壊機光
荒々しい怒りは膨れ上がり破裂するものだと
ずっと思ってまいりました
暴発した機関銃ほど無邪気な悪意はこの世にないと
しっかり目を背けてまいりました
しかし私も端な人間
気がつけば膨れ上がった怒りはただただ爆撃に備えるだけの特攻隊になっておりました
私はこのまま炸裂し
健気なこの小さな家々を燃やすただの輩になって
飛び回っております
そんな私に
海は
風は
森林は
動物は
母は
何も言わずにそっと私を抱擁してくれました
不発弾は山に埋めて、土まで被せてくれました
怒りは私の記憶の隅に刻印されるだけの飾りになりました
しかしながら数日経つと
次の特攻隊が空の向こうからやってくるのが見えます
私に似た形の機体
埋めた筈のあの不発弾に誰かが水をやっていたのです
数日足らずで発芽した核弾頭は
海だけを残し
風さえも焼いていきました
これは私の撒いた種
謝りにいこうと海を目指しました
連鎖する怒りが打ち寄せる波と重なり
尊い光が海の中から頭をだすと
涙が止まりませんでした
手を合わせ祈ることが私の身仰ぎ
波が穏やかになったと同刻
私もその光の中に入ることが出来ました
それは
数多の命の結晶体
母の胎内にいた頃と同じ匂い
私はずっと助けられて歩いております
私はずっと導かれて動いております
できれば次も
母の腕の中から始めていきたいと目を瞑らせていただきます
それでは