イートイン脱税マンは違法か?正義マンは正しいのか?
消費税が増税されて早1週間が経過しましたね。増税及び軽減税率に対しては「言いたいことがあるんだよ」というようなことが山ほどありますが、本格的に触れるのはまたの機会にしたいと思います。(ガチ恋口上ではありません。むしろ同担拒否ばりに憎悪の感情が渦巻いています。)
しかし、現在ネットを騒がしている用語の中に「イートイン脱税」なるものがあります。
また、それに対抗する概念として「正義マン」というワードも現れてきました。
イートイン脱税マンvs正義マン
頑張れば短編アニメ作れそうな気がしますが、どちらを主人公とするかによって内容エンディングは変わってきそうですね。
イートイン脱税とは?
まず、「イートイン脱税」とは何かという点について整理しましょう。
これはコンビニ等で食品イートインで食事する場合消費税率が10%課されるのに対し、持ち帰りとする場合は8%のままとなる軽減税率の制度を利用した消費税をある種故意的に減らす行為です。
そもそも2019年10月1日から消費税率が8%から10%に変更になりました。そして今回のポイントとなる「軽減税率」も同時に適用されています。これは食品については消費税率を10%ではなく8%としましょうという制度です。
軽減税率の対象については一部のメディアやSNSでの発言にて「生活必需品」というような表現がなされていることがありますが、これは全く適切ではありません。軽減税率が適用されるのはあくまで食品と一定の要件を満たす新聞のみです。
軽減税率が適用されるのはあくまで「食品の売買」であり、「外食」は専門用語で「役務の提供」と解釈され、「食品の売買」とはみなされません。食品だけでなく料理人の腕や食事をする場所や時間の提供という方が主ですよねとみなされるわけです。
ではイートインはどうかというと、例えばイートインスペースがあるコンビニでそのコンビニで購入したホットスナック(からあげ君やファミチキ等)やパンを食べたとします。
これは税務署的には「それ、イートインというスペースで食べるために買ったんだよね?(イートインスペースがあるから買ったんだよね?)じゃあそれは外食だよね?」と解釈するわけです。そのためイートインで食事をする場合は消費税が10%となるわけです。しかし、同じ店で仮に同じものを買ったとしても持ち帰りでと言えば上記の理屈は通用しなくなり軽減税率が適用され8%で買うことができます。
ではここで持ち帰りとレジで言った後にイートインスペースで物を食べた場合はどうなるのでしょうか?イートインスペースがその旨を宣言した人だけが入れるような場所になっていれば良いですが、大抵の場合そうはなっていないですよね。なんなら何も買わずに誰でも自由に座れる場所が圧倒的大多数ではないでしょうか。
つまり、レジで持ち帰りですということで代金を支払ったとしてもイートインスペースには自由に入ることができ、そこで食事もできてしまうわけです。そのため最初からイートインスペースで食事をすることが目的でコンビニ等に行き、レジでは持ち帰りと言って8%の代金を支払い、その足でイートインスペースで食事をする一連の流れを俗に「イートイン脱税」と言います。
正義マンとは?
簡単に言えば上記のイートイン脱税をしている人たちを店員等にチクる人たちです。イートインでの食事は10%と決まっているのだからそのまま解釈すれば8%で買った人たちは本来そこにはいてはいけないはずです。同じ物を買って自分は10%の消費税を払ったのに相手は8%しか払っていなければ当然妬みの精神から相手に直接もしくは店員等にクレームを付けたくなるというのが人間の心理というものだと思います。
増税前から心配している人は多かったと思います。
まあ当然の反応といえば当然の反応ですよね。
で、結局どっちが正しいの?
ようやく結論ですが、正直モヤっとするような結論となります。
「道義上は正義マンが正しいが、法的にはイートイン脱税マンはそもそも脱税では無い」
この結論の根拠は国税庁が出している軽減税率のQ&Aにあります。
問52 店内にイートインスペースを設置したコンビニエンスストアにおいて、ホットドッグ、から揚げ等のホットスナックや弁当の販売を行い、顧客に自由にイートインスペースを利用させていますが、この場合の弁当等の販売は、軽減税率の適用対象となりますか。
【答】
イートインスペースを設置しているコンビニエンスストアにおいて、例えば、トレイや返却が必要な食器に入れて飲食料品を提供する場合などは、店内のイートインスペースで飲食させる「食事の提供」であり、軽減税率の適用対象となりません(改正法附則 34①一イ、軽減通達 10⑶)。
ところで、コンビニエンスストアでは、ご質問のようなホットスナックや弁当のように持ち帰ることも店内で飲食することも可能な商品を扱っており、このような商品について、店内で飲食させるか否かにかかわらず、持ち帰りの際に利用している容器等に入れて販売することがあります。このような場合には、顧客に対して店内飲食か持ち帰りかの意思確認を行うなどの方法で、軽減税率の適用対象となるかならないかを判定していただくこととな
ります。
なお、その際、大半の商品(飲食料品)が持ち帰りであることを前提として営業しているコンビニエンスストアの場合において、全ての顧客に店内飲食か持ち帰りかを質問することを必要とするものではなく、例えば、「イートインコーナーを利用する場合はお申し出ください」等の掲示をして意思確認を行うなど、営業の実態に応じた方法で意思確認を行うこととして差し支えありません。
イートイン問題はファミリーマートの貼り紙が特に話題になりましたね。
このお知らせは上記のQ&Aのなお書き以降をそのまま適用させたような文言です。
これの他にも日本フランチャイズチェーン協会からの貼り紙を貼っているお店もあるようですね。
あくまで国税庁は「レジで持ち帰りかイートインを聞いてね(もしくは掲示してね)。その時の税率が適用されるよ」と言っているわけです。
つまり、イートイン脱税マンの存在を当然積極的ではないものの黙認しているに近い状態です。
今やコンビニの店員は日本人の方が珍しいくらいです。そんな中、持ち帰りかイートインかを聞いて判定させるというのは店員の日本語読解スキルに左右されかねないので、こういった対応は仕方ないのかもしれませんが、やはりなんともすっきりしません。
お店は損しないのか?
本来10%徴収すべきところをイートイン脱税マンに対しては8%で販売しているので2%分お店は損しているのでは?という疑問も湧いてくると思いますが、結論から言うとお店は損しません。
そもそも消費税は「間接税」ですから消費者が国や地方自治体に払っている消費税をコンビニという事業者が一旦受けとり、消費者の代わりに納税しているわけです。
つまり、顧客から受け取る消費税はお店からしたら「他人のお金を預かっている」だけであり、10%のものが8%になったところで、その預かる額が増減するだけであり、お店の損益にはなんら影響ありません。(納税は決算日から2か月後なので10%で販売しておけば一時的にキャッシュフローが良くなるという点はありますが、いかんせん少額すぎてコスパは非常に悪いと思います。)
最後に
今回の増税は本当に厄介極まりない変更です。悪手以外の何物でもありません。
増税そのものがダメということではなく、増税にくっついてきた今回話題に挙げた軽減税率、それ以外にもインボイス制度の導入のような付随する変更点が非常に細かくそしてなぜそんなことをしたのか理解に苦しみます。
増税の良し悪しは全く別の論点になるのでここでは検討しませんが、少なくとも軽減税率やインボイス制度に明確なメリットを感じることはほぼありません。こういうことを書くと「変化に対応していかなきゃダメなんだ!」と思う人がいるかもしれません。私はメリットを明確に享受できる変化なら喜んで受け入れます。なんなら即以前の物を捨てることも厭いません。伝統で飯は食べられませんからね。
ただ勘違いしてほしくないのは別にイートイン脱税マンを擁護したり支援するつもりでこの記事を書いているわけではないという点です。むしろ正義マンの考えの方が正しい認識なわけですから正義マンが泣き寝入りするしかない今の状況がおかしいと思っています。このような監視社会とも言える状況は容易に想像できたはずなのに何ら対策をしていない点は明確に政府の責任かと思います。
イートイン脱税マンの行為が法的に問題ないからと言って積極的にすべき行為ではないのは明確なわけですし、みっともないとても卑しい行為だとは思います。(結果的に同じ状況になってしまったのであれば仕方がないとは思いますが、そのような状況は極めて稀だと思います。)
しかし、上記のような制度になっていることを知らずにイートイン脱税マンvs正義マンのような対立関係になってしまうのを危惧し、そうならないようお互いが正しい知識を持ち、正しい行動を取れるようにこの記事を書いています。
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