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オーロヴィル滞在記-あたたくて居心地の良いエコビレッジ-

2023年9月から10月にかけてインドを訪問していました。そのときの体験や感じたことの忘備録です。


オーロヴィルについて

インド訪問中、1週間ほどオーロヴィル(Auroville)という町に滞在していました。オーロヴィルはMirra Alfassaによって1968年に設立され、世界中の人々が民族・国籍・思想信条を乗り越えて調和することを理念とした世界最大のエコビレッジです。

オーロヴィルは南インドの町・ポンディシェリの近くにあります。

オーロヴィルについてはインド在住のKaedeさんによる記事がとてもわかりやすく書かれていましたので、詳しい説明はここでは省略します。

オーロヴィルでの暮らしと印象

1週間という短い期間でしたが、オーロヴィルの印象を自分の体験と合わせて振り返ってみようと思います。以下が私の感じた「オーロヴィルってこんなところ」という感想になります。

皆が持っている「助け合い」の理念

オーロヴィルでは人に助けられたり、知らないことを教えてもらったり、という機会が幾度となくありました。

目的地に向かって夜1人で歩いていたらバイクに乗った女性が声をかけてくれ、「通り道だから」と近くまで送ってくださったり、おすすめの訪問地について聞いたら答えだけでなくオーロヴィルのあらゆる情報を時間をかけて丁寧に教えてくださったり。夜間イベント後、「宿が近いし送っていくよ」と当たり前のようにバイクに乗せてもらったり、なんてこともありました。

上記はほんの一部なのですが、とにかく「他者を助ける」という考えが当たり前に根付いている方が本当に多いなと感じましたし、その優しさにずっと助けられました。

また滞在を通して色々な人に助けてもらうことで、「自分もできることがあれば…」と強く感じるようになりました。そんな中、オーロヴィルで迷ってしまったインド人の兄弟を案内すべく、街灯のない暗闇の中一緒に自転車とバイクを走らせたのはいい思い出です。

オーロヴィルは中心部を離れると街灯がなく、舗装されていないところも多いので
夜間の徒歩・自転車移動は少し危険なことも。

サービス利用者もGiveする精神

オーロヴィルの公衆食堂「Solar Kitchen」を利用したり、農場でご飯をいただいた時は基本的に自分自身で使った食器を洗っていました。普段中々外では「食べた人が食器を片付ける」ということはしないので、最初少し驚いたのですが、段々とそれにも慣れていきました。

Solar Ktchenでは利用者が軽く食器を洗った後、
機械での洗浄が行われる仕組みができていました。

こういった習慣についてに詳しく聞くことはしませんでしたが、ご飯を作ってくれた人、その食材を作ってくれた人や自然、配膳をしてくれた人等々…いただいた食べ物に対してきちんと感謝を伝えるためなのかな、と自己解釈しています。

Solitude Farmという農場の食器洗い場。洗剤を使ってきれいに洗います。

他者を快く受け入れるカルチャー

オーロヴィルではふらっと寄った場所や集まりでも、すごく居心地が良いなといつも感じていました。とある農場へふらっと行った際、丁度行われていたお茶会に飛び入りで参加させてもらったり、たまたまお昼時に訪問していた工房でスタッフの方と「ランチに行こう!」という話になり、オーロヴィル内のカフェでご飯に行ったりと色々なところでたくさんの方にお世話になりました。「どこへ行っても受け入れてもらえる」というその開放的な雰囲気が居心地の良さを作っていたのだと思います。

オーロヴィルでは、日々様々なイベントが開かれていて居住者同士の交流の場がたくさん作られていました。私が参加したイベントはどこも、国籍や所属、肩書き等関係なく誰とでも心地よいコミュニケーションがとれる場になっていました。

月1で開かれているというイベント「Karaoke Night」は熱い盛り上がりでした。
宿泊していたゲストハウス近くで毎週行われているイベント。
火を囲んでみんなで太鼓を叩きました。

食を大切にする自給自足の仕組み

オーロヴィル内にはたくさんの農場がありますが、ここで収穫された農作物はオーロヴィル内の「Food Link」で販売されたり、レストランで活用されているそうで、町の中で食物を生産・活用する仕組みができていました。

Food Linkはオーロヴィルのスーパーマーケットのような場所。
オーロヴィルで生産された野菜などの食品が並べられています。

といっても完全な「自給自足」という形での運営はできていないようで、オーロヴィル外から輸入した加工食品や食料品も数多く並べられていました。ここを利用するにはオーロヴィルの永住者である通称「オーロヴィアン」の証である居住者番号が必要になるため、ビジターである自分は買い物することはできませんでした。

ちなみにオーロヴィアンになるとコミュニティへの貢献度(ボランティア等の奉仕活動)によってオーロヴィル内限定で使える通貨を得られる仕組みになっており、Food Linkでもその地域通貨を使って物を購入できるようになります。

公衆食堂「Solar Kichen」はビジターでもインドルピー支払いで利用が可能です。
長期滞在者は月払い(サブスク形態)で利用している方も多いそう。

ものづくりが重要な活動の1つ

オーロヴィルでは、アート活動もコミュニティや人々にとって重要な活動だと位置づけられているようで、オーロヴィル内には様々なものづくりの施設が点在しています。私も滞在中竹細工や木工家具、楽器製造、紙工芸など、様々な工房に訪問させてもらいました。

たくさんの工房があって見ているだけでも楽しいです。

製品の生産をすることはもちろんですが、中にはものづくりを通して実験的な試みを行っていたり、製品を販売することでクリエイターの雇用を確保する、といった社会的に意義のある活動を目的としている団体もありました。

オーロヴィルにものづくりの技術を学びにきているボランティアも多いようです。

現在のオーロヴィル

オーロヴィアンになりたくてもなれない人たち

オーロヴィル内には様々なコミュニティ、団体があり、インド国内外からたくさんの方がボランティアとして関わっています。中にはオーロヴィアン(永住者)になりたくてボランティアを続けている方も多くいらっしゃいました。

十数年前までは外国人でも1年くらい経てばオーロヴィアンとして認められていたそうですが、今はオーロヴィアンになるのもかなり難しいそうです。私が出会った方でも、10年近くかけてまだオーロヴィアンになれない‥という方もいらっしゃいました。そういった方々はボランティアをしつつ、空いた時間で副業をして生活費を稼いでいるのだとかで、オーロヴィアンになるには中々険しい道のりのようです。

変わりつつあるコミュニティ

オーロヴィルは現在インド政府からの支援を全面に受けながら運営しているそうです。そのためか、政府の思惑とオーロヴィルの理念の部分が合致しないところにジレンマを抱えているような印象も受けました。

実際20年近く住んでいる方々で「昔のオーロヴィルから変わってきているよ」というお話をされていた方は何人かいらっしゃいました。上に記した「オーロヴィアンに中々なれない(永住者としての認定がもらいにくい)」というのも1つの変化なのかなと思います。

政府としてはオーロヴィルを経済的な価値あるものとして再構築したり、インド人中心のコミュニティにしていきたいなどといった考えなどがあるようです。今後あらゆる施設の入場料が有料になったり、外国人の永住者は認められなくなったり…と、もしかしたら十数年後のオーロヴィルはまた違う姿になっているかもしれません。

週末は国内からの観光客も多くビジターセンター周辺は賑やかな雰囲気でした。

といいつつも、個人的にはこのあたたかくオープンな雰囲気を持つオーロヴィルの根幹の理念の部分は守られていってほしいなと切に願っています。

最後に

オーロヴィルは人の優しさに触れられ、自然の中で伸び伸びと過ごせるとても居心地の良い町でした。南インドに行かれることがあれば是非行ってみていただきたいおすすめの場所です。

ここまで読んでくださってありがとうございました!

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