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事業開発において生成AIが役立つとき

こんにちは、NEWhサービスデザイナーのわたなべです!
ここ1-2年で生成AIがどんどん進化してきていますが、最近は個人的な作業だけでなく、実際の事業開発案件においても生成AIを活用する場面がかなり増えてきています。その中で「こういうときには生成AIが役に立つ」「こういうときには生成AIには頼らない方が良さそう」という感覚が見えてきたので、一度まとめてみたいと思います。


そもそも生成AIってどんなことが得意なの

生成AIの得意なことをものすごくざっくり言うと…
一度に大量の情報を取り扱うことができる
という点だと思っています。

これらを念頭に起きつつ、具体的に生成AIが使える!と私やNEWhの他のメンバーが感じた点を事例を合わせて紹介していきます。またそれぞれがどのくらい活用できるか、個人的な実感値と併せて評価してみようと思います。

生成AIでできること/役に立つこと

①大量の情報を網羅的に検索・把握すること
(お役立ち度:★★★★★)

市場理解や現在のトレンドを幅広く知るための手段として、生成AIを使ったリサーチはとても便利です。 短時間で膨大な量の情報を得られるのは、生成AIの活用ならではのメリットだと考えています。

【実際の活用事例】
テーマに関する現在の市場調査、競合他社の取り組みを調べるのによく生成AIを活用しています。ざっと概況を把握するのに従来の10分の1以下の時間で完了するくらい効率的に情報収集ができている実感があります。またリサーチのためのプロンプトを用意しておくと毎回指定した通りに結果をアウトプットしてくれるので更に効率的に情報収集ができるようになりました。

【活用イメージ】定型のプロンプトで国内外の競合事例を調べ、リサーチシートに落とし込む

【注意したいこと】
リサーチワークの基本に近いですが、生成AIを使うときでも「調査したいこと」の観点を持つことが重要だと思います。生成AIではたくさんの情報を一気に収集できますが、やみくもに集めるだけだとうまく活用につなげることができません。またハルシネーション(生成AIがもっともらしい誤まった情報生成をすること)の問題も生成AI活用の際によく言われることかと思いますが、まず現況を理解するフェーズにおいてであれば全ての情報の真贋を事細かに見ていく必要はないと思っています。得られた情報をどう理解して何が重要なのか自分の言葉で語れるようになることが大切だと考えています。
また生成AIを使ったリサーチではインターネット上に上がっていない情報を洗い出すことはできないので、世に出ていない情報や自分たちが1番よくわかっているはずの情報を「まず生成AIに聞いてみよう」という使い方は避けるべきかと思います。

②とりあえずたくさんのアイデアや仮説を出すこと
(お役立ち度:★★★★)

事業開発においてまず仮説を洗い出してみる、アイデアの数をとにかくたくさん出したい、というときに生成AIはとても役立つなと思います。特にアイデアのかけ合わせなど、「切り口はたくさんあるけど膨らますことができない」というときに生成AIはすごく役に立つなと感じます。

【実際の活用事例】
プロジェクトにおける初期仮説の洗い出しや顧客課題の構造化ワークに生成AIの力を借りていました。まず仮説を出すところは生成AIに任せてしまうことで「どういうことが言えるか」といった仮説の深堀りや課題の構造的な理解に注力することができると思います。

【活用イメージ】生成AIに背景情報をインプットし、一次仮説を創出。miroで付箋化して活用する

【注意したいこと】
生成AIが出してくるアイデアや仮説は粗いものが多いです。そして切り口が同じだと似たようなものが出てくることも…。生成AIのアウトプットをそのまま活用するのではなく、それをたたき台にしてどう料理するかが人の力の見せどころ(?)なのかなと思っています。

③情報を一次的にまとめること
(お役立ち度:★★★)

上記のような大量にアウトプットした情報を素早くざっと整理してくれるのも、生成AIに助けられているなと感じるところです。

【実際の活用事例】
付箋ベース書き出した自社の強みやリソースを生成AIにインプットすることで一次グルーピングを作成してもらうのに活用していました。最近はテキストだけでなくビジュアルでのアウトプットができる生成AIも多くあるので、一次情報の整理がより効率的にできていると感じます。初期のたたき台を作ってもらえることで、どう構造化していくか考える作業に早く進めるようになった実感があります。

【活用イメージ】テーマに関する課題を一次的に構造化(イシューマップ化)して分析する

【注意したいこと】
あくまで一次情報の整理として使えるレベルであり、複雑な図解や概念図の作成は難しい
ので、このあたりはまだまだ人の手は必要な領域であると思います。また統計的な分析など、結果のイメージはあるけれどそれを行うためのタスク(データの整理など)が明確になっていない、というような状況だと欲しいアウトプットが出せない…なんてことも起きてしまうようです。

④何かに対して評価をすること
(お役立ち度:★★★)

生成AIは事業機会アイデアやコンセプトなどの評価にも使えます。何かしらの評価軸をインプットした上でそれに基づいて点数付けをやってもらうなど、客観的な評価をしてもらえるのも人にはできない、生成AIの良さかなと思います。

【実際の活用事例】
各人で考えた事業機会アイデアに対して点数付けをしてもらうのに生成AIを使っていました。 情報量の多いアイデアを即座に評価してもらうことで、選定のためのディスカッションの良い指標とすることができるなと思います。

【活用イメージ】事業機会アイデアを生成AIにインプットし、アイデアを評価/点数付けしてもらう

【注意したいこと】
評価してもらうには評価軸が必ず必要です。その軸は生成AIに定めてもらうのではなく自分たちで定めインプットした上で評価しないと、私達自身の言葉で結果を語ることができません。「何を以てこれが評価されているのか?」「評価に際しての基準は?」という問いに対して自分自身で明確に説明できることが重要だと考えます。
また人の行動・感情への紐づけなど定性的な評価は難しく、定性評価はまだまだ人自身の手で行わないと難しいのかなと感じています。

生成AIでできないこと/役に立たないこと

正確な情報を噛み砕き、解釈し、考えを深めること
幅広いリサーチ、探索ワークに便利な生成AIですが、その情報を深く理解し解釈した上で活用していくにはまだまだ人の力が必要だと考えています。例えば大量のインタビュー結果から事実情報をグルーピングしてもらったとき、現状としてはかなり「普通な」ラベリング結果が出力されます。それらを元に再度解釈をしてラベルをつけ、意味を探索していくワークは自分たちの手で行わないと中々インサイトが深められないとも感じています。
また情報の確実性・正確性が必要なときは生成AIを使った情報収集には注意が必要です。

自分たちのWILLを形づくること
生成AIでたたきを作ったり仮説を作ったりできることは便利ではありますが、個人やチームとしての思いを言語化する、形づくっていく行為は人の手で行わないと自分たちの納得感が得られるものが作れないと考えています。チームで合意形成を図ったり、自分たちが「こうしたい」と考えている思いのようなものをつくるのは私たち自身で行っていく必要があると思います。

明確なイメージがあるものを作り上げること
ある概念をビジュアルでわかりやすく表現したり、明確なアウトプットイメージのあるものを作ることは今のところ生成AIでは難しいと思っています(例:カスタマージャーニーマップのような情報量の多い表現や詳細な描画指示が必要なイメージ作成など) 。もしかしたら何かしら方法があるのかもしれませんが、時間ばかりかかるイメージがあるため、今のところ「効率的に」活用するという点においては不向きかもしれません。

あえて不合理な情報をアイデアに盛り込むこと
生成AIはアイデア出しにしろ分析にしろ「もっともらしい」「合理的な」答えを出してくれます。ただ、戦略上不合理なことや一見理にかなっていないようなアイデアを創造したいときに生成AIの活用はまだまだ難しそうです。

さいごに

今回は生成AIができること/できないことをテーマに事例と合わせての体感値をご紹介しました。 生成AIとても便利で様々な用途がありますが、何に使うにしても「何のために利用するのかが明確になっている」「結果について自分の言葉で語れる」ことが大事なのかなと思います。

生成AI界隈はこれからもどんどん進化していきそうですし、その変化に負けないようこれからもどんどん使っていきたいと思います(皆様もぜひ)。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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