それは振り向くと消える亡霊の様に
吐き出した息は白く
それだけで容易に心が踊った
ザクザクと踏み散らす霜柱の上で
高揚した声は一瞬にして屋根まで弾んだ
氷柱は折っては剣となり
氷の騎士として悠然と私を強くした
降り続く白雪の景色の中には
無駄な音などなく
人の気配もない
私一人の銀世界
幼き頃の銀世界
「私はつい
幼少の私に逢いたくなった」
しかし
あの頃の冬の神は
今はきっと違う神
あの頃の冬の私は
今はきっと違う私
面影を探しに行こうと列車を待ったが
どうやら廃線になったらしい
逢えないどころか
私から手を差し出してはいけないのだ
冷たい風に身体を押され
私は駅を後にした
降り頻る白雪が私の足跡を消していく様に
あらゆる意義とは大きな私の身体でしか
もう体現できなくなってしまっている
そんな息の抜けるようなことを
しんしんと教え込まれた
とある雪の日
しんしんと