〇〇のために働かないすすめ
孤立が生んだ社会問題の解消法
社会で生きづらさを感じ、再就職を繰り返す方や、鬱・発達障害などによって就職に困難な方が増えてきています。
私は、コミュニティ形成や心の発達に興味があり、社会の仕組みの中で分離してきたものを繋げ直す事をテーマに仲間と活動してきました。その中でわかってきた「働き方・生き方」についてお伝えします。
・生きづらさを感じている方、そのご家族や支援者へ
・倒れにくい企業作り、障害者雇用について
参考になればと思いお話しさせていただきます。
多様な人の中にいると自分が何者でもよくなる
いるかビレッジは、2010年から愛知県豊橋市にてスタートし、場づくりを行なってきました。
いるかビレッジでは、赤ちゃんからお年寄り・外国人・障害者など多様な方が訪れます。畑や醤油作りをし、共に文化を学び、多様性のある保育園があります。多様な世界を知る事は、自己と他者を受け入れる力を身につけます。
以下のような日々が日常でした。
・他の親に抱かれ眠る子
・近所のおじいちゃんに抱っこされると泣き止む子
・大学生の男の子がオムツを換える
・ブラジル人女性がお年寄りの介助する
・お祝いケーキはフィリピン式
そんな多様性ある職場での障害者の雇用は、支援というより「共に生きる人」でした。
「〇〇のために、ではなく〇〇と共に〜」の意識改革
畑や整備を業務とする鬱症状の男性Aさん。病状がひどい時は大声で路上を歩く事があるほど症状に苦しんでいました。いるかビレッジで出勤し始めてからAさんの変化を感じるようになりました。
少ない情報が繋がり直しを可能にする
「ここにダンゴムシがいるよ」「一緒にうさぎ触ろうか」と子供や生き物、お年寄り、誰にでも優しいAさん。Aさんはあっという間に子ども達の人気者になり、ママ達からは色んなことを頼られるようになりました。
Aさんは「自分の役割と居場所」を明確にさせ次第と毎日出勤するようになっていきます。
Aさんはコミュニティの中で自分の役割を見つけ、所属感、貢献感を感じ、病状を安定させていったのです。
私はそれを「つながり直し」と呼びます。
社会との繋がり、他者との繋がり、自己との繋がり、命との繋がり、、そこに鬱などの障害名は関係ないのです。むしろそれらの情報がない方が関わりやすく、それらに興味を持たない子どもこそ繋がり直しのエキスパートです。
症状や過去の情報は少しづつ共有し合っても遅くはないのです。
いるかビレッジFBページ:
https://www.facebook.com/irukavillage/
混ぜ合わせ新しい感動を創造する
この職場では、『ともに暮らしを立てる Co-living』どのような立場であっても、多様な将来像を描ける地域社会づくりを理念においています。(外国人、障害者、不登校の子どもを持つシングルマザーなど)
以下は同じグループ事業の生活デザインサービス笑久(介護デイサービス)の事例です。
ここでは血の繋がりのない赤ちゃんからお年寄り3世代が家族のように共に過ごし、以下のような事が叶えられています。
①赤ちゃんがいるとお年寄りが自主的に笑い、体を動かします。これぞリハビリ予防の本質。守らなければならない者がいると、人は役割を見つけ元気になります。
②赤ちゃんは家で母と2人でいる以上にたくさんの人に抱かれ「可愛いね」と笑顔をもらい、感受性や神経を発達させます。お年寄りに対する違和感なく育ちます。
③子連れ出勤する母は社会の孤立から脱し、家計経済を安定させます。
④急な子どもの熱などにもママ同士のフォロー体制があり、この時代の介護業界でも人材不足に陥ることはありません。
これらの例から、
「ために、ではなく、共に」という意識が、就労者、支援者、雇用者が共通して持つことによって、あらゆる社会問題を解消するとお伝えしたいのです。
https://note.com/jjjp/n/na9814f71cecd
http://dai-nagoya.univnet.jp/subjects/detail/360
まとめ:共に生きるために今できる事
●生きづらさを感じている就労希望者へ
可能な限り「自己理解(自分の役割)」し、「共によくなろう(貢献)」と取り組みましょう。病気を理解してもらえないといって疲弊するのではなく、まず受け入れてもらったことに感謝し、誠実で素直にコミュニケーションを取りましょう。
等身大の自分を受け入れ、理想に執着しすぎず、今できる事から選択します。誠実で、謙虚で、素直な身の振る舞いが、いつか他の障害者就労者をサポートすることになります。
●雇用主の方へ
「障害者雇用をするなら罰金を払う方がいい」という過去の心の傷もご理解いたします。次世代のリーダーとしてレジリエンスある強い組織にするには、従業員の役割を見つけ、柔軟に配置することを念頭におきましょう。業務を細分化し、1人3役を担う事でフォロー体制を取り入れます。雇用の際にはトライアル雇用制度や実習期間を設けるなどしてマッチングを見極めます。今や障害有無に限らず、働き方への価値観自体が「出世したい」というより「役割を生かしたい」「繋がりが大事」と変わったのです。
●支援者、ご家族の方へ
数十年で「障害者のために〜」と制度化した事で多くの方を救い、適切な支援ができる一方、施設や社会的分業により地域当事者が分離してしまいました。
「知的障害の人と道をすれ違うと怖い」「お年寄りに席が譲れない」「ヘイトスピーチ」と聞くと、こんなにも分離し多様性がなくなったことか!と感じます。
ご家族や福祉職員の「あなたのために〜」という思いは、その方を可能性を狭くしている事があります。福祉ならではのあるある問題とも思いますが、評価を繰り返し、管理をする事が目的になってしまう事があり注意が必要です。
本当の支援というのは、無条件に信じてあなたは大丈夫と言い続ける事。それをする時、実は支援者が一番イキイキとする瞬間だったりするんです。支援者が疲弊し傷つく事が多くあれば、まず支援する前にご自身に寄り添ってください。そうする事がその方の一番の支援になるのかもしれません。
また(福祉業界の考えと逆をいくようですが)情報は少ない方が先入観無くチャンスが広がる場合があることも念頭におきましょう。
私にとって働く事は、共に生きる事
現在は、長野市で「働き方研究所カランコエ」という就職サポート塾を行なっています。
「働く事は人生を豊かにするひとつの方法」として、働く事で役割を生かし、自己実現、社会との繋がりなど得られるものだと伝えています。
カランコエが行なっている100人サポータープロジェクトでは、様々な方にインタビューをし「100人いれば100通りの生き方、働き方がある」と広い視野を獲得し自己との繋がり直しをはかります。
私はカランコエで「支援をしている」を思っていません。ご縁ある方の人生のほんの数年、私が存在し、何か良い影響を及ぼし合うために関わり合う。そして私も学び、また役割を生かしてもらっていると考えています。それが、私にとって働くこと(共に生きること)なのです。
カランコエHP
https://www.kalan150.com
「〇〇のために」という時代は終わりを迎えています。
自分にもよくて、会社にもよくて、その他にも良いとされることが、応援され生き残る時代なのです。
【著者プロフィール】
伊藤 芙美(旧姓 前田)いとう ふみ
1989年愛知県西尾市生まれ
保育士として知的障害児施設の入所部門に4年在籍
自給自足、ママ支援、障害者を受け入れる社会に興味を持ち
2012年街中エコビレッジ いるかビレッジを仲間と立ち上げ
2014年親子で通える育ちの場 ちゃいるーかの森立ち上げ
他、小学生を対象にした自然学校や、循環型の暮らしデザインの提案としてパーマカルチャーガーデンデザインのイベント運営などを行う。
2015年就労支援役員として事業開始 コミュニティの中で、農業や個性を生かした事業に挑戦
2018年オーストラリア コミュニティスクール、民間自然教育、パーマカルチャー有機農業を学ぶ
2019年インド ヨガインストラクタースクール
2020年長野市 就労移行支援カランコエにて管理者
2021年キッズヨガインストラクター講習修了
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