Day2:自ら実践できないものを、人に強いることはできない。「クモの巣」を使った対話がポジティヴヘルスの土台。#PositiveNIPPONプロジェクト
6つの側面からなる”クモの巣”を対話の起点に
ポジティヴヘルスは、「社会的・身体的・感情的問題に直面した時に適応し、自ら管理する能力としての健康」 というコンセプト です。これを可視化し得るものが、下記の”クモの巣”です。オランダの方の例を見てみましょう。
①「身体の状態」
②「心の状態」
③「いきがい」
④「暮らしの質」
⑤「社会とのつながり」
⑥「日常機能」
この6つの項目について、自己評価し、点数をつけて点を結び、可視化します。
あくまで、”クモの巣”は、「対話」する材料としてのみ使用します。この”クモの巣”の結果を、本人も、この話を共にする人も、ジャッジするものではないのです。したがって、点数が低かったものは上げていくなど評価するものではありません。
今までは医療の技術頼みで自らの健康(健康診断、人間ドック、etc...)を確認してきたけれど、それだけでは健康という状態とは言えない。自分自身の健康に関して、(例えば、この”クモの巣”を使用するなどして)客観的な視点、主観的な視点を取り入れ、自らと向き合いう。そして、他者と対話していく中で、在りたい姿へ近づいていく。
その力こそが土台であり、決して数値化されたものだけが自分自身の健康をジャッジするものではない、ということを体験していきます。
守られるべきルールを元にした対話の力
現時点で、Day 2 まで終わっているのですが、一番自分の中で驚いているのは、これほどまでに「対話」に重きを置く時間を過ごしていることです。
それは研修の中のみではなく、ポジティヴヘルスを土台にした語りかけの核が「対話」であること。
さらにいうと、”クモの巣”を使って、対象者と話す際には、「対象者の心の安全を守る姿勢で」「オープンクエスチョンを使う」「耳を傾ける」「対象者の言葉を徹底して待つ」など、守られるべきルールがあります。
私自身は、何か人と話をしていたら、すぐにアドバイスをしたくなったり、自分の話をしがち。この守られるべきルールに慣れていくまではなかなか大変な気持ちでいましたが、少しずつ、自分でも実践できるようになってきました。
研修と研修の間に 実践 を求められる
Day 1 から続いている 実践 について、掘り下げていきたいと思います。
このポジティヴヘルスを対象者に伝える前に、まず自分自身が行い、ポジティヴヘルスの考え方が自分の暮らしにどのような変化を与えるのか、それをしっかりと観察する。
そのために 毎度研修と研修の間に 実践 を求められるのです。
①「自ら決めた目標を実践する」
”クモの巣”を使い、自己評価し可視化したあとは、さらに自分の好きなイメージに近い写真を選ぶ。その写真の状態に近づくためには、どんな行動を取る必要なのか、自ら考え、毎日5分間、そのための時間を取ること、という、非常にシンプルな内容です。
このプロセスは内省を促し、自ら目標を立て、小さなことから実践していきます。さらに面白いのは、自分の暮らしにいかに変化を与えたのか、与えなかったのか、観察をするところ。これは主観的な視点、客観的な視点の眼差しのトレーニングにもなり、今まで使っていなかった脳の感覚が研ぎ澄まされていくような、そんな気持ちになります。
「自ら実践できないものを、人に強いることはできない。」じゃあ、どうしたら実践し、自分が欲しい状態に持っていくことができるのか?
自己評価、そして自己主導していく。その際に理解してくれている家族、医療・介護職、そしてコミュニティの存在は非常に大きくなってきます。
オランダでは、こうしたコミュニティの存在についてもインタビューを重ねてこようと思っています。
次回は、さらに実践について記していきます。
更新:2024.3.31
藤岡聡子
福祉環境設計士⁑軽井沢町・ほっちのロッヂ 共同代表⁑PositiveNIPPONプロジェクトメンバー