
SS小説「残り者には懺悔を!」~#毎週ショートショートnote
俺は館内で映画を観ていた。タイトルは「残り者には懺悔を!」。
一〇人の犯罪者が迷路に閉じ込められ脱出手段を探すという筋書きで、逃げ遅れた最後の一人は全ての脱出口が封じられ、爆殺されるという映画だ。ラストで一人残されたヤクザ風の男が泣いて懺悔していた。
「悔い改めますから命だけはー、おーん」
願いも虚しく迷路ごと吹き飛び、男は絶命してジエンド。
つまらん。
俺は席を立った。瞬間におやと思った。満席だったはずの客席に誰もいない。出入り口にいた刑務員の姿もない。この館内にいるのは俺一人だ。
突然アナウンスが流れた。
「懺悔してください。一〇秒後に爆破します。カウント開始。一〇、九、八……」
おいおい、マジか。映画そのまんまじゃねえか。扉にダッシュして体当たりしたがびくともしない。
「五、四、三……」
俺は観念した。俺は人を三人殺している。だが………。
「懺悔などしねえ。くそ食らえだ!」
「二、一……ゼロ!」
客席ごと俺の身体は消し飛んだ。
(了)(四一〇文字)
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