最高裁 政令が法人税法の委任の範囲を逸脱して違法と判断
3月の租税裁判例のご紹介をしたいと思います。
資本剰余金と利益剰余金を原資とする剰余金の配当がされた場合の課税関係が争われていた事件の最高裁判決です。
政令が法人税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効という珍しい判断がされています。
事案の内容に入る前に、「政令」について確認しておきましょう。
法人税法、所得税法などの「法律」は憲法84条の租税法律主義に基づき、立法府である国会の審議を経て成立します。
しかし、法律で各税目のすべての事項について規定を「法律」で規定するのではなく、細かな点や技術的な事項については「政令」や「省令」などに委任されています。
税法の条文には非常に多くの「政令で定める〇〇」や「財務省令で定める〇〇」という規定があります。たとえば、現行の法人税法には「政令」が1007回、「省令」が162回登場します。前者は内閣府が、後者は財務大臣が制定します。重要度が高いものは「法律」で、「法律」が命令に委任するもののうち、重要なものは「政令」で、軽微なものは「財務省令」で定められます。軽微なものの例としては、申告書の記載事項や書類の添付・保存などがあります。
なお、「法令」は、法律と法律に基づく命令、条例及び地方公共団体の執行機関の規則をいい、命令には「政令」、「省令」のほか、「告示」を含み、「規則」には「規程」を含むとされています(行政手続法2条1号)。税法に関する「告示」は、たとえば法人税法37条3項2号の指定寄附金があります。
冒頭で、政令を違法無効と判示したのは珍しいといいましたが、実は、最高裁判所は昨年(令和2年)6月にも、命令(告示)が委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効との判決をしています(最三判令和2年6月30日・民集74巻4号800頁)。ただ、本日現在の判例検索では、税に関して命令が委任の範囲を逸脱し無効とされた最高裁判決はこの2件だけがヒットしました。そういう意味で大変珍しい判決なのです。
令和2年の最高裁判決は、泉佐野市が、ふるさと納税制度に係る平成31年総務省告示第179号2条3号の規定のうち、法律改正前の寄附金の募集及び受領について定める部分が法律の委任の範囲を逸脱した違法であるかなどを争い、当該告示に基づく指定取り消しの決定を求めたもので、最高裁判所は原判決を破棄し、当該決定を取り消しています。高額返礼品で話題となった事件ですので、ご存知の方も多いと思います。
裁判所のホームページに掲載されていますので、詳細はこちら↓をご確認ください。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/537/089537_hanrei.pdf
ということで、前置きが長くなってしまいましたので、本件については次週に内容を紹介させていただくことにします。
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