大川原化工機事件控訴審 M警部補証人尋問 (原告側による再現メモ)
<東京都>指定代理人 布川尚基
乙17(陳述書)を示す
この陳述書は証人が話した内容を東京都の指定代理人が記述したものか
→はい。
付け加える点はあるか
→ない。
相嶋氏の取調べを担当したか
→はい。
証人以外で担当した取調官はいるか
→いません。
相嶋氏の取調べはいつから行ったか
→平成31年1月頃から
証人は平成30年10月から捜査に従事、その後相嶋氏担当ということだが、捜査資料は確認したか
→はい。
どのような捜査資料を確認したか
→捜索差し押さえたで得た資料。大川原の聴取結果噴霧乾燥器の実験結果、ユーザーからの聴取結果
相嶋氏はどのような立場とにあると認識していたか
→発言力があり、社長と同等。ナンバー2という認識だった。
相嶋氏は、輸出規制開始前にどのようなことを行っていたか
→経産省やCISTECと話し合いをしていた。
そういったことから、外事第一課は疑いをもったということか
→はい。
相嶋氏の取調べの体制は
→取調官が私。友田・藤田が補助者です。
友田・藤田の役割は
→私の質問や供述を記録していました。
2人は取調べの話を聞ける位置にいたか。
→はい。
2人に対し、どのような記録をとるよう指示したか
→規制要件に関わる部分、殺菌の認識をもらさず聞くよう指示しました。
どのように取調べメモにまとめたか
→友田・藤田それぞれがPCでメモを取り、それを合体させました。
データから該当部分を削除・修正することはあったか
→そういうことは一切ないが、誤脱の訂正や体裁を整えはしました。
上司に報告した際に修正されることはあったか
→一切ありません。
甲27(相嶋氏メール)を示す
相嶋氏の1月28日のメールのようだが、このメールには噴霧乾燥器のマンホール、のぞき窓等について殺菌できないと話したという記載があるが、どうか
→指摘した事実はありません。
このメールでは「先日」の聴取の際とあるが、このメールの前に取調べを行った日は、1月15日・16日・24日・25日で良いか
→はい。
その際、相嶋氏は「マンホール」について何か述べていたか
→「マンホール」は薄くて壊れやすいという話をしていました。
その供述は資料で残っているか
→取調べメモに残っています。
乙16の2、乙16の3(取調べメモ)を示す。今の話はこのメモか
→はい。
乙16の2・2頁に「壊れてもよいなら」とあるが、止まるように設計されていると記載がある。乙16の3の4頁目も開けた途端感染という記載がある。供述ということはこれらのことか
→はい。
マンホールについてはどういうことを話していたか
→薄くて壊れやすい。菌が漏れて被爆すると言う話でした。
今の話について、相嶋氏は菌が漏れて被爆と言う話があったようだが、「温度が上がらない箇所」として指摘したわけではないということか
→はい。
相嶋氏に最低温箇所の質問をしたか
→していません。
最低温箇所について聞かなかったのはなぜか
→相嶋さんについては、その時期すでに第一線を離れて顧問についており、相嶋さんを取り調べる前に、既に設計に携わる技術者から最低温箇所を聴取していたので。
証人は、相嶋氏から話があるまで「マンホール」を把握していたか
→していませんでした。
相嶋氏は「マンホール」を噴霧乾燥器のどこかと言っていたか
→扉の部分と言っていました。
マンホールについて相嶋氏に詳細に尋ねたのはなぜか
→輸出規制に携わる部分だからです。
マンホールを実機で確認はしたか
→平成31年2月に相嶋さんに見せてもらいました。
丙A26号証(写真撮影報告書・松本警部補作成)。実機を見せてもらったのはこの報告書作成にあたり相島氏と実機を確認したということか
→はい。
そのときに説明はあったか
→はい。
3頁目の写真1で、この写真1のどの部分か
→乾燥室の朱色で囲われた部分です。
相嶋氏のメールの話に戻るが、覗き窓・温度計座について話は出たか
→出ていません。
相嶋氏の指摘箇所がどこかわかるか
→わかりません。
仮に供述をしていれば藤田・友田はどうしたか
→記録に残しているはずですので、指摘もしたはずです。
相嶋氏の指摘を言い逃れとして取り合わなかったということはないか
→ありません。
なぜないと言えるのか
→任意の取調べは1年2か月やっていてその間にそのような話を聞いたことも無いからです。
この訴訟の争点の要件ハについて、相嶋氏は「殺菌」をどう説明していたか
→殺菌という言葉は解釈の幅が広く、1%でも菌が殺せれば殺菌と言える場合もあり、定義付けが必要だという話を何度もしてました。
経産省の解釈では1%の菌を殺せれば殺菌にあたるのか
→違います。
どういう解釈か
→特定の菌を1種類でも内部から死滅させられれば殺菌となります。
そのことは相嶋氏に説明したか
→省令を示して何度も説明しました。
それを聞いて相嶋氏は理解したか
→なかなか理解を示してもらえませんでした。
証人尋問で時友警部補は、証人が宮園警部に相嶋氏から温度の上がらない箇所について指摘があった旨を報告したのを聞いた旨証言しているが、どうか
→そのような事実はありません。
宮園警部に取調べ結果の報告はしていたか
→してました。
どのように報告していたのか
→メモにマーカーを引いて、要点を示してしてました。
たとえば静岡から帰庁してすぐの雑談で、宮園警部に話したことはあるか
→ありません。
なぜないと言えるのか
→必要なことがあれば、メモにはすべてというか、記録をしているので、言えると考えています。
作成前の雑談で、宮園警部に話すことは
→ありません。
メモを作成する前に雑談で話すことはないと言い切れる根拠は
→静岡で取り調べて、2名ともPCをもっていて、そのベタ打ちを印字し、そこにマーカーを引いてすぐに報告をしました。
ベタ打ちで報告していたということか
→はい。
「熱風である程度菌が死ねば殺菌と言えるという誤った解釈を捜査員が示していた」と時友警部補は証言しているが、どうか
→そのようなことはしていません。
相嶋氏は、輸出規制の前後、自分自身は輸出規制についてどの程度関与していたと言っていたか
→退職間近でほとんど関わっていないと供述しました。
相嶋氏は、島田氏に経産省に解釈を確認するように言った旨供述していたか
→はい。
輸出規制について、相嶋氏の認識は
→島田さんが経産省に確認してその上で非該当として輸出していたものと認識していたと供述していました。
相嶋氏は捜査を受けて何がわかったと供述していたか
→島田さんが経産省に確認しなかったこと、すべての噴霧乾燥器を非該当として輸出していたとわかったと供述していました。
誰が決めたと供述していたか
→社長と島田さんです。
<一審原告> 代理人河村尚
乙16号証の1~4号証の取調べメモを作成したのはあなたですね
→はい。
これらの取調べメモは、補助者として同席していた藤田警部補と友田巡査部長のメモをベースに作成したということですね
→はい。
あなた自身は相嶋さんへの聴取中、メモ取りはせずに2人に任せていたのですか
→はい。
取調べの一般的な流れを確認させてください。当時は、大川原化工機の役職員に対する取調べが連日行われていたと思います。取り調べる内容については、前日までに宮園係長から取調べを担当する捜査員に指示が出されていたということでよろしいですか
→指示は受けていたと記憶しています。
取調べ終了後は、永田町庁舎に戻り、口頭で捜査幹部に報告をしていましたね
→はい。
報告の際には、デスクや他の取調官も立ち会っていましたか
→はい。
静岡での相嶋さんの取調べについては、取調べ終了後に静岡から聴取内容を宮園係長に電話で報告し、さらに東京に戻った後でも口頭で報告をしていましたね
→はい。
毎朝、捜査会議が開かれていましたね
→毎朝だったかは記憶にありません。
捜査会議では、デスクの班長である時友警部補が司会進行役をしていましたね
→はい。
朝の捜査会議では、前日の取調べや聴取について、担当者から、捜査幹部や他の捜査員への報告・共有がなされていましたね
→はい。
こういった口頭の報告のほか、取調べメモを作成し、各捜査員にコピーを回付していましたね
→はい。
乙45号証(I氏取調べメモ)を示す。
公安部が大川原化工機の従業員の取調を開始した直後、2018年12月14日にIさんから「温度が極端に上がらない箇所がある」旨の指摘がなされ、これは取調べメモにも残されていますが、あなたもご存知でしたか
→記憶にないです。
各捜査員に取調べメモのコピーの回付はされていたんですよね。取調べメモの回付を受けていないのですか
→回付を受け、取調べの結果は共有されていたと思います。
2018年12月25日にはFさん、Aさんからも同様の指摘がなされていますが、そのことはあなたもご存知でしたか
→記憶にないです。
安積警部補は、そういった指摘は記憶がないと証言しているのですが、安積警部補は当時、朝の捜査会議に出席していましたか
→はい。在所しているときは出席していました。
取調べメモは、安積警部補にも共有されていましたか
→はい。
あなたは、相嶋さんへの初回取調べを、2019年1月15日、富士宮のホテルで行っていますが、これは宿泊ということでよろしいですか
→はい。
甲142号証(相嶋氏メール)を示す。
これは2日間の取調べが終了した直後の1月16日午後3時40分に、相嶋さんが大川原化工機の役職員に送った電子メールです。メールの4行目には「以下新しいことが判りました。」と書かれていて、その中の②に「家宅捜査前に殺菌の実験を行い、殺菌できることを確認している」と書かれていますね
→はい。
これはあなたから相嶋さんに伝えた情報ですね
→実験していることは伝えました。
乙16号証の1(取調べメモ)の3頁、「殺菌について」の項目を示す。
3ポツ目に「実験したとかテストしたって言うけどそれは、円筒の壁面に菌をくっつけてやったのか」と書かれています。これはあなたが相嶋さんから聴取した内容ですね
→はい。
相嶋さんのこの言葉は、あなたが「家宅捜査前に殺菌の実験を行い、殺菌できることを確認している」を伝えたことを受けてのものですか
→はい。
同じく乙16号証の1の2頁、上から7行目以下を示す。
ここでも相嶋さんは、壁面についた菌について述べていますね
→はい。
この記載は要するに、壁面の表面温度は内部温度よりも高温になりにくい、温度が上がりづらいから菌は死なないのではないかという相嶋さんからの指摘ですよね
→そのとおり。
1月16日の次は、1月24日と25日の2日間、相嶋さんの取調べを行いました
→はい。
甲27号証(相嶋氏メール)を示す。
これは、1月28日午前10時8分に相嶋さんが大川原社長、島田さんに送ったメールです。相嶋さんの報告は、要するに「取調べの際に、警察が行った殺菌実験について話を聞いた」というものです。すなわち、「大川原化工機の噴霧乾燥機で実験として温度が100℃になった。殺菌できることが確認された。実験は専門家の監修で実施した。このデータをもって捜索差押の許可を得た。」というものですが、あなたが取調べの中でこれらの情報を伝えましたね
→内容に記憶はありませんが、伝えたと思います。
改めて乙16号証の1(相嶋氏取調べメモ)。の3頁、「殺菌について」の項目を示します。
ここでは、相嶋さんの供述として、要するに、「実験方法に問題はないのか、具体的には、壁面に残留した菌を殺菌できたのか、有識者は当てにならない」と書かれています。このような供述があったということですね
→はい。
甲27号証のメールを見ると、壁面の温度は内部温度よりも低くなるという指摘、専門家にも問題があるのはないかという指摘に加えて、「マンホール、のぞき窓、温度計座、差圧計座、及び導圧官等極端に温度の低い箇所がある」との指摘が記載されています。これらの指摘は乙16の1~4の取調べメモには記載されていませんね
→はい。
取調べメモに相嶋さんのこの指摘が記載されていない理由として、取調べ中にメモ取りをしていた藤田巡査部長や友田巡査長が書き落とした可能性も否定できないと思いますが、いかがですか
→そのような発言が出ていれば必ずメモに残っているはず。話があれば記載していた筈と認識しています。
取調べメモは、相嶋さんの発言を網羅的に記載したものではありませんよね
→要点は、漏らさずに記載しておりました。
あなたは相嶋さんに対して、最低温箇所に関する質問はされましたか
→最低温箇所の話題は振りませんでした。
それはなぜ。
→該非判定にどの程度かかわったかという故意に重点を置いていたからです。
相嶋さんから「壁面の温度は高くならない」という供述が出たのだから、最低温箇所に関する相嶋さんの認識を確認するのが自然だと思いますが、本当に聞いていないのですか
→はい。壁面の温度については、重なった菌が示すかどうかは大学で確認済みと思って確認しませんでした。
警視庁の乾熱殺菌理論でいうと、装置内部の最低温箇所がどこかは、極めて重要な事項であるということは理解されていましたよね?
→はい。
他の人から温度の上がりづらい箇所があるとの指摘があったかについて覚えていないのですか
→50人程度の技術者から聞いて、バグフィルタ下部が低いということは覚えています。
Fさんからは「一番詳しいのは相嶋さん」という話が出ていたのに、最低温箇所の話を聞かなかったのですか
→第一線が一番詳しいという認識なので。相嶋氏は一線を退いていたので、方向性のところで話を聞きました。
殺菌の認識面を書き漏らさないように指示していたということですが、どの部分の最低温箇所は殺菌要件の認識面に関わりますよね
<裁判官>故意と言うのは犯罪事実の認識ですよね。で、温度のところは認識として聞くべきではないかという認識はあるんですか。
→必要ないと考えていました。
<裁判官>その答えで良いんですか。良いなら良いですが。
→あ、失礼しました。(右手で額を触りながら。)もちろん故意に関わる部分なので、聞く必要はあるとは思っていました。が、あくまでも、最低温箇所については、他の従業員から聴取した結果で、足りると考えていました。他の従業員の供述で最低温箇所は特定したという認識だったので聞きませんでした。
代理人 以元洋輔
第5係では、毎朝定例で捜査会議をしていたということでよろしいですか
→毎朝会議していたと思います。その際に取調べの結果等捜査状況について、共有していた気がします。
普段は朝のいつやっているのですか
→大体8時30分~9時くらいです。
1月15日・16日の取調べで聴取した内容は、いつ捜査会議で報告をしましたか
→翌日の17日です。
その報告は、取調べメモに基づいて行ったのですか
→はい。
17日作成になっているけれども、朝の会議に間に合ったのですか
→前日に作ったりしていたので。17日にメモは作成したと思います。
乙16号証の1の取調べメモにある「壁面は高温になりにくい」との相嶋さんの指摘についても報告しましたか
→はい。
1月25日・25日の取調べで聴取した内容の報告も、取調べメモに基づいて行ったのですか
→はい。
乙16号証の3の取調べメモには、4頁の下から2段落目に「マンホールがあるから殺菌は無理」との相嶋さんの指摘が記載されていますが、この点も報告しましたか
→はい。
相嶋さんはなぜ「マンホールがあるから殺菌は無理」と供述していました
→薄くて壊れやすいのと、開けたら被爆するから。
マンホールを開けたら、内部を殺菌できたか確認できるのですか
→すいません、ちょっとよくわからないんですが、質問もう一度いいですか。
<裁判官>陳述書を示して質問されたらどうですか?
乙17、あなたの陳述書4頁を示します。
相嶋さんは、「開けた途端に細菌に感染するから殺菌することは無理と供述した」との記載がありますね。
マンホールを開けたら、内部を殺菌できたか確認できるんですか。
→すいません、ちょっとよくわからないですが、そのような供述をしていた記憶はあります。
マンホール円筒部分の温度が上がりにくいということは訊いたんですか
→訊いていないし、質問もしていないと思います。マンホールがどこを指しているのかわからなかったので、それが、どういうものなのか説明は求めました。
壁面、マンホールの話の報告に対して、捜査幹部や他の捜査員から何か発言はありませんでしたか
→ありませんでした。
先ほども述べましたが、温度の上がりづらい箇所があるという指摘は、あなたが相嶋さんを取り調べた2019年1月の約1か月前である2018年12月に、3人の従業員からの供述で上がってきています。それなのに、高温になりにくいから殺菌できないとの相嶋さんの指摘について、何も発言はなかったのですか
→ありませんでした。
公安部が最低温箇所の特定のために行った温度実験で、マンホールの部分の温度は測定していましたか
→私は実験には関わっていないので判りませんし、その当時、実験に関する資料も見ていないので、覚えていません。
結論としてはマンホールの温度測定はしていないのですが、相嶋さんから「マンホールがあるから無理」と供述があったにもかかわらず、マンホールの温度について捜査を行わなかったのはなぜですか
→必要ないと判断したからではないでしょうか。いずれにしても、私が、温度が上がりにくい箇所について、相嶋さんから訊いたことはありません。
本人(相嶋氏長男)
あなたが取り調べた相嶋静夫の顔を覚えていますか。
→はい。
父や家族に謝罪はありますか。
→謝罪はありませんが、亡くなったことにはお悔やみ申し上げます。捜査自体は適正だったと考えています。
<国>
特になし
<東京都・再主尋問>
指定代理人 嶺翔士
相嶋氏の取調べで、故意について明らかにする目的だったか
→はい。
マンホール・最低温箇所について、他の捜査員がより詳しい従業員から聞いていたのでよいということか。
→はい。
とはいえ、藤田・友田からもらさず記録するよう指示していたということか。
→はい。
実験には関与していないということだが、マンホールが壊れたという話を聞いたことがあるか
→いいえ。
<裁判官>
あなたが相嶋さんを調べた当時、他の役職員からどういう供述をしているかについて、情報は共有されていたか
→はい。社長の大川原・島田氏については確認していました。
原告会社の従業員から、温度の上がりづらい箇所の指摘があったという認識はあったか
→ありません。
マンホールについて、相嶋さんから出てそのときにマンホールの箇所について質問されたということですね
→はい。
噴霧乾燥器の器械の図面や写真を示して聞いたか
→どの時点かはわからないが見せました。
あなた自身は噴霧乾燥器の稼働の様子を見たことはあるか
→平成31年2月に見ました。
平成31年1月の取調べの時は
→ありませんでした。
測定口の話は、認識していたか
→認識していませんでした。
相嶋氏が原告会社の噴霧乾燥器の構造に詳しいと言う認識はあったか
→詳しいという認識はありました。
以上