重力波望遠鏡 LIGO Hanford Observatory(LIGO Exploration Center (LExC))--理科好きのアメリカ巡り--
どんなところ
アインシュタインが一般相対性理論で重力波の存在を予測した。質量がある物体は周囲の時空に歪みを発生させるが、その物体が運動すると時空の歪みが空間を減衰せず光速で伝わって行く。それが重力波と呼ばれるもの。
この重力波の存在自体は予測されていたが、実際に地球上で時空ー空間の歪みを検出するとなると、重力波による空間の歪みがとても小さいこと(地球ー太陽間の距離で水素原子1個分)、そしてその重力波による微小な空間の歪みに対し地球上でのさまざまなノイズが桁違いに大きいことから、実際には直接波の検出は不可能と考えられていた。ほんの2-30年前までは。
しかしさまざまな高感度な検出方法やノイズを抑える技術が開発され、頑張ればなんとかなるんじゃね?と各国がレーザー干渉計重力波検出装置(重力波望遠鏡)を建設した。
日本ではKAGRA(https://gwcenter.icrr.u-tokyo.ac.jp/)、欧州ではVIRGO(https://www.geo600.org/)、そして米国ではLIGO(https://www.ligo.caltech.edu/)が建設され、日々チューニングを重ねて検出精度・検出感度を高めている。
そして2016年2月12日、LIGOを用いて2015年9月14日に2つのブラックホールの合体によって発せられた重力波の検出に成功したと発表された。https://www.nao.ac.jp/news/topics/2016/20160212-gw.html
また2016年2月11日には連星中性子星合体で発生した重力波を検出した。
その重力波を世界で初めて検出したLIGO Hanfordの一般訪問者向け施設。
ちなみにLIGOは今回紹介するワシントン州のHanfordと、ルイジアナ州のLivingstonの二つが対になって構成されてる。二つの検出器への重力波の到達時間の差から、重力波がやってきた方向を検出してるよ。
見どころ
LIGO Hanfordには一般訪問者向けの施設はなかったが、2022年6月に一般訪問者向けの施設として LIGO Exploration Center (LExC)が開所された。
https://www.ligo.caltech.edu/WA/page/lexc
Drop-in Visits(立ち寄り訪問)
一番気軽なもの。予約不要。インタラクティブな展示や静的展示などを見学できる。重力波を検出するために設計された初期の装置の一つである歴史的なウェーバーバーや、LIGOの成功に欠かせないエンジニアリングの偉業であるクアッドサスペンションの実物大模型など。
Monthly Public Tours(月一の一般向けツアー)
毎月第二土曜日に開催されている一般向けのツアー。無償だが事前の予約が必要。約1時間のウォーキングツアーで屋内・屋外の施設を見学できる。屋外では干渉計の4kmに及ぶ両アームを見ることができる。屋内では干渉計の制御室で、世界で最も感度の高い測定装置を維持・操作する人々から直接、説明を受けることができる。
Private Tours(プライベートグループ向けツアー)
ツアー内容自体はMonthly Public Toursと同じだが、15名以上であれば平日に専用のツアーを予約することができる。対象は、家族連れ、大学関係者、教師、会議参加者、スカウト隊、科学クラブ、PNNLなど他の科学研究施設の同僚など。LIGOの見学に興味のある15人以上のグループには、プライベートツアーが適しているかもしれないとのこと。もしかして事前にリクエストしておけば、条件が許せば特別なリクエストに応えてもらえるかもしれない。少なくとも2週間以上前の予約が必要。
検出器の設備(たぶん一般訪問者は見ることはできない)
どこにある?
ワシントン州シアトルの南東に約200マイル/320km。
どうやって行く
羽田空港からシアトル空港までデルタ航空で直行約9時間。シアトル空港からレンタカーでI-90を使って約3時間。
https://www.ligo.caltech.edu/WA/page/lho-directions-contact
宿泊はどのあたりがお勧め?
大きな都市であるシアトルやポートランドからは離れているため、少なくともHandford周辺で一泊したほうが良いと思われる。
参考資料
事前に見ておくと良いです。
https://www.ligo.caltech.edu/WA/page/lho-post-ft
周辺にある見どころ
Hanford地区は第二次大戦中、および冷戦時代の核開発の最前線の一つだった。Hanfordはかつては小さな農村だったが、核開発施設建設のため住民は強制的に立ち退かされた。広島・長崎に落とされた原爆や、多くの核爆発実験で使われたプルトニウムを始めとする核物質がこのHanford地区で生産された。Hanford地区には当時の原爆水爆用プルトニウムの生産炉、実験炉、かつて原子力空母や潜水艦に搭載されていた原子炉の保管施設Trench 94などがある。
これらは一般の立ち入りは禁じられているが、当時のプルトニウム生産炉であるB原子炉など一部の施設は歴史的な遺構として一般公開されている。
これら核遺構を訪問するのなら、Manhattan Project - Hanford Visitor Centerの訪問は必須。
シアトルまで戻れば、一般見学もできるボーイングの工場や、シアトルマリナーズのホーム球場や、スターバックスコーヒーの1号店などがある。
このページで使っている画像について
このページで使われている全ての画像の著作権はLIGO-Caltech/MITにある。
詳細は下記のページを参照のこと。
https://www.ligo.caltech.edu/page/image-use-policy
Midjourney
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