独りの朝にバッハを聴く
夫と別居したことについて書こうと思う。
独り暮らしを始めて朝はバッハを聴く。
以前も朝はバッハを聴いていたのだけど今はもっとしっくりくる。
祈りが必要なのかもしれない。
夫を置いて2DKの古いアパートに引っ越した理由は
23年間の色んなすれ違いや自分の変化、様々ある。
自分の心の穴にちゃんと向き合わずに放置したことで
(もちろん子育てや他のことで忙しかったのだが)
ある青年の人生を危うく狂わせそうになり
深い傷を残してしまったことも理由のひとつである。
けれど一番大きな理由はおそらくグリーフ。
夫とは車で10分の距離にあり
アパートに引っ越してからも色んな用事で週末は行き来する。
外でランチを食べたり家で食事をしたりもする。
やっと気候も良くなったことだし
朝、窓を開けて「どこかに歩きに誘おうかな」と思う。
彼と私は山や海に出かけて歩くのが好きなのだ。
そう思ってすぐに重い気持ちになって止める。
夫と私は過去2年間に最愛の義弟を亡くし愛犬を亡くした。
私たちが共有するものは一人娘の心配以外は
亡くした者たちへの想い、グリーフしかない。
二人で美しい野山を歩いても。
弟を亡くし愛犬を亡くした夫を置いて出ていくなんて
とんでもない悪党なのだが
もう一緒に暮らしても私が彼にしてあげられることはないのだ。
だから独りのアパートで朝起きるとバッハを聴く。