TH税制の「著作権の提供」事業該当性が争われた裁判例 その1
4月の租税裁判例のご紹介をしたいと思います。
4月に注目していた判決は、2つあります。
1つは、東京高裁(第22民事部・白井幸夫裁判長)で4月14日に言渡しのあった塩野義製薬の適格組織再編成(適格現物出資)該当性が争われた控訴審判決です。
結論は原審維持(納税者勝訴)でした。こちらは国側が上告せず確定しています。
https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2021/05/210506.html
もう1つは、東京高裁(第5民事部・秋吉仁美裁判長)で4月21日に言渡しのあったムゲンエステートの住宅の貸付けが行われている販売用建物の仕入税額控除に係る控訴審判決です。
こちらは、消費税本税については更正処分を適法としましたが、過少申告加算税については「正当な理由がある」と認めて取り消しました。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3299/tdnet/1960692/00.pdf
いずれも判決文をまだ入手できていませんので、入手次第こちらでご紹介させていただきたいと思います。
ということで、今月は令和3年2月26日に東京地裁(第38部)で言渡しのあったサンリオのタックスヘイブン対策税制の適用に係る判決をご紹介いたします。
下記の開示資料からしますと、控訴しているようですので、今後も注目したいと思います。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/8136/tdnet/1939518/00.pdf
なお、提訴した際の開示資料は下記です。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/8136/tdnet/1720298/00.pdf
タックスヘイブン対策税制の適用に係る取消訴訟の典型的な争点は、特定外国子会社等が同税制の適用除外要件を満たすか否かです。
適用除外要件は複数ありますが、本件は、上記開示によると、事業実態を備えているか否か、具体的には、現地の消費者の嗜好を反映するサンリオのキャラクターのローカライズ(現地化)業務やキャラクタービジネスを展開するなどの活動が、個々の現地ライセンシーのニーズを反映させるためのカスタマイズ、企画提案及びサポートを行う独立した事業として「著作権の提供」に該当しないかが問題とされています。
また、更正処分を受けた際にもいくつか報道がされていますので、こちらにリンクを貼っておきます。
https://www.asahi.com/articles/ASKDH5R51KDHULFA02C.html
http://www.np-net.co.jp/comm_dat/fnews/tn20190620.html
https://www.grantthornton.jp/globalassets/1.-member-firms/japan/pdfs/newsletter/international/international_201909.pdf
さて、通常ですと、事実の概要から説明していくのですが、処分の対象となる税目が改正の関係で事業年度により少しずつ異なるなど定義をしていくと長くなりますので、大枠を掴んでいただくために、争点から入ります。略語は追って説明いたします。
本判決の争点は次の4つでした。
メインの争点は⑵だったと思われますが、残念ながら、裁判所は⑶で結論を導き、⑵については判示されておりません。
⑴ 本件各通知は行政処分であるか。
⑵ 本件各香港子会社の主たる事業が「著作権の提供」に該当し、本件適用除外要件を満たさないか。
⑶ 原告は、本件法人税等の確定申告書に適用除外記載書面を添付していなくても、本件適用除外規定の適用を受けられるか。
⑷ 本件法人税等の確定申告書に適用除外記載書面を添付していない旨の被告の主張は違法な理由の差し替えであって許されないか。
⑸ 本件隔香港子会社について措置法66条の6第1項及び措置法68条の90第1項が適用されるとして、本件各香港子会社が納付した外国法人税の額について、外国税額控除が適用されるか。
本日はここまでとして、次回に続きます。
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