#06 「反逆のアイドル、樋口円香について。」
「アイドルマスター シャイニーカラーズ」
この血沸き肉踊らずにおけぬ作品タイトルに反し、輝く事を頑なに拒絶するアイドルがひとりいる。
その名も樋口円香。
何を隠そう、わたくしことWabokuが担当するアイドルその一人である。
アイドルを目指すに於き、
およそ必須と思われる資質と熱意を持ち合わせることなく業界へ飛び込み、
貼り付けた笑顔と持ち前の器用さにより着実に頂上へ昇り詰めていく彼女の存在は、
まさに異端の一言に尽きる。
一方で、彼女は大変な毒舌キャラとして業界内外を問わず知られるほどの存在でもある。
「視界に入らないでもらえますか」「アイドルって楽な商売」「ミスター不純物」....
失言をあげれば枚挙に暇がない。
また彼女は他アイドルと異なり、常に敬語を用いてのコミュニケーションに徹してくる。
朝コミュ、営業、本番前、いつ如何なる場合でもだ。
「私はあなたなんて信用していませんよ」
...とは言わないが、態度でわかる敬遠振りである。
当時、樋口円香というアイドルを担当することになったWabokuは
Twitterの鍵アカウントにて次のように記述している。
「アイドルを舐めくさりやがって、、俺が清く正しく貴様をトップアイドルへ導いてやるぞ」(原文ママ)
それほどまでに印象が悪いアイドルだったのだ。
(といいつつ普通に笑いながらプレイしてたけど)
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未プレイの方へ向けて軽い説明をさせて頂くと、
樋口円香には3人の幼馴染がおり、そのうち親友である浅倉透が
プロデューサーとの運命的な出会いにより(誇張ではなく本当に運命的。本編プレイ推奨)、アイドルの世界へといざなわれ、他2名の幼馴染もそれに追随。
それを怪しく思った樋口は、
「アイドル志望なので話を聞きたい」とプロデューサーを呼び止め、事務所の内情を探るという奸計を巡らせる。
話し合いの末、一旦は得心したものの
引き続き監視を行うという名目のもと、(プロデューサーからの熱い勧誘も手伝って)自身もアイドルへ踏み出す決意を固める。
....というのが樋口円香がアイドルへ至った大まかな流れである。
ちなみに私は上記に加え
「幼馴染4人という均衡を破ったプロデューサーを憎んでいる」という設定を付随して樋口円香とコミュニケーションを図っている。
こう考える事で全ての行動に得心がいくのだ。
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このように人間味たっぷりの女子高生アイドル樋口円香だが、
ユニットメンバーの4人と関わる際は当然平時とは違う顔を見せる。
私ことWabokuが特に印象強く記憶しているのが、期間限定コミュ「海に出るつもりじゃなかったし」の一幕である。
(ちなみにこのコミュは同名の児童文学をモチーフとした、ノクチルの4人がアイドルとして欠けているものを一丸となり見つけ出すという内容である)
コミュのラスト、騎馬戦に敗れたノクチル(主に小糸ちゃん)が、優勝してくるという公約を守れなかったことについて反省の念を口にしている時、
「あんなものは自分たちを焚き付けるハッタリに決まっている。」(要約)
と吐き捨てたのだ。
なんとプロデューサーを責任所在のスケープゴートにしたばかりか、あまつさえユニットの結束をより強めようと諮る、
その底なしのツンケン具合と仲間想いの一面に、私は思わず心の中で拍手喝采を送ってしまったほどである。
(煽りや皮肉ではなく純粋にイイと思っている)
と同時に、本人の前であろうが幼馴染4人の場であろうが言動を貫徹する姿に、
私は絶対にプロデューサーを信用しない
という意志も強く感じた。
(それだけに彼女をトップアイドルへ導いた時の感慨はひと塩なのだ)
こうして俯瞰して彼女を見ていると、
何もかも信じず己の腕っ節だけで解決しようとする、人生のある時期多くの人が経験する孤独な戦いを追体験しているようで、
そう、P以前になんだか放っておけない気分になるのだ。
アイドルという存在を介して己について振り返る。
やはりアイドルマスターとは人生である。
こうして私は思いを新たに
再びブラウザへ向き合うのであった。
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