【n%フィクション#6】呪いアイテム(据置型)

触らぬ神に祟りなし,入らぬ風呂に障りなし
ただでさえトラブルを呼びやすいんだ、
これくらいの願掛けをしたってバチは当たらんだろう。

〈序〉
世の中には呪いの〇〇というものがある。
持つこと、見ること、知ることで障り呪われる恐ろしい一品達、
少し前だとアンビリーバボーで特集された呪い面や道頓堀に沈んでいたカーネルサンダース人形などが有名だろう。巷で囁かれるこれらの呪具の信憑性はさておき、多かれ少なかれ、誰だって奇妙や不幸が重なれば自ずと非科学的存在を疑いたくなるものだ。

かくいう自分もそうである。
果たして、我が家にあるコイツは本物なのだろうか...?

〈破〉
我が家の呪いアイテム。
結論から書くと、それは「バスタブ」である。
バスタブとは何やかんやとどんな小さい家でも着いているFRP(ガラス繊維強化プラスチック)性などの大型陶器、基本入浴、たまに染め物や○体処理のために使われる汎用性の高い生活必須アイテムだ。「ちょっと待て、仮にバスタブなら常時呪いが発生してるのかお前の家は」と思った人が少なからずいるだろう。ここらへんに少し癖がある、我が家の呪いアイテムは、ちょくちょく異音や、やたら長い髪落ちているなどおちゃめな現象はあるものの、そのままだと何も発生しない。発動条件:それはズバリお湯を張り入浴することで発生する。具体的には入浴後から2日以内に何らかの中~大型不幸に見舞われる。
 始まりは、2020年8月のことだった。福岡上陸から4ヶ月、悲しくもすべてにおいて、オンライン至上主義故に大概馴染めず、孤独や孤立を感じることが多い日々だった。明くる日、こんなんじゃダメだ!!、できることから気分転換を図ろう。そう思いお湯を張った、入浴でリラックスを試みたかった。普段はひとり暮らしなのに不経済と忌避するものの、入ればやはり気持ちいい。何やかんやと30分近く入っていた。

そして2日後、自分はコロナで倒れ、無事隔離生活を送る羽目になった。

10日と少しばかりの解放後、やや自分はお風呂にトラウマを覚えた。縁起が悪いにも程がある。存外チキンな自分はそれ以来、半身浴として、たまにしか使えなかった。だが半身浴として使っても、程度こそコロナには劣るが食中毒で倒れたり、やや修羅場に巻き込まれたりと大概ろくな目に合わなかった。そのため、いつしか浴槽を使うという選択肢すら頭から消え去っていた。

〈急〉
そこから更に数ヶ月後、2021年は5月、始まりからすれば約1年弱、喉元すぎれば何とやらではないが、ただの偶然だった、何ならその偶然をやたら推してた自分に恥ずかしさすらある。また友人やホテルから入浴剤を恵んで貰ったことあり、久しぶりにお湯はりを決意し入浴を試みた。最初こそ入るのにやや躊躇はあったものの、入ってみれば、久しぶりの全身が温まる感覚、5分もすれば、すっかり和んでいた。結局アイスや思案の持ち込みにより、1年ぶりの入浴タイムは90分にも及んだ。

そしてドキドキの入浴以降の2日間。ここさえ超えれば偶然は証明される。そう思いつつ1.5日が経過、体調も悪くない。修羅場にも追い込まれていない。やっぱただの気の所為じゃないか、これからはちょくちょく入浴していこう。

そう思った矢先、気づけば自分は救急車に運ばれていた。

詳細は別ナンバーで書くが、自転車に轢かれた。というかお互い全力ダッシュの状態で正面衝突した。幸いにも自分は無傷であれど財布と向こうは無傷じゃなかった。福岡に来て1年と少し、3回目の救急車案件。ホントに毎度ごめんなさい。
帰宅後、自分は浴槽を封印した。具体的にはバケツなどを設置することでお湯はりを出来なくした。入浴さえしなければ何も起きない....はず。SCPでいうところのSafeオブジェクトだ。言うて数回の不幸と怪奇現象、まだまだ気の所為の範囲で収まるがもう確かめる気がしなかった。自分はまだ初期型に感染したものの、変異種には感染していない、車にも撥ねられていない。ごく身近に存在自体がロシアンルーレットみたいな奴がいる。あまりにも、あまりにも不安定要素が多すぎる。仮に真に呪いアイテムなら間違いなくこれらが爆発する。触らぬ神に祟りなし、入らぬ風呂に障りなし。ただでさえトラブルを呼びやすいんだ、これくらいの願掛けをしたってバチは当たらんだろう。高専時代に毎日入浴していた日々は遠く懐かしい、入浴ってここまでレベル高かったけ?

〈募集〉
○我が家のお風呂に入浴してくれませんか
○応募条件:幸せすぎてちょっとくらい不幸になってもいい方、年齢不問
○報酬:フルーツ牛乳3本(不幸度合いに見合って本数要検討)
○補遺:当家のボディソープは弱アルカリ性です、弱酸性ではありません。

「呪いアイテム(据置型)」 10%フィクション

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