赤纏
家に鬼が住んでいる
家族が暮らす居間の真ん中で
堂々と皆の眼を睨んでいる
私は母の胎内からこいつに睨みつけられていた
盆に帰省した際
鬼と裏庭で口論になり裏庭の青々しい木々と共に鬼を燃やした
修羅の叫びが小さな集落に轟いた
これで我が家に穏やかな陽が昇る
そう願い自室に戻り仰向けになった
まだ息は荒く
落ち着かせるのに時間をかけた
そんな頃
畳の隙間から爛れた赤い手が私を羽交い締めにしてきた
ジタバタと暴れてみても身動きが取れない
そんな私を阿呆と思ったのか
耳元で怒号の様な高笑いが響いた
それからずっと私は言いなり
重い身体を引きずり生きた
溜息は地獄に落ち
別の鬼の餌となる
私の先祖はなにをした
これから辿る古き記憶
私の家族はなにをした
これから辿る新しき記憶
無に戻す迄
生きてやる