逐一ではないが大きな流れとして相談していた。

 <被告国反対尋問>
可能な限り貨物等省令の用語の解釈は運用通達に示していますか。
→はい。
 警察から相談を受けた時に運用通達は初期に示しましたか。
→はい。
 この解釈に原告会社の噴霧乾燥器が当てはまるかどうかを検討していたということですか。
→はい。
 回答を判断するにあたり、資料が必要なものを内部で検討していたということですか。
→はい。

(3)1種類の菌を死滅できれば該当か

<被告東京都主尋問>
要件ハは、大腸菌等の菌のうち1つでも殺菌出来ればいいと外事課員に伝えた記憶はありますか。
→相談のときか、相談の後なのかは分からないが伝えたと思う。

 <原告主尋問>
乙14号証(陳述書)2頁〜3頁を示します。公安部に伝えた時期について「検討や確認が終了した後」とは具体的にはいつ頃ですか?あなたが警視庁と打合せをしていた時期は2017年10月〜2018年2月です。それよりも後ですか?
→はっきりと覚えていないが2月〜3月ではないか。

 では、警視庁との打合せが行われていた期間の前半、2017年10月から12月くらいの話を聞きますが、あなたは、ハの要件「内部の滅菌又は殺菌をすることができるもの」の「殺菌」について、定義や解釈が存在せず、意味が不明確だと考えていませんでしたか?
→不明確というよりは、殺菌の具体的な立証方法について話した。

 2017年10月11月には殺菌の概念は固まっていましたのか?
→最初のうちは私の知見が足りなくて殺菌がどういうものか誤った可能性はある。警察とはどうやって証明するのかという話をしていた気がする。

 省令に列挙された細菌等のいずれか1種類でも、噴霧乾燥器の内部から死滅させることができれば、殺菌に該当すると考えていましたか?
→覚えていない。 

(4)解釈が曖昧だと述べたか

<被告東京都主尋問>
解釈が曖昧だと述べた記憶はありますか。
→具体的な記憶はない。

 <原告主尋問>
11月7日の打合せは、初めてK課長補佐が出席した打合せでしたね?
→はい。

 その打合せでK課長補佐は、その時点における経産省としての考えを述べましたね?
→Kが何を言ったか覚えていない。

10回も打ち合わせに出席しておいて詳しいこと何も覚えていないの?
→はい。

 殺菌については、その時点の経産省の考えとして、「省令の規定があいまいで解釈もはっきり定めていない。まずは省令の改正やAGへの提案が先ではないかと思っている。」と述べていませんでしたか?
→言いそうにない。

ではその席で笠間さんが言ったかはともかく、その当時経産省内において、そのような意見はありましたか?
→ないのではないか。

 大腸菌だと少し弱いのではないかとの意見が出ましたか?
→笠間からはない。

 <左陪席裁判官補充尋問>
警察から経産省への問い合わせが始まったのはいつですか。
→秋ぐらい。

 それまで何か外部から経産省への問い合わせはありましたか。
→ない。

 警察からの問い合わせが初めてという理解でいいですか。
→はい。

 警察から問い合わせがあると何を確認しますか。
→まずは法令、次は通達。

 通達があることはわかっていましたか。
→はい。

 通達は「物理的手法・・・伝染能力を破壊する」とあるがそれ以外に内部で決まっていたことはありますか。
→明記されたものはない。

 滅菌は明確に定められているが殺菌は定義がないことについて問題意識はなかったですか。
→殺菌は、通達に書いてあるだけなので、あとはどうやって証明したらいいのか、該非判定をするのかということは警察と打ち合わせをした記憶。最終的には該非判定を確認したいわけだが、それに伴い、一般的な殺菌は?、ということで日本薬局方やCISTECの話があったのだと思う。一般的な定義と広めに考えていることはあるが、結局は法令に書いてあるとおりというところで落ち着いた。

 この通達当時から「1種類の以上の菌を殺せれば」の定義は持っていましたか。
→明確な規定、マニュアルはなかったが、大腸菌の話を聞いた時に、それをもって該当だと思うのは自然だった。経産省内でも確認したが、問題ないということだった。

 

(5)曝露防止性能について

<被告東京都主尋問>
曝露防止は規制要件になっていますか。
→なっていない。

 それはなぜですか。
→法令に書いていないから。

 曝露防止の要件該当性について、誤解の可能性がある話を警察にした記憶はありますか。
→内部では曝露防止ができるものに限定したらどうかという意見があったのでコメントしたかもしれない。記憶にはないが。

 <原告主尋問>
丙2RL5に関する照会書を示します。あなたは陳述書で曝露防止の点に触れたことがないと述べていますが、警視庁からの照会書の添付資料24(日本無機)/25(藤崎電機)として、HEPAフィルタによる曝露防止に関する資料が添付されていますが、これは、あなた方経産省が曝露防止を求めたから照会書の添付資料となっているのではないですか?
→知りません。警察提出の資料のうち、個別にこの資料はいらないといった話はあまりしていないと思う。

 捜査メモに、「HEPAフィルタから菌が漏れないことが求められる」とのコメントが残されているようなのですが、あなたが言ったかどうかではなく、そのような考えが経産省内部にありませんでしたか?
→ありません。

 <被告国反対尋問>
該非判定をするにあたり、警察から資料提供を受けたりあるいは経産省から資料を求めたということでいいですか。
→はい。

よほど無関係なものは除いて、経産省からこの資料はいらないということはありますか。
→あまりないと思う。

 (6)AG参加国の状況等について述べたか

<被告東京都主尋問>
AG参加国で乾熱殺菌を規制する他の国はないと伝えたことはありますか。
→他の国の状況は全て分かっていたわけではないので、断定的なことは伝えていないと思う。

 他国の参加国の状況を知っていましたか。
→勉強してみようと思った記憶はあるが実際よく分からなかった。

 日本が独自の規制をすることについてどのように伝えましたか。
→一般的な意味で、一つの国の規制が緩かったり厳しかったりするのは良くないと伝えたことはある。

 あなたのお考えですか。
→一般論、常識的な話として話した。

 法令解釈に影響があるという趣旨で話した記憶ですか。
→そのような記憶はない。

 <原告主尋問>
あなたは陳述書で、AG参加国の規制状況を知らなかったと書いていますが、当時経産省内部において、AG参加国の規制状況はどうだったのかについて議論はありませんでしたか?
→国際室に訊いたりはしたと思うが、理解はしていない。

(7)コールドスポットの指摘をしたか

<被告東京都主尋問>
温度が上がりにくい部分があるといった話は出たことがありますか。
→実証実験の時に警察の話で機器の内部で温度が違うという話が出た記憶がある。

 丙4を示します。資料8の図面を見ましたか。
→このような図面を見た記憶はある。これそのものだったかは分からない。

 どこの温度が低いということになりましたか。
→発言したかは記憶にないが、乾燥室とバグフィルタで温度が上がりにくいかもしれないという話は出た。誰が話したかはわからない。そういうことを思った記憶はある。

 <原告主尋問>
あなたは陳述書で、噴霧乾燥機がサイクロン、バグフィルタというようないくつかの機材で構成されており、それらの機材によって温度が異なるのではないかという話が出たと書いていますが、そういう大まかな構造ではなく、乾燥室内に温度が上がりづらいデッドスペースのような箇所があるという指摘をしていませんか?
→指摘はしていません。

 警察に指摘したかどうかはともかく、そのような議論が経産省内でなされていませんでしたか?
→議論した記憶もない。

 (8)許可実績が1件しかないことを指摘したか

<被告東京都主尋問>
噴霧乾燥器の輸出許可をしたのは1社のみだと伝えたことはありますか。
→ある。

(9)芽胞形成菌を指標菌とすべきことを指摘したか

<被告東京都主尋問>
芽胞形成菌じゃないと殺菌に当たらないと述べたことはありますか。
→警察から実証実験を大腸菌でやってよいかという話の時に、大腸菌は法令の対象菌で問題ないとは思ったが、念のためそういった意見があるので該当性を高めるという意味で芽胞菌でもやった方がいいと申し上げたことはある。

 あなたは大腸菌を殺菌をできればよいと思っていたということか。
→大腸菌を殺菌できればいいと心の中では思っていました。

<原告主尋問>
あなたは警視庁との打合せにおいて、ハの要件に該当することについての実証実験は、芽胞形成菌を指標菌として行うべきだという発言をしていませんか?
→芽胞菌もあった方がよいのではないかとは述べた記憶がある。

 当時、経産省内において芽胞形成菌を指標菌とすべきだという意見はありましたか?
→あった。

<被告国反対尋問>
大腸菌では弱いというのはどういった意見でしたか。
→大腸菌だとすぐ死んでしまうかもという話はあった
 内部の議論で、該当という判断を確実に出すためには大腸菌だけではだめだったということですか。
→その方(経産省の職員)は、大腸菌はすぐ死んでしまうかもしれないので、該当ということを確実にするには、大腸菌より熱に強い菌を殺せたほうがいいといっていたのではないかと推測する。
 法令解釈というよりは該当性判断にあたり、ということでいいですか。
→はい。

<被告東京都再主尋問>
大腸菌が弱いという話があったが、言っていたのは経産省の一部の職員だったということですか。
→はい。
 芽胞菌を殺せることが必要と言っていましたか。
→芽胞菌が必要とまで言っていない。大腸菌じゃ弱いんじゃないかとしか言っていない。

 

<左陪席裁判官補充尋問>
大腸菌では弱いという意見もあったことは間違いないですか。
→はい。

 100度で大腸菌が死ぬということは共通認識ですか。
→はい。

100度だとほとんどの噴霧乾燥器が該当すると思うがその理解でいいですか。
→はい。

(10)その他

<被告東京都主尋問>
公安部長から経産省への働きかけで非該当から該当に変わったと聞いた記憶はありますか。
→全くない。

 やり取りの捜査メモが作成されていることは知っていましたか。
→知らなかった。

 捜査メモを確認したことはありますか。
→ない。

 捜査メモが正しいかはわからないということですか。
→はい。

 3.11月20日に行ったCISTECヒアリング

<原告主尋問>
甲158号証を示します。打合せの大きな流れを復習すると、2017年10月6日から相談が始まり、11月7日には捜査幹部である渡辺警視が参加しています。2018年1月に入ると宮園警部、時友警部補らが参加するようになります。そして、2月8日に再び渡辺警視が参加した打合せがされています。渡辺警視が出てきた11月7日と2月8日打合せでは、経産省側は、管理課の課長補佐であった笠間大介さんも参加していましたね?
→警察の上の方が出てきているのであれば出たかもしれない。

 11月7日の打合せの後、経産省は、11月20日にCISTECの藤井さん、東郷さんのヒアリングを行いましたね?
→覚えていない。

 丙A105号証(証拠品複写報告書)添付の藤井さんのメール及びそのメールチェーンを示します。メールチェーンの時系列に沿って後ろから見ていきます。まず、CISTEC東郷さんから経産省の皆さん宛の11月14日午後1時26分のメール。こちらは、東郷さんが経産省の小間雅斗(まさと)さんからのヒアリング要請を受諾したというメールですね?
→はい。

小間さんは当時、管理課内の国際室という部署の係長でしたね?
→はい。

 CCにあなた、長町さん、田村さんが入っています。一人CCに入っている人が黒塗りになっていますが、こちら、経産省の荒木英輔(えいすけ)さんです。荒木英輔さんは現在安全保障貿易国際室長をされている幹部の方ですが、当時は管理課の課長補佐でしたね?
→はい。

 次、11月14日午後1時41分の小間さんのメール。こちら、冒頭の「東郷様」の後が黒塗りされていますが、藤井さんです。CISTECの東郷さんと藤井さんにヒアリングの日時場所を案内したメールですね?
→そうだと思います。

 ヒアリングは、11月20日15時〜18時に経産省本館の会議室で行われたのですね?
→はい。

 このヒアリングは、経産省で滅菌殺菌の解釈を整理するにあたり、CISTECの知見を聞くことを目的として行われたものですね?
→東郷さんはAGの知見が高いので経緯を伺ったのではないか。はっきり覚えていない。

 丙A105号証(証拠品複写報告書)3枚目「噴霧乾燥機資料」を示します。この紙面の右肩に2017年11月20日と日付が書かれています。こちらは11月20日にCISTECが持参してきた資料の一覧ですね?
→はっきり分からない。

 これらの資料が何の資料か記憶喚起できないのですか?
→資料からすれば噴霧乾燥機の滅菌殺菌に関する藤井さんの認識についての説明。

 資料の9~は何の資料ですか。
→ちょっと良くわからない。

 資料7は2015年5月にAGの会議で某国が規制要件3、すなわち滅菌殺菌要件を見直す必要があると説明した際の資料ですね?
→ご存じの内容だと思います。

 資料5・6は、これを受けて経産省がCISTECに日本での運用状況を調査してもらった際の大川原化工機に関するやり取りの資料ですね?
→はい。

 再び丙A105号証3枚目「噴霧乾燥機資料」を示します。資料番号8から12が滅菌の定義に関する日本薬局方やJISの資料ですね?
→よく分からない。

 資料13は殺菌に関する資料ですが、インターネットサイトWikipediaの解説を印刷したものですね?
→見る限りはそうだと思う。

 資料14がAGの規制文言、15がCISTEC発行のガイダンス、資料16が大川原化工機の製品紹介、資料17が藤崎電機の製品紹介ですね?
→はい。

 ヒアリングではこれらの資料をもとに東郷さん、藤井さんから説明が行われたのですね?
→はい。

 滅菌に関する説明は日本薬局方などの規定で説明しているのに対し、殺菌はwikipedia情報しか資料がないということからすると、CISTECはこの時、殺菌は概念自体が曖昧で、日本では明確な判定基準はないという説明したのではないですか?
→これを見る限りそうだと思います。

 当時の経産省内においても、殺菌については一般的、標準的な定義や解釈は存在しないと認識されていましたか?
→殺菌の解釈は通達にある通りだと思う。世間一般の殺菌の解釈はないと思う。

 法令の細かい具体的な解釈はないということですか。
→通達にある通り。

 再び丙A105号証添付の藤井さんのメール2枚目の下を示します。ヒアリング当日の夜の9時48分、高見さんが東郷・藤井両名に送ったメールです。このメールであなたは、一点、ヒアリングの時に聞いた話について事実確認をしていますね?
→はい。

 その次の11月21日午前8時47分の藤井さんのメール。このメールの中で、藤井さんは、2016年の打合せの際に大川原化工機から「自社の噴霧乾燥機はすべて非該当」と聞いたと書いています。これに対し、同じ日の午前9時45分にあなたは返信を行っていますね?
→はい。

 このメールであなたは、藤井さんに対し、警視庁の打合せを踏まえると、立法段階で大川原化工機からすべて非該当という説明がなされ、2016年にも改めて非該当という説明がなされたのではないか、と藤井さんに問いただしていますね?
→はい。

 これに対し、藤井さんは、10時9分のメールで、立法時には聞いておらず、2016年にすべて非該当と聞いたのだ、と回答していますね?
→はい。

 これらヒアリング後のメールのやり取りは、大川原化工機が、実は立法当初から自社の製品が非該当であるということをCISTECや経産省に告げていたのではないかということが経産省内で問題となり、その真否を藤井さんに確認したもの、と理解してよろしいですか。
→・・・(無回答)

 この一連のやり取りを見ると、警視庁との打合せ内容は、検査官室だけでなく、管理課の上層部、他部署である国際課、さらに他の課である審査課にまで共有され、組織として対応しているように見えますが、違いますか?
→あの、組織としては・・・(回答出ず)

 時間がないので結構です。
→はい。

 <左陪席裁判官補充尋問>
2017年11月CISTECに会ったということですが、CISTEC藤井氏、東郷氏はどういう立場ですか。
→藤井さん、東郷さんはAGの専門家。
 AGのことを聞くときは、CISTECに確認しますか。
→CISTECというよりは藤井さん、東郷さん個人に聞いた。

4.弾劾証拠(2017年12月において経産省内部で議論されていた内容)

<原告主尋問>
これまでの証言に対する弾劾証拠として甲164号証電子メールを提出します。

 (1)経産省内で幹部職員まで情報共有がされていたこと

1枚目冒頭のメール2017年12月26日午前9時25分に渡井啓文(ひろふみ)さん宛に差し出されたメールです。Wさんはご存知ですね?
→はい。

当時、経済産業省 安全保障貿易審査課の係長だった方ですね?
→はい。

 あなたがW係長宛に差し出したメールということでよろしいですか?→はい。


 CCに入っている経産省職員について当時の役職を確認させてください。まず、黒田紀幸さんは、安全保障貿易管理課の課長ですか?
→はい。

 Kさんは管理課の課長補佐ですね?
→はい。

 阿部一也さんは、安全保証貿易検査官室長ですね?
→はい。

 Sさんは管理課の統括係長ですね?
→はい。

 Nさん、Tさんは、安保検査官ですね?
→はい。

 三橋敏宏(としひろ)さんは、安全保障貿易審査課の課長ですね?
→はい。

 Fさんは、審査課の上席安全保障貿易審査官ですね?
→はい。

(2)AG参加国に対して殺菌解釈の問合せをしていたこと

こちらのメールチェーンを遡ります。4枚目を示します。2017年12月11日午後8時7分、ちょうど警視庁と打合せを重ねている頃です。あなたから審査課の三橋課長、F補佐、W係長に宛てたメールですね?
→そのようです。

 用件の2に、「一部の国に、滅菌・殺菌の基準について、問い合わせをしたらどうかと考えており、問合せ案を考えてみましたので、貴課の方で加筆・修正等ありましたらお知らせいただければ」とあり、次の頁を見ると、デンマーク、米国、スイス、ドイツ、イギリスといったAG参加国に対する問合せ案が書かれていますね?
→はい。

 デンマーク宛ての問合せ案に、2015年6月会合及び2016年2月会合、某国より噴霧乾燥機の3の基準に関する質問があったが、日本も現在3の基準について検討中である」と書かれています。ここの3の基準というのは、AGの規制要件のうち3つめ、すなわち滅菌殺菌に関する規制要件のことですね?
→そうだと思う。

 米国、スイス、ドイツ、英国に対する質問事項はほぼ同じなので米国への質問事項について伺いします。最後の質問事項に「米国は、乾熱滅菌が可能な貨物につき、3の基準にmeetすると考えるか」とあります。あなたは「乾熱殺菌」ではなく「乾熱滅菌」について質問しようとしたということですね?
→覚えていない。

 次、12月12日午後5時7分のメール。こちらは審査課の渡井係長からあなたに対するメールで、趣旨としては、「乾熱殺菌」の運用を質問すべきだというものですね?
→そうですね。間違いということかもしれない。

(3)当時経産省は殺菌について定義・解釈がなく悩んでいたこと

 次、12月14日午後2時56分のメール。こちらはあなたから審査課のW係長へのメールで、要するに、乾熱殺菌はもとより難しいと考えていたが、審査課の指摘を受けて管理課内で再検討し、乾熱滅菌に加えて、乾熱殺菌についても質問事項に加えることにした、というものですね?
一般的な定義や…

 私が読むので結構です。「日本において、殺菌について一般的・標準的な定義や解釈がないようで、この部分については、現状悩んでいる状況です。」と、つまり、この時点で経産省においては、殺菌について定義や解釈を有していなかったと書かれていますね?
→はい。

(4)経産省内にてコールドスポットの存在が指摘されていたこと

 次、12月19日午後4時54分、渡井係長からあなたへのメールです。デンマークへの質問事項について審査課の意見が①から④まで書かれています。④に「実際、乾燥室内部にはデッドスペースがあり、」と書かれていますね?
→はい。

(5)経産省内に乾熱殺菌自体への疑問の声もあったこと等 

最後の文章をみると「通常の機能としての乾熱で、効果としての殺菌効果「も」あるというだけで3にあたるとするならば、規制の範囲が相当広くなるとも考えられる」と書かれていますね?
→W係長の意見なのか、上に諮ったかは分からない。

 これらのメールのやり取りをみると、2017年12月当時、警察との打合せを踏まえて、管理課と審査課が、それぞれ幹部全員を交えて、日本における殺菌の定義・解釈が存在しない中で、どのように判定すればよいか検討を行っていた状況であったと思われますが、違いますか?
→個人的な見解かもしれません。

 次、12月25日午後8時36分、あなたから渡井係長へのメール。審査課と管理課の質問事項を統合したとあります。各国に対する質問事項は、①滅菌殺菌されるべき場所、②手法、③その基準、④部分交換に関する解釈と書かれています。要するこれらの点について、この時点で経産省としての考えが定まっていなかったと理解してよろしいですね?
→殺菌の解釈については通達に書いてあるが、参考までに他国のことを知りたかったと思った。

 メールに「悩んでいる」って書いてあるじゃない。
→…(無言)

<右陪席裁判官補充尋問>
警察と経産省との打ち合わせで非該当の可能性を述べたというが、具体的にどういう点で非該当だと言ったのか、具体的にご記憶の限り答えてください。
→滅菌殺菌できるようにCIPがデザインされたものを規制対象としたほうがいいという経産省の意見があったのでその可能性。また、曝露防止は趣旨としては入っており、要件まではなっていないが話には出ている。芽胞菌の点も私が強めに言ったかもしれない。窓口として、後から言われるのも嫌なので、非該当の可能性も広めに・固めに伝えていた。
 
内部でもそういった話はあったということですか。
→あった。ただ規制の範囲を限定することになるので趣旨と違うのではないかということになった。

 最終的に経産省はそういう見解になったということですか。
→はい。最終的に限定をすべきでないという見解となった。

 5 藤崎電機への照会

<原告主尋問>

あなた方はこの頃、藤崎電機に電話をかけて、藤崎電機が唯一行った輸出許可申請の件について、ハの要件を該当とした理由について問合せをしていますね?
→問い合わせていないと思う。

 課として問い合わせていますか?
→していないと思う。

 乙8の23を示します。2017年12月6日の捜査メモです。経産省職員から藤崎電機に問合せの電話をしたとあります。「本社はいわゆる省令ハを該当として輸出をしていますけど、機器は定置した状態で滅菌・殺菌できますか?」と聞かれたとのことです。これは事実ですか?
→分かりません。

 このような問合せを行ったのは、省令ハの判定について経産省自身が明確な解釈運用を持っていなかったからではないですか?
→何をもって明確かということだが、運用通達レベルのものまでは分かっていたが、それ以上の詳細には訊かれればその時点で確認するというものだった。相談があったら内部でいろいろな意見を確認しなければならない。

 6.行政処分その他の監督権限の発動がないこと

本件に関して警察が捜索差押に入ってからしばらく経った頃、経産省は、大川原化工機に対する行政処分を検討しませんでしたか?
→していない。

<被告国反対尋問>
行政処分について、一般論として、警察が捜査している、そういう状況で刑事手続きを終わる前に行政処分を行うことはありますか。
→ない。

 あなたから大川原化工機の島田さんに、その旨連絡をしましたね?
→していない。事後審査のご説明をしたときにお伝えしたかもしれないが。

 いつ頃のことがご記憶にありますか?
→分からない。

 無許可輸出にかかる事後審査も行うと予告しましたね?
→一般論としてお伝えしたかもしれない その時点で何か決めていたことは分からない。

 その後ですが、経産省として、大川原化工機に対する行政処分は行いましたか?
→処分の担当ではないのでわからない。

 事後審査は行いましたか?
→担当でないので分からない。

 大川原化工機の噴霧乾燥器があってはならない場所に見つかったという事実はあなたが知る限りありましたか?
→警察に訊いたかもしれない、記憶にない。

 省として知らないということですか?
→申し上げられない。

 経産省は知る限りなんらの監督権限も発していないということでいいですか?
→はい。

 <被告東京都再主尋問>
当時のやり取りは今から5〜6年前のやり取りです。当時、メモを取ったりしていますか。
→いや、していない。
 
5、6年前の記憶をもとに証言をしているということですか。
→はい。

 この証言にあたり、経産省内の資料は見ましたか。
→一部事実関係は見た部分はある。

事実関係とは、本件相談のことですか。
→いえ、捜査事項照会書とかである。

 丙2を見たということですか。
→全ては見ていないが、一部は見た。
 
甲164。5頁の一番下のメールで、渡井さんに「殺菌の定義がない場合は、…殺菌方法等更に大学の先生などに聞いているところです。」と送っています。殺菌の方法を検討していたということですか。
→はい。

「殺菌の定義がない場合」とは、本件要件ハの「殺菌」の解釈として言っているのですか。
→私が混乱していたのではないかと思う。
 
どういう趣旨ですか。
→運用通達で殺菌の定義は書いてあるが、殺菌の方法はよくわからないので、そういう色々なことを混ぜて記載しているのではないかと思う。

このメールでCCに入れている趣旨はどのようなものですか。
→このメールでは、情報共有、何かあったらご意見くださいという趣旨。

 

<原告再主尋問>
5頁下のメールで、「以下のような問いにしたいと思います。」と記載し、「滅菌、殺菌について特別な定義、運用を持っているか」調べようとしたのですね。
→はい。

 「質問の順番は、以下の順番になっております。①~⑤」、この①〜⑤について質問しようと思ったということですね。
→はい。 

<左陪席裁判官補充尋問>
今は噴霧乾燥機の輸出は許可申請はしてもらっているという理解ですか。
→していただいていると聞いている。

 許可申請は結構な数ですか。
→それはわからない。


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和田倉門法律事務所
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