原告大川原 本人調書
6月16日に行われた大川原社長に対する尋問結果を公開します。尋問調書をベースに一部誤記を校正したものです。一部、示した証拠の一部を画像で貼り付けています。
1.原告主尋問
(1)導入
<原告ら代理人高田>
(甲第161号証を示す)陳述書を示します。1枚目の署名欄、お名前と押印、あなたのものですね。
→はい。
内容は間違いないですね。
→はい。
(2)噴霧乾燥器の主要メーカー
まず世界の噴霧乾燥器メーカーについて教えてください。現在、世界の主要メーカーはドイツのGEA 社、アメリカのSPX 社、それから試験研究用ラボ機でスイスのBuchi、この3社ぐらいですね。
→はい。
ドイツのGEA 社はデンマークにあるNiro社を買収して、そこを拠点として現在も製造販売を行ってますね。
→はい。
アメリカのSPX 社はどうですか。
→SPX 社は日本にマツボーという代理店があります。
アメリカのSPX 社の製造拠点はどちらになるんですか。
→もともとアンハイドロ社を買収しましたので、同じくデンマークにあると思います。
そうすると、噴霧乾燥器の輸出国としてはデンマーク、ビュッヒのBuchi、SPX のアメリカ、ドイツ辺りが主要国だというふうに理解してよろしいですか。
→はい。
ドイツのGEA 、スイスBuchiはいずれも日本法人を有してますね。
→はい。
アメリカのSPX はどうですか。
→先ほど申しましたマツボーです。
という代理店が日本にあるということですね。
→はい。
日本のメーカーとしては御社、すなわち大川原化工機が最大のシェアを有していますか。
→はい。
御社以外で日本のシェアの大きなところにはどのような企業がありますか。
→先ほど言いましたGEA さんの日本法人、GEA ジャパン、それからマツボー、それからプリスさんぐらいです。
→藤崎電機、すなわち現在の株式会社GF は主要メーカーと言える程度はないという理解でよろしいですか。
→はい、そうです。
今回問題とされた御社のRL-5、L-8iはいわゆるパイロットスケールの定型機ですね。
→はい、そうです。
パイロット機を簡単に説明してもらえますか。
→ラボ機で実験をやったデータを基に生産機に移すわけなんですけど、その中間的にその性状等をきちっと確認するための機械になります。
サイズとしてはラボ機よりはパイロット機は大きいけれど、生産機よりはかなり小さいサイズという理解ですね、いいですか。
→はい、そうです。
日本のアイエスジャパンというメーカーは、ラボ機やパイロット機を製造販売してますか。
→していないと思います。
(3)噴霧乾燥器の規制導入の経緯
噴霧乾燥器の製造についてお伺いします。2013年に日本の法令で噴霧乾燥器が輸出規制に追加された背景には、その前年、2012年のオーストラリアグループという国際レジームでの合意がありましたね。
→はい。
オーストラリアグループで合意が成立した後、その内容について経産省から御社に対して直接連絡がありましたね。
→はい。
(丙A第18号証添付資料6 を示す)CISTEC藤井さんの供述調書添付資料6 を示します。まず2 枚目から示しますが、2 枚目、2012年4月11日の経産省、新地さんから大川原化工機宛のメールです、こちらですね。直接連絡があったっていうのはこちらですね。
→はい。
同じ資料の1 枚目に戻ってください。その新地さんのメールの後、CISTEC 藤井さんからそれを受けたメールというか、4月26日のメールが、このメールで、AG で合意された英文が送られてきましたね。
→はい。
英文の一番下、3 と書かれてる、3 の要件にあるDisinfectedとは、あなたはどのような概念だと考えましたか。
→Sterilized、いわゆる滅菌と並んで菌を殺すということで、高度な殺菌というふうに思いました。
なぜ、そのように受け止めたんですか。
→この英文のところの初めの方に、毒性物質とか毒性の微生物に使う機械について定められているものだと思ったんです。
甲第128号証を示す。こちら2012年3月9日の経産省、新地さんからの電子メール、この中で提案国であるデンマークの意見として、乾燥滅菌は微生物に最低限Log6の滅菌を誘発する類似の信頼できる滅菌方法であると記載されています。この説明も御覧になりましたね。
→はい。
このような提案国の説明もあって、殺菌についても滅菌に準じた高度なものを指してるというふうにあなたは考えたんですか。
→はい、そうです。
2012年12月頃、AG の合意を受けて、経産省が日本におけるその規制要件の作成に着手することになりましたね。
→はい。
経産省の規制案、イロハの要件のうちの3つ目、ハですが、定置した状態で内部の滅菌または殺菌をすることができるものという文言でしたね。
→はい。
あなたはこの殺菌をするという文言についてAG で合意をされたbeing disinfectedと同じ概念であるというふうに受け止めましたか。
→はい、そうです。
(甲第127号証の1 及び2 を示す)127号証の1 が2012年12月19日の新地さんのメール、2はそれに添付されていた規制案のファイルを印刷したものであります。127の2の上の方に書かれているAG の規制テキストと、下の方に書かれている省令案を比較していただきたいんですが、AG の方は、冒頭の文章にDrying toxins or pathogenic microorganisms 、すなわち毒素や病原性微生物を乾燥させることができるという文言があるのに対して、下の省令案の方には、これに相当する文言がありませんね。
→はい。
この違いによって、あなたは規制の対象が曖昧になってしまうんじゃないかと心配になりましたか。
→はい。
あなたは、この文言について経産省に対して意見を述べましたね。
→はい。
どのような意見を述べたんですか。
→もう少し明快にしてほしいっていうふうな意味のことを言いました。
つまり、AG で書かれてるような文言を、日本文の方にもそろえてくれというふうに述べたんですね。
→はい。
しかし、あなたの意見は結局反映されませんでしたね。
→はい。
反映されなかったことで、あなたの考える殺菌の概念は変わりましたか。
→変わりません。
それは、なぜですか。
→基本的に、生物化学兵器を規制しようというものですし、ここの上に書いてあるとおり微生物を扱う機器ということがはっきりしていたからです。
御社は日本での立法の過程、あるいはその後の経産省とのやり取りの中で、経産省の方から殺菌をするという省令、日本の省令の用語がDisinfectedと異なる概念であるという説明を受けたことがありましたか。
→一度もありません。
(4)規制導入後の状況と経産省の監督
御社は、警察が動いて捜索差押えがなされるまで噴霧乾燥器の輸出について経産大臣の許可を申請したことは一度もありませんでしたね。
→はい。
輸出をした全ての噴霧乾燥器について、該非判定書には、ハの要件非該当というふうに記載をして輸出をしましたね。
→はい。
2013年10月の規制導入後、御社が警察の捜索差押えを受けるまでの間、トータルで何台ぐらいの噴霧乾燥器を輸出しましたか。
→60台ぐらいです。
それは全部非該当ですね。
→はい、そうです。
その間、御社は2016年5月頃、経産省からのヒアリングに対して、御社の噴霧乾燥器は全て非該当として輸出しているということを述べたことがありましたね。
→はい、私ではないですけれども、社員の方から話してます。
(丙A 第18号証の12頁を示す)CISTEC藤井さんの供述調書、本文12ページを示します。
2016年5月21日にCISTEC藤井さんが大川原化工機を訪問したときのやり取りに関する藤井さんの供述です。そこにも書かれてるとおり、島田さんが自社の製品では全て滅菌も殺菌もできないので輸出規制には非該当であるというふうに述べたとされてますが、このやり取りのことですね。
→はい。
御社の噴霧乾燥器では非該当だという御社の回答、島田さんの回答に対して、経産省から理由の説明を求められたり、あるいはハの要件について経産省の考え方について説明を受けたことは一度でもありましたか。
→一度もありません。
(5)噴霧乾燥器の構造(RL-5)
(甲第161号証の別紙1 を示す)大川原社長の陳述書の別紙1 を示します。別紙1 の上半分はRL-5 の構造を記載した図面ですね。
→はい。
噴霧乾燥器で粉体の細菌を製造するとした場合のおおまかな流れについて確認したいんですが、図の左上の原液のところに細菌を入れて、ポンプで乾燥室の方に送ってノズルから噴霧することになりますね。
→はい。
細菌を含んだ原液は、噴霧されて微粒子になって、これに電気ヒーターで温められた空気に当たって乾燥して粉体になる、そういう仕組みですね。
→はい。
乾燥室で製造された粉体ですが、乾燥室の底部に接続された配管を通ってサイクロンに入りますね。その際、乾燥室の中にも幾らかの粉体が残るんでしょうか。
→はい。乾燥室の中の壁面に、主に静電気的に付着、堆積する部分、それからマンホールとつなぎ目、ダクト等のつなぎ目のパッキン、ガスケットと呼ばれてる部分に主に入り込む部分、更にここに書いてあるような測定口等のものがあるとそこに付着、堆積します。
測定口というのは乾燥室に入る乾燥室測定口というものと、あとサイクロンの手前にあるサイクロン測定口っていうやつですね。
→はい。
乾燥室測定口というのは、何のために付いてるんですか。
→ここで温度とか圧力とかを測ったり、それから、場合によってはサン
プリングをする器具を入れる場所になります。
乾燥室測定口というのは、御社の製品だけじゃなくて全ての噴霧乾燥器、一般に付いてるものなんでしょうか。
→いえ、付いているところもありますし、付いてないところもあります。
アイエスジャパンの噴霧乾燥器には、乾燥室測定口は付いてますか。
→付いていないと思います。
なぜ付いていないと思うんですか。
→アイエスジャパンさんは主に、主にというか、生産機と呼ばれてる大型のものを作る会社です。
つまり、乾燥室測定口というのは主に試験研究用の小型の噴霧乾燥器に付いているものだからということですね。
→はい、そうです。
RL-5 の図面に戻ってください。サイクロンに入った粉体の大部分はサイクロンの下に接続された製品ポットに落ちていきますね。
→はい。
空気はサイクロンからバグフィルター、右の方ですね。バグフィルターに流れて、更に排風機から装置の外に排出されますね。
→はい。
粉体の一部はサイクロンの下部の製品ポットに入らずに、風と共にバグフィルターに流れますね。
→はい。
バグフィルターに流れた粉体は、バグフィルターの下の製品ポットから回収されますね。
→はい。
一部は排風機の方に流れてくるんでしょうか。
→はい、バグフィルターの目を通して微粉は流れていきます。
粉体を製造した状態で、装置を分解せずにヒーターから熱風で内部の殺菌、細菌を全て死滅させようとしたとします。前提としてですが、装置を分解せずに熱風で内部を殺菌するという工程は、御社として想定した工程ではないですね。
→はい。
実際、そのような使い方をしてるお客さんは聞いたことありますか。
→聞いたことありません。
そうすると、飽くまで仮定の話になりますけども、洗浄工程を経ずに粉体が残留した状態で中に熱風を流した場合、内部の全ての箇所は温度が均ーに上昇しますか。
→いいえ。
一般論としては、熱風の入り口付近が一番温度が高く、出口にいくにつれて温度が低くなりますね。
→はい。
しかし、バグフィルターの下部は、それよりも下流に位置する排風機の場所よりも温度が上がらないようなんですけども、これは、どうしてだと考えられますか。
→これは、熱風がこのバグフィルターの上から抜けてしまいますので、この下部の方にはなかなか熱風が行かないんで、放熱によって、この下の方はどうしても温度が低くなります。
つまり、熱風が流れにくいところは、それだけ温度が上がりづらいということですね。
→はい、そうです。
そういった意味では、乾燥室とサイクロンに設置された測定口の内部はどうですか。
→測定口の内部には風が、熱風がほとんど入らないので、しかも、外側に出てる細長い管になりますので、放熱も大きくて温度は上がらないというふうになります。
そうすると、粉体が測定口に堆積した場合、そこに残った細菌というのは熱風で死滅させることが難しいというふうに言えますね。
→はい、難しいと思います。
ところで、あなたは警察から何十回も取調べを受けてますが、警察はあなたに対して、噴霧乾燥器の内部でどこが一番温度上がりにくいのか、あるいは温度が上がりづらい場所はありますかといった質問をしたことがありますか。
→そういう質問を受けたことはありません。
(6)噴霧乾燥器の構造(L-8i)
(甲第161号証別紙2を示す)同じ陳述書の別紙2 の方、L-8iの方を示します。L-8iの構造を記載した図面ですね。
→はい。
サイクロン下部と製品ポットの蓋の部分は、L-8iの場合、接合されて一体の構造になってますね。
→はい。
そうすると、粉体製造後、製品を回収するにはサイクロン下部にくっついたバケツを外すような要領で製品ポットを取り外すことになりますね。
→はい。
その際、製品ポットには蓋がされていない状態ですよね。
→はい。
中の粉体が危険な細菌である場合、作業者の安全は確保されますか。
→いえ、粉体がホワッと舞ってきて、暴露されて作業者の安全を確保できません。
そもそもL-8iは、細菌のような危険物を粉体にしても、ポットから製品を安全に回収することすらできない構造であるということですね。
→はい、そうです。
(7)公安部の殺菌解釈について
(甲第148号証別紙を示す)経産省の回答書、別紙を示します。1 、2 、3 とあって2 のところを見てください。経産省は、この裁判で、手段を問わず省令に数多く列挙された細菌のうちいずれか1 種類以上のものを装置内部から死滅させることができる性能を有するものは、このハの要件に該当するんだという考え方を、立法した当初から持っていたというようなことを言っています。そのような説明を立法当初、つまり2012年から2013年において受けたことがありますか。
→いえ、ありません。
立法後、この事件で逮捕されるまでの間、そのような説明を経産省から受けたことはありますか。
→ありません。
このような説明を文書やウェブサイト、何でも結構ですが、見たことありますか。
→見たことありません。
仮にこのような説明を経産省から受けたとします。民間事業者として省令に列挙された細菌を死滅させることができるかどうかを自社の製品で確認するすべというのはあるんでしょうか。
→いいえ。
それは、どうしてですか。
→これは、基本的に生物化学兵器に使うような危険な細菌ですから、我々は入手することさえできません。
→警察の取調べを受けたときの話を聞かせてください。警察は、殺菌とは噴霧乾燥器の内部に残留した細菌を全て死滅させることだという言い方をしていましたか。
→いいえ。
どのようなものを殺菌と言うんだというふうに言ってましたか。
→ある程度殺菌できれば殺菌するっていうふうに言うんだというふうに言ってました。
(丙A 第126号証を示す)捜査報告書の最終ページ、末尾を示します。
警察は、2018年1月の時点で、殺菌とは装置内の有害な菌を全て死滅させることであるというふうに捉えているようなんですが、警察から任意の取調べを受けている、つまり2018年12月以降、このような説明を受けたことがありますか。
→いいえ。
ある程度菌を殺せるなら殺菌することができるんだと言えるという解釈を前提にすれば、御社の噴霧乾燥器はこれに該当する可能性はありますか。
→ある程度のっていうことであればあります。
しかし、あなたとしてはそのような解釈は適切でなく、滅菌に並ぶ高度な殺菌を言うんだというふうに考えていたんですね。
→はい、そうです。
あなたは、取調べのときにそれを警察官に言いましたか。
→何度も言いました。
これに対し、警察官は、ある程度菌を殺せれば殺菌と言えるんだと言ってあなたの解釈を否定したんですね。
→はい。
あなたの供述調書、警察で押印した供述調書の中で解釈次第でとか、解釈によっては規制に該当する可能性があるという表現が見られますが、これは、あなたの考えでは該当しないが、警察の言うような解釈をするなら該当する可能性があるという意味ですか。
→はい、そうです。
(8)冤罪被害の状況
<原告ら代理人坂井>
2018年10月3日、会社の本社や事業所、それから、あなたや職員の自宅に警視庁の捜索差押えが入りましたね。
→はい。
その後、2020年3月に逮捕されるまで、あなたは何回ぐらい任意取調べに応じましたか。
→40 回弱だと思います。
取調べについて、警察の要請に応じなかったことは一度でもありましたか。
→ありません、全て応じました。
しかし2020年3月11日、あなたは逮捕されましたね。
→はい。
あなたは、逮捕後は黙秘権を行使していましたね。
はい。
黙秘をするあなたに対し、警察は何と言ってきましたか。
→黙秘をすると不利になるぞ。それから、弁護士に相談してもいいことがないよっていうふうなことを言ってきました。
そのような働きかけをされて、あなたは不安に襲われませんでしたか。
→非常に不快で不安になりました。
逮捕の報が広がったときに、会社は銀行や大手取引先からの取引を停止されましたね。
→はい。
倒産の危機を感じましたか。
→はい。会社の運営、非常に不安になって、社員から、その家族がどうなるかっていうふうな不安がいっぱいでした。
あなたは、2020年3月から2021年2月の11か月間、身体拘束されていましたね。
→はい。
その間の生活で、不自由なことや非人道的な扱いを感じたことはありましたか。
→その中では留置場でペンを自由に借りれなかったこと、それから拘置所内では部屋の中を歩くことを禁止されたことです。
保釈された後に、会社に対する風評被害はありましたか。
→はい。
例えば、どのようなことがありましたか。
→我々、受注を受けてる装置を大手の会社に発注して納めてもらうわけなんですけど、それが全部停止されて、我々の協力会社さんから現金先払いでないと品物が入らないということで、キャッシュフローにすごく、ものすごく苦労したっていうふうに聞いてます。
2021 年7月30日に、検察官による起訴取消しがなされましたが、周囲の目はなかなか変わらなかったそうですね。
→はい。
それはどうしてでしょうか。
→起訴取消しということであっても、無罪ということが言われなかったからです。と思います。
最後に、今回の件での経産省、警察、検察、それぞれへの思いをお聞かせください。まず、経産省に対しては何かありますか。
→経産省さんは、この法律を作って、ぜひ明快に作っていただいて、メーカーに、それをきちっと知らせて、我々業界に守らせながら貿易等を進めていくのが仕事だと思いますので、ぜひ明快な進め方から、我々に分かるような進め方をしていただければ、我々一生懸命ついていきたいと思っております。
警察に対してはいかがですか。
→警察に対しては、一つは、その経産省さんの解釈と言われてる思ってもいないような、多分解釈だったと思うんですけれども、そういうものをベースにして、我々を、本当に突然に家宅捜索から入って逮捕まで至る、そのやり方は非常におかしいと思います。それからもう一つは、我々任意の取調べのとき、1 年半にわたる任意の取調べ、あったときずっと協力してきたわけです。ところが、その内容自身が、自分たちの都合のいいことだけを書いて、都合の悪いことは省くというふうなやり方で、実際上は検事さん、それから裁判のところまで、騙したことになると思いますので、それは全く許せないと思います。
検察官に対してはいかがでしょうか。
→検察官の方は、ぜひ詳しく調べてほしいっていうのはあるんですけれども、一つはやはり保釈に関して、我々否認をしてきたわけなんですけれども、その否認が理由かよく分かりませんけれども、実際上否認されてると長い勾留がされてしまった、11か月っていうことになりますので、それはぜひ考えていただきたいなと思います。
最後に、特に何か話しておきたいことはありますか。
→この裁判の中で防衛医科大学校の四ノ宮先生が陳述書を提出していただきました。我々にとって非常に分かりやすくて、実際上、分かりやすさと明快さが非常にあります。それについて、改めて感謝を申し上げたいというふうに思っております。
2.被告東京都反対尋問
<被告東京都指定代理人寺本>
まず、あなたは2012年にAG 、オーストラリアグループAG の規制リストの中に噴霧乾燥器が追加された際、AG の原文、英文を確認されたということですか。
→そのとき私自身がそこでっていうこと?
そうです、AG の原文、英語の確認、御自身が御覧になられたのは、経済産
業省の方から案文を示されたときに初めて見たということなんですか。
→いえ、その前に島田の方から、社員の方から見せられました。
島田氏の方から見せられたということ。
→島田かどうか覚えてませんけれども、社員から見せられました。
先ほど主尋問でありましたが、あなたは、その殺菌というところ、省令の方の殺菌というところに関して高度な殺菌というふうに認識されたと言っておられましたが、そのとおりですよね。
→はい、そうです。
その高度な殺菌というのは、陳述書において、化学物質による消毒を意味するということが陳述書で書かれているんですが、その高度な殺菌っていうのは化学物質による消毒を意味すると理解したと、そういうふうに伺ってよろしいですか。
→そのときには、そのものも含む、いわゆる消毒法、一般的に消毒という概念のところですので、例えば、熱湯消毒とか、そういうものも含んでの消毒というふうに思いました。高度なものというふうに思いました。
そのAGの規制リストが追加された後に、2013年に日本においてもいわゆる貨物等省令が改正されたということですね。
→はい。
いわゆる貨物等省令2 条の2 、第2 項5号の2 、ハ、要件ハの定置した状態で内部を滅菌または殺菌することができるという条文について、その要件ハの殺菌とは、先ほどおっしやったとおり高度な殺菌、化学物質による消毒の意味をするというふうに考えていたということで伺ってよろしいですか。
→そこまで限定して、先ほど言ったように限定してはいません。化学物質かどうかっていうのは、その後で限定されたということを知りました。その文書があることを後で知りました。
その文書というのは、その化学物質の文書っていうのは、何の文書のことを今おっしゃられたのですか。
→それはちょっとはっきり年月日までは覚えてないんですけど、2019年頃に、クロスフローろ過器の項目、この噴霧乾燥器の一つ前の、一つ、二つ前か、乾燥器についてですから。二つ前のところの項目のところに同じdisinfectionという言葉があって、そこのテクニカルノートという部分にきっちり書かれていたからだということを、亡くなられた相嶋から、こういうことが書いてあるんだということを聞いて、正に我々が思っていたもののことだということを知りました。
大川原化工機株式会社製の噴霧乾燥器、御社の噴霧乾燥器のうち、どのような機種がこの要件のイロハ全てに該当する、要は、許可申請が必要な機種になるんだなっていうのは、そこは当時どのように考えましたか。
→先ほど言いましたイと、イは噴霧乾燥器の生産量を表すもので、水分蒸発量という規定をしています。ロについては、粒子径ということで、微粒化ができる機械かどうかということです。それについては、仮定しているAGの、その頃にはハンドブックを見せてもらいましたので、そこにはハンドブックに書いてある噴霧乾燥器の項が書いてありましたので、それは二流体ノズル、多流体ノズルを使って微粒化するというふうに書いてありましたので、それを使うものだろう。でも、回転式のアドマイザーと呼ばれてるものでも、それを取り替えることが、ちょっと改造が必要なんですけど、取り替えることができれば可能性があるなというふうに思いました。次に、ハについてなんですけど、ハについては、やはり基本的に高度な殺菌ができる、最低限、しかも分解しないで殺菌ができるということですから、最低限自動洗浄装置が付いてないと駄目であるというふうに思いましたし、実際には作業者、作業者って言うんですかね、オペレーターが暴露しないようにしないと、自分が菌を吸ってしまったりしたら感染してしまいますので、暴露しないようにしないと、そういうふうな防護装置、防護構造ができてないともう該当しない。そういうような防護装置が付いたり、CIPが付いてるものは該当するというふうに思っていました。
そうすると、機種としてはそういった、今おっしやったイロハに該当する機
種も御社の方は取り扱ってるというふうに伺ってよろしいですか。
→過去、数件ですけれども国内に納めました。
(丙A 第71号証を示す)それと先ほど主尋問であなたは貨物等省令の要件ハの規制前の案文を島田氏から、島田氏からというか社員から見せられたというふうにおっしゃっていましたが、丙A71号証の資料1の3枚目を示します。先ほども主尋問のときに示されておられたと思うんですが、こちらの案文を示されたということですね。
→はい、そうです。
ここに、ハのところで定置した状態で内部の滅菌または殺菌をすることができるもの、この殺菌が高度な殺菌だというふうに理解したと、そのように伺ってよろしいですか。
→はい。
先ほどの主尋問の方で若干ありましたが、明快にするようにということで、経済産業省の方に要望されたと。
→はい。
その明快にするようにっていうのは、具体的には、どのように明快にするっていうのは伝えましたか。
→ここの…
ごめんなさい、ここっていうのはどちらですか。
→別紙のAG のテキスト( 6. ~始まる文書)英文の3行目です。これは、基本的に生物化学兵器用に使われる可能性があるデュアルユースっていうふうなものですので、そういうふうなものができるものでないと意味がないっていうことで、その意味でもここに。
<裁判長>
ここというのは。
<被告東京都指定代理人寺本>
ごめんなさい。英文の3 行目です。2 行目、3 行目。
<裁判長>
capable of...
→はい、そうです。capable of drying toxins or pathogenic microorganisms 書いてありますので、こういうものを取り扱うことができるということが要件であるというふうに思いましたので、このことが分かるようにこれだとちょっと分かりにくいんでしてくださいという、したらどうですかという提案をしました。
<被告東京都指定代理人寺本>
それ以外の提案、何かされたか覚えてませんか。
→覚えていませんね、はい。
先ほど主尋問でもあったんですが、その提案については特に採用されることはなかったということで伺ってよろしいですか。
→はい。
その提案が採用されなかった際に、経済産業省の方に採用されない理由だとかを確認は、あなた若しくは社員のかたにさせたりはしてますか。
→してないと思います。というのは、基本的に、この意味、AG のところで先ほど言ったようなのはわざわざ法律には書かないんですよと。でもそれはちゃんと意味として入ってるんですよと言われたんで、それ以上のことは聞きませんでした。
少し話が変わりますが、あなたは、噴霧乾燥器の規制が開始される前に、2
名のかたにパブリックコメントを提出するように依頼していますか。
→はい。提出、そうですね、依頼というか話、掛けています。
(丙第21号証を示す)供述調書添付の資料3を示します。ちょっと黒塗りがあるんですが、この下の部分、真ん中より下の部分で、発注した皆様の下ですね、大川原化工機、大川原ですと、こちらは、あなたというか社長でよろしいですか。
→はい。
このメールによれば、黒塗りになっておりますが、大川原ですの下、4 行目に加えて、何とか様、何とか様にお願いをしてよろしいでしょうかという、これはパブリックコメントの提出をお願いしたという、そういうメールと伺ってよろしいですか。
→…..。
この下の方を見ていただいて、一番下に書いてあるところなんかは、パブリックコメントとして出し、そういう理解でいいですよね。
→そうです、はい。ここに書いてある部分ですね、はい。
そうすると、御自身でパブリックコメントを出すのではなくて、この2 名の別のかたがたにパブリックコメントを提出するようにお願いした何か理由というのはあるんですか。
→一人は、日本食品機械工業会のかたですので、こういう食品機械等を扱うことがあるっていうことで、もう一人は日本粉体工業技術協会の乾燥分科会の代表幹事をされていたんで、そこにお願いしました。
内容について、こういうコメントを提出してほしいとか、そういったことをお伝えしたことはありますか。
→こういうことをして、こういうことが問題ですということは言いました。
こういうことが問題です、なのでパブリックコメント提出をしてほしいと、そういう趣旨のお話をされたってことですか。
→そうです、明確じゃないんで、明確にしてほしいんでという目的でっていうことを言いました。
(丙第21号証を示す)もう一度丙21号証の資料3を示します。ごめんなさい、もう一度同じものです。明確にしてほしいっていうお話なんですが、下から3 行目、解釈案(新)に噴霧乾燥器、毒素や病原性を持つ微生物を乾燥できるという特徴を持つ噴霧乾燥装置を加えていただけるとよりはっきりしますので、パブリックコメントとして出していただけないでしょうかという記載があるんですが、これは御自身が打たれたメールっていうことでよろしいですね。
→はい。
この噴霧乾燥器、毒素や病原性を持つ微生物を乾燥できるという特徴を持つ噴霧乾燥装置、これを加えることによって、どのような機械が特定されるというふうにあなたは認識、認識したっていうか考えてこのようなメールをしたんですか。
→殺菌というふうに、一般的に世の中で使われている言葉ですと、ちょっとでも菌が死んだら殺菌とも言いますし、殺菌剤とか、それから、何でしょうかね、殺菌効果があるとか、そういうふうなことを言う殺菌にも使われますし、そうすると、それこそ、この噴霧乾燥器で菌を乾燥すると、実はなかなか菌を乾燥するのは難しいんで、今はやりの乳酸菌とか、そういうものです。でも噴霧乾燥器で十分注意しても1 割残るか、1 0 パーセントだけ残る、90パーセントは死んでしまうっていうふうな形にもなりますので、とにかく、この殺菌という言葉だけを見ると、じゃあ、これでは噴霧乾燥器は殺菌機じゃないからっていうふうなことになってしまいますし、ですから、殺菌っていう言葉だけだと分かりにくい、余りにも分かりにくいんで、こう付け加えていただけたらというふうに、このときは思いました。
話は変わりまして、あなたは、警察の任意での取調べにおいて供述調書の作成がなされていると思うんですけども、何通ぐらいなされたかっていうのは大体の数でも結構ですけど覚えてますか。
→いや、はっきり覚えてないです。
何通か、複数通は作成してるというふうに伺ってよろしいですか。
多分40回の、4、5回に1 回ぐらいの割合だったかなと思うんですけど。
複数、1 通や2 通ではないという伺ってよろしいですか。
→はい。
その中で、それらの供述調書なんですけど、その内容をその取調べに当たった警察官が読み聞かせて、その後、御自身がその供述調書を読まれて署名指印をしていますか。読まれてというか、読んで署名指印していますか。
→はい、それはしてます。
供述調書を読まれたとき、読み聞かせのときも、御自身が読まれたときに、あなたが説明していない内容が記載されていたということはありましたか。
→基本的に、正しく記載されてないことがほとんどだったです。それはなぜかというと、広く解釈すればこういうふうになりますよっていうことを何度も言ってるんですけれども、それを随分省かれちゃいました。
→御自身の認識だと、その広く解釈すればなので。
他のところに書いてあるから、これ一緒の意味だからっていうふうに言われて。
それは、先ほど主尋問でおっしゃってた解釈によってはという、そういう文言のことですか。
→そうです。
それに対して、修正するように御自身は申し出たんですか。
→そういうふうに、全部解釈によってはっていうのを全部に書くわけではないから、そういうのは1か所に書いてあれば全部一緒のような意味に取るんだからというふうに言われて、そんなもんかっていうことで、もう既に大体調書調べ、任意の調べでも4時間ぐらいたってから調書作ったのを見せられて、訂正のところをやり取りするわけですから、大体そういう状態になってしまうと、何て言うかな。
<裁判長>
質問は、修正を申し入れましたかっていうことなので、申し入れたのか申し
入れなかったのかを、まず教えてほしいんですけども。
→ほとんどのケースは申し入れませんでした。幾つかは申し入れました。
<被告東京都指定代理人寺本>
警察から任意で取調べを受けていた際に、弁護士の先生に御相談されたこ
とってありましたか。
→はい。
弁護士の先生から、供述調書の内容に納得できなければ署名しなくていいですよと、そういったアドバイスを受けたことないんですか。
→それは、特には、そのときは聞いていません。
(丙A 第73号証を示す)こちら供述調書です。この欄外に指印が押されていて、最後のページにあなた御自身のお名前と指印が押されているというものです。この欄外、一枚一枚に指印を押した後に署名指印をした、順番があれかもしれないですけど、欄外一枚一枚に指印したのは御自身で間違いないですか。
→そうです。
それで署名されたのも御自身ということですよね。
→はい。
3ページの上から2 行目を御覧ください。なお、規制要件ハについては解釈によっては該当する可能性があるという認識でした。この規制要件ハについての解釈によってというのが警察が示した解釈だったと、そういう理解でよ
ろしいですか。
→…..
警察が先ほどおっしゃった。
→警察の言っている解釈が我々には分からないんです。ずっとはっきりこういう解釈でということを一度も言われてないんです。ですけど、だから、だけど、こういうふうに文章的にはなりますねと言われて、納得というかサインしました。
あなたは、陳述書において、改正された貨物等省令の運用が始まっても輸出に際して届出をした同業他社は1 社しかありませんでしたと陳述書に記載があるんですけども、この届出をした同業他社が1 社しかなかったという事実は逮捕をされる前から御存じだった、知っていたんですか。
→いいえ。
それは、逮捕された後に知ったということですか。
→はい、そうです。
先ほど、主尋問で、警察官から熱風によって菌をある程度殺すことができれば殺菌なんですよと言われたというふうなお話なんですけど、このある程度について、ある程度と言っても、数が、例えば、1 個か2 個から100個、1000 個、1 万個とあるんですけど、それは警察官は何も言わなかったということなんですか。
→そうです。
それについて、警察官にどの程度、その明確な数について幾つなんですかとか、そういうのは聞かなかったということですか。
→ですから、殺菌って分からない、曖昧なんだからそれをちゃんとはっきりしてくれということは何度も言いました。でも、それは言われませんでした、これは捜査上の秘密だから。
それと、警察の取調べにおいて、感染性のある菌を完全に殺せるものが規制対象となると、感染性のあるという言葉を使って、何度も繰り返し説明をしたというふうに陳述書に記載があるんですが、そのとおりですか。
→もう一度。
感染性のある菌を完全に殺せるものが規制対象になるんですということを警察に説明したと。
→私の方。
そうです、御自身が。
→はい。
この感染性のある菌というのは、どういった菌を想定して警察に説明していたんですか。
基本的には、リストに載っている2 0 種類ぐらいあるわけですけども、
→大きな事件になった・・・。
菌の名前で、もし言っていただければ、例えば、芽胞形成菌とか炭疸菌とかいろいろあると思うんですけど、炭疸菌が芽胞形成菌だと思うんですけど、菌のお名前とかで言っていただけるとありがたいですけど。
→何でしょう、コレラ菌とか、有名なのはコレラ菌、それから先ほど言った芽胞菌としては炭疸菌が、この法律、法律っていうかAG のそのベースになったものは炭疸菌の事件ですから。それから一般的な、何だろう、大きなのはコレラ菌ぐらいかな。
じゃあ、ペスト菌とか腸管出血性大腸菌も入っているという話ですね。
→それも当然ながら、はい、あります。
それと、あなたは細菌についてお詳しいということで伺ってよろしいんですか。
→そんなに詳しくはありません。
陳述書によれば、粉体となった乾いた菌は、湿った菌よりも熱に強いと言われてるということですが、これ室温で放置して乾燥させた菌よりも粉体となった菌、粉体化した菌の方が熱に強くなるっていうことなんですか。
→いえ、そうとは限りませんけれども。
限らないということで、お答えだけいただければ。
→分からないんです。
分からないっていう答えですね。
→はい、私には分かりません。
それと、大川原化工機、御社において、警察に逮捕される前に乾燥室測定口やサイクロンの測定口の温度を測る実験を行ったことはありましたか。
→具体的に温度を測るような実験は多分やってないと思います。
逮捕されたときのことについてお伺いします。逮捕されたのは、おおむね何時ぐらいだったか、時間が分からなければ午前中とかお昼頃とか、午後、タ方、夜中という時間帯で区切ると、どの時間帯に逮捕されたかっていうのは覚えてますか。
→逮捕というのは、どういう状態を逮捕というんですか。
逮捕状を多分示されているのかなと。
→逮捕状。初めに朝来て、逮捕状が出ていますという。
逮捕状、実物自体を見たのは何時ぐらいですか。お昼頃とかですか。
→実際に出て、手錠を掛けられて連れていかれたのは、その後、会社に連れていかれて、会社から出るときに。
手錠を掛けられた。
→手錠を掛けられました。
その手錠を掛けられたのは、大体何時ぐらいだったですか。
→それははっきり覚えてないですね。
夜中だったですか。
→いえいえ、そうではありません。
昼間というふうに理解して。
→昼間です。
私からは最後なんですけど、L-8i機械についてちょっと1 点だけお伺いさせてください。製品ポットの裏、蓋にオプションでダンパという弁を取り付けることってできるんですか。
→サイクロン自身を改造しないとできません。
サイクロン自身を改造する。
→はい。サイクロンと両方とものセットで、ですから簡単に取り替えることはできません。
簡単にはできない。
→はい。
工事というか、手を加えなければいけないってことですか。
→サイクロンの下部を作り直さないと駄目ですので、結局サイクロンは別のサイクロンを作ってこないと多分できないと思います。
3.被告国反対尋問
<被告国指定代理人江原>
平成30年10月3日、警察が原告会社等の捜索差押えを実施しましたね。
→平成30年っていうのは20年ですかね。
2018年です。平成30年、2018年。
→2018年の、何月。
10月3日。
→はい、差押えです。
その後、あなたを含めた原告会社の役員及び従業員は、警察の任意の取調べ
に応じましたか。
→はい。
原告会社が、この刑事事件に関して弁護士に相談をされたのはいつでしたか。
→入って、2、3日以内だったと思います。
原告会社としては、当初警察の捜査には協力する方針でしたか。
→はい。
そうすると、あなたを含めた原告会社の役員及び従業員は、警察の任意の取調べでは事実関係や自身の認識を、自身の記憶どおり正直にお話しされてたのですか。
→正直には話したつもりなんですけれども、調書上は違ってました。
令和2年3月11日に、あなたと原告島田さんと相嶋静夫さんは、警察に1回目の逮捕をされましたね。
→はい。
あなたは、令和2年3月12日に警察官の弁解録取手続を受けましたか。
→3月の。
12日。
→12日ですね、はい。
(丙A第74号証を示す)これは、令和2年3月12日の、あなたに対する検察官の弁解録取手続において作成された供述調書ですね。
→はい。
あなたは、この供述調書の記載された内容に間違いがないことを確認した上で署名指印をしましたか。
→したつもりです。
あなたは令和2年3月12日に勾留された後、取調べでは基本的に黙秘をしましたか。
→はい。
検察官の取調べにおいて、検察官との雑談には応じたりしたことありましたか。
→はい。
その中で、あなたは塚部検事の取調べにおいて、原告会社の噴霧乾燥器は大腸菌であれば死滅させることができる旨の供述をしましたか。
→それは、その死滅という言葉を使ったとは思いませんけれども、大腸菌はかなり死ぬということは言いました。
(丙A第103号証を示す)これは、令和2年6月11日のあなたの供述調書ですね。
→はい。
あなたは、この供述調書に記載された内容に間違いないことを確認した上で署名指印をしましたか。
→これはしたと思います。
あなたとしては、貨物等省令で定める要件ハの殺菌っていうのは、高度な殺菌だという意味だと理解してたということですか。
→はい、そうです。
その理解を前提に、原告会社のRL-5型やL-8i型の噴霧乾燥器は規制対象とならないという主張を警察官や検察官に対してしていましたか。
→はい。
あなたは捜査段階において、警察官や検察官に対し、原告会社のRL-5型やL-8i型の噴霧乾燥器には乾燥室やサイクロンに測定口という箇所があり、その箇所の温度が上がりにくいから殺菌できないとの指摘はしなかったということですか。
→聞かれてないのでしていません。
ところで、令和2年3月11日に、あなたたちが1 回目の逮捕をされた後、原告会社は原告会社の従業員について、令和2年3月中は検察庁からの呼出しに応じないという方針をとりましたね。
→分かりません。
原告会社の初沢さんという管理部次席のかたは、検察官に対して原告会社の従業員について令和2年3月中は検察庁からの呼出しには応じられない旨話したことを認めていますけれども、今言った方針っていうのはあなた以外の原告会社の役員、または従業員が決めたということですか。
→そうだと思います。私は彼のところにも連絡もつけません、つけれませんし、話もできません。
4.原告再主尋問
<原告ら代理人高田>
(丙A第74号証を示す)先ほど反対尋問の方で示された丙A74号証、大川原社長の供述調書ですけれど、こちらで殺菌についていろいろ書かれてますが、このときというのは内部の細菌を全て死滅させるということを前提にお話しされてますか。
→私はそうです。
あなたはそう考えてたけど、警察の人はそうじゃなかったですね。
→そうです。
これはちょっと話を整理するために、これは検察庁での書面です。警察のときの取調べで、これ繰り返しになりますが、警察のかたはあなたに対して、あなたは高度な殺菌って言ってたけれども、警察の方から、ある程度死ねば殺菌だというふうに言われて、更に細かいことは教えてもらえませんでしたね。
→はい、そうです。
だからつまり、そういう前提で話が進んでしまった部分はございますね。
→はい、そうです。
この検察庁での供述、これ、ですからその逮捕された翌日ですけれども、このときも検察官の人は、いわゆる内部の温度を上げて内部の細菌全てを死滅させることができますかという聞き方をしてくれましたか。
→いえ。
されていない。
→はい。
丙A第103号証を示す。こちらも供述調書、検察庁での供述調書ですけども、こちらでも菌が死にますかという話を検察官のかたから聞かれてますよね。
→はい。
このときに、全ての内部の全ての菌を殺せますかという言い方を検察官はしてくれましたか。
→いえ、してくれませんでした。
その辺が曖昧なままに供述調書を取られたということですか。
→はい、そうです。
5.裁判所補充尋問
<裁判官板場>
まず、今回2台の噴霧乾燥器が問題になっておりますね。
→はい。
L-8iとRL-5でずね。
→はい。
こちらを一番よく知っていた職員のかたというのは誰になるんですか。
→一番知っていたというのは、L-8iは相嶋だと思います。相嶋さんだと思います。
RL-5はどうですか。
→RL-5もほとんどは関知、関与していたと思うんですけれども、詳細まで相嶋さんが知っていたかどうかっていうのはちょっと分かりません。
相嶋さんが、この2台について一番、ある意味専門家だったってことは間違いないですね。
→そうです、はい。
そのことについては、会社では共通認識があったんですか。
→と思います。
相嶋さん、あるいは大川原さんに対して、いろいろ任意な任意取調べが始まったときに相嶋さんからメールが届いてますよね。
→はい。
(甲第27号証を示す)そのメールには、こちら相嶋さんから大川原さん、島田さんに対して温度計座、差圧計座、導圧管ですかね、などの温度が低いところについて警察に話したという内容が書かれてますけれども、これはどうして送られたというか、その経緯は御存じですか。
→よく分かりませんけれども、事情聴取で、どうもここが問題になっているんだろうなというふうなことで、僕の方にも知らせてきてくれてるんだろうと思います。
この後、3人でお話合いになったとかいうことはないでしょうか。
→ないです。
これは繰り返しになるかもしれないですが、逮捕されるまで具体的に警察が御社の噴霧乾燥器のどこが、あるいは何が問題になってるからこの要件ハ、特に要件ハに該当するんだっていうことは大川原さん自身には分かっていましたか。
→分かっていません。初めはとにかくあってはならないところにお宅の機械があったっていうところから始まりましたので、まずそれをずっと我々の方はチェックをしていました。
結局は、要件ハが問題になってますよね、この案件というのは。その後大きな問題になっていますけれども、大川原さんとしては、具体的にこの殺菌がどういうこと、何度まで上がれば殺菌できるのかとか、そういう具体的な認識はあったんでしょうか。
→基本的に、乾熱消毒というふうなことはないんですね。消毒法として乾熱では検証できないっていうことがあって、滅菌という、乾熱滅菌という、本当に160度以上の、160度以上2 時間とか3時間というふうな滅菌方法としては、乾熱滅菌っていうものがあるんですけれども、乾熱殺菌ということは、基本的に、言葉、これ言われるまでは使ったことがない言葉、私自身は使ったことがない言葉なんで、分からなかったんですね。
そうすると、そこに関してはよく分かっていなかったというのは、これまで
の供述でもされていたと思うんですが、そういう理解ですね。
→はい。
ちなみに、警察が温度実験をしたっていうのは御存じでしたか。
→逮捕されるまで具体的にというのは知りませんでした。言われもしなかったんです、実験はしてるけれどもと言ったんですけど。
具体的に、温度実験をされてるってこと知らなかったんですね。
→知らなかったです。
逮捕された後で、逮捕が令和、L-8 iの場合も令和2 年5 月2 6 日になってますけれども、その後、弁護人の方から反証実験をされて、打合せが提出されてますね。
→はい。
あれを開始したのはいつですか。
→覚えがないですね、私は。
これは、大川原さんが主体で何かやったというわけではないんですか。
→特に、粉体では違う、粉体のことを言われてましたので、粉体では菌のその死減するかしないかっていうのは違うよっていうことは、僕は言いました。
ただ、実験を指示したということはないんですね。
→具体的には、はい、してません。
陳述書では、逮捕されるかもしれないというふうに不安に思ってるというふうに書かれていましたが、そのときに何か会社で具体的に反証だったりということを検討したことはありますか。
→それはないですね。まさか、まさかと思ってましたから。
まさか逮捕されるとは思っていなかったってことですか。
→はい。まさかっていうか、そういう温度でというふうなことは思ってませんでしたから、殺菌ということは聞いてましたけれども、そのことがはっきり分からなかったんですよね、ずっと最後まで。
はっきり分からないから、反証も難しいっていうことですかね。
→そうですね、それをやるのは難しいと思いますね。具体的に指摘されればできたかもしれませんけど。
ちなみに、最後、先ほどL- 8 iについてダンパが問題になっているというふうに、被告都の方から、問題になってるダンパというオプションが付けられるんじゃないかというふうにお話がありましたが、ダンパ自体は今回輸出したL-8iには付けていたんですか。
→付いていないんじゃないかなと思います。
<裁判官平野>
まず、こちらの大川原化工機さんの方では、噴霧乾燥器っていうのは大体種
類としてはどのぐらいありますか。何種類ぐらい商品が。
→基本的に、我々小型の先ほどパイロットクラス以外の、パイロットクラスもそうなんですけれども、本当のラボと呼ばれてるもの以外は、特に日本のお客さんもそうなんですけどオーダーメイドに近いもので作っています。ただ、食品向け、それからセラミックス向け、それから練習部品向けとか、そういうふうなので、ある程度の標準化っていうか、そろえる形での何とかシリーズとかいう形にしています。
そうすると、その細かい部分でのオーダーメイドで異なる部分があるかもしれませんけれども、種類としては数種類、数としてはあると。
→10種類ぐらいは多分あると思います。
例えば、日本の国内の他の噴霧乾燥器メーカーとしては大体何社ぐらいある
んですか。
→噴霧乾燥器、海外のメーカーを含めて7、8社があると思います。
ここは御存じないかもしれませんが、その海外のメーカーも含めたその7、8社も、それぞれやはり独自にその各分野に応じた噴霧乾燥器を作っているっていうことになりますか。
→種類は、我々よりも少ないんですけれども作っています。
御社の噴霧乾燥器の中で、幾つかシリーズがあるということだと思うんですけれども、そのシリーズごとに、例えば、内部の構造であるとか大きさ、そういったものっていうのは、やっぱり異なる部分っていうのは当然あるんですか。
→はい。
それは、各分野に応じた形で、何かその使いやすくするような観点になってるとか。
→使いやすさというよりも、主にはどういう製品、乾燥製品の品質を保っための工夫っていうんですかね。それを各々してる形になります。
その観点で、内部の構造もやはり異なってるということですか。
→はい、そうです。
ここはもう御存じないことであればそうおっしゃっていただければいいんですが、他のメーカーの噴霧乾燥器も、やはりその内部の構造っていうのは大川原化工機の方で作ってるものとは異なる部分というのはあるんですか。
→異なる部分もありますし、ほぼ同じような形になったものもありますけれども、ただ、我々、特に違うというのは、パイロットスケールの設備、機種をたくさん持っていることなんです。パイロットスケールの、いわゆる生産スケールとラボスケールの中間的なものが、我々種類として20種類近く持っています。それは世界の中でもないと思っています。