エウリュノメより長くなったよカリテスの話、てか結局ボッティチェリの話。
今日はゼウスが手を出した(←表現がアレですけど)女神の1人、「エウリュノメ」について。
実は「エウリュノメ」は古代ギリシャで最も古く、特に崇められてた神とも言われてるんだ。
ギリシャ語諸族(いわゆるギリシャ人)が侵入する前の先住民=ペラスゴイ人が崇拝していたのが「エウリュノメ」とされている。
イギリスの小説家、ロバート・グレイヴスの「ギリシャ神話」には「ペラスゴイ人の創世神話」が書かれているけど、そこにはカオスから最初に生まれ、世界を作り統治したのは「エウリュノメ」とされてるんだ。
これはこれでとても面白いお話なんだけど、こちらではヘシオドスの神統紀(カオス→ガイア説)を元にして書いているので、そちらは割愛させていただきます(^^)
さて、エウリュノメ。
オアケノスとテテュスの間に生まれ、姉妹の1人にはメティス(ゼウスの最初の妻)もいる。
そしてエウリュノメは、海や泉、地下水などを守る女神たち=オアケニデス(エウリュノメの姉妹でもある。しかしその数なんと3000人!!)を統率するリーダーでもあったんだ。
3000人を従えるリーダーって・・・中々すごいよね。
性格は穏やかで優しく、面倒見が良い。
(前回、ヘラの子供のヘパイストスが「生まれた瞬間から可哀想な目にあう」と書いたけど、それを救ったのがエウリュノメ)
当然美人でもあるから、ゼウスの目に止まらないはずはなく・・・
だけど、ゼウスはこの「3000人を従えているエウリュノメの権力」欲しさに彼女に近づいた、との説もあるんだ。。
い、いきなり政治臭がプンプンだけど、言うたらゼウスは「最高神」なんだから、そういう姑息なマネはしないでいただきたいもんですな。
(ただの節操ないエロ神の方が面白いじゃないか)
ゼウスとエウリュノメの子供(達)
まぁそんなこんなで、ゼウスはエウリュノメを口説き落とし、2人の間には子供ができたんだ。
それが3人の女神「カリテス」。
名前は
・アグライア(輝き)
・エウプロシュネ(喜び)
・タレイア(花盛り/繁栄)
アプロディテ(美と愛欲の女神)の侍女として仕えていることもあって、
カリテスは「3美神」とも呼ばれてるんだ。
そして、こちらもホーライやモイライ同様「複数形」で、単数だと「カリス」になる。(なんだか英単語の勉強みたいだ。。)
カリスはギリシャ語で「感謝」「恩恵」と言う意味なんだけど、神話内では「美と優雅を司る女神」とされているよ。
カリスマの語源
現代では、みんなが憧れるような資質を持った人を「カリスマ性がある」と言ったりするけど、その言葉は元は「カリス」から来てるんだ。
「カリスマ」は「カリス」からの派生語で、元の意味の「感謝」「恩恵」から
「神からの賜物」と言う意味としてキリスト教用語に用いられたんだ。
その後ドイツの社会学者によって「カリスマ」は、神秘性がある政治や宗教の指導者、また彼らによる支配そのもの、を指す言葉になり、一般用語として広まっていったんだね。
カリテスの絵画といえば・・・
カリテスも神話に出てくるエピソードは少ないけど、その姿を描かれた有名かつ美しい絵画があるね。
プリマヴェーラ/春
作者:サンドロ・ボッティチェリ
制作年:1478−1482年頃
所蔵:ウフィツィ美術館(イタリア フィレンツェ)
向かって中央左側にいる3人がカリテス。
ただし、ボッティチェリが描いたカリテスは、前述した3人の名前の意味(輝き、喜び、花盛り)とはちょっと違う、と言われてるんだ。
向かって左側、3人のうち顔がよく見えている女神は「愛欲」を表している。
中央の、やや背を向け顔を左側に向けている女神は「貞節」を表している。
そして一番右側の女神が「美」で、この相反する2つの性質を統一している。
貞節の女神の衣装は、愛欲の女神の方に向けて、肩がほとんど脱げているよね。
これは「愛欲への誘い」の暗示。
また、頭上にいるエロス(キューピッド)の矢は、貞節の女神に向けて放たれようとしている。
更に、貞節の女神の視線は左側にいるヘルメス(ローマ神話ではメリクリウス)に向けられている。
つまり、
「貞節の女神」は愛欲の女神と接触することによって「愛に導かれ」、
間もなくエロスによって矢が放たれると「愛、そして愛欲を実感」し、
「美しさ」に浸ることができる
・・・と言う哲学性(ルネサンス新プラトン主義)に基づいて描かれているんだね。
結婚記念プレゼント
このボッティチェリの「プリマヴェーラ」は、メディチ家の「ロレンツォ豪華王」の又従兄弟にあたる「ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ」の結婚記念のために描かれたものだと言われてる。
(どうでもいいけど家族・親族に同じ名前をつけるのやめてくれ(泣)※メディチ家はロレンツォとジョヴァンニって名前がうじゃうじゃいる)
更に付け加えると、中央のアプロディテは「聖母マリア」でもある、と考えられているんだ。
新プラトン主義(ネオプラトニズム)を説明できる技量も専門知識も私にはありませんが^^;、
少なくともルネサンスにおける「新プラトン主義」では、アプロディテ(愛欲)と聖母マリア(貞節、慈愛)とを合体させ、「愛と美を繋ぐことは神と世界と私たちを繋ぐ」との考えが主流だったようです。
結婚おめでとう!の要素はたくさん入っているけど・・・
「愛」や「美」を象徴する登場人物や春の到来を感じさせる美しい草花が描かれたこの絵は確かに結婚祝いにはもってこいなんだけど・・・
死を意味する植物。
この絵には約190種類の草花が描かれてる(すごい!)と言われているんだ。
多くは愛、結婚、幸せを意味する植物らしいけど、中には「死」を意味する花々も。。
たまたま・・・?描き間違えた?
いやいや、植物学にも精通してたボッティチェリが、そこ間違うかね?と言う疑問。
ヘルメスの存在。
通説では「天界と地上を行き来するヘルメスがケリュケイオン(杖)で雲を押しとどめ、神の世界だけじゃなく、人間世界にも春の到来を告げている」とされている。
・・・けど、ヘルメスは「死者の魂を冥界に導く案内役」ともされてるんだ。
そしてケリュケイオンは、別名「伝令の杖」
(雲を押しとどめてるのではなく、雲をかき分け、冥界からの伝令を探してる?)
死を意味する草花、死者の魂を冥界に導くヘラクレス、そして伝令の杖・・・
なぜ結婚を祝う絵に、これらを入れたんだろう・・・?
ボッティチェリの絵の読み解きはかなり難解だと言われています。
この「プリマヴェーラ」も沢山の研究家が色んな解釈を出しています。
だけど「本当のこと」は結局はボッティチェリにしかわからないんだろうね。
私としては・・・
やっぱりボッティチェリが描く衣装はオシャレすぎる!!!
が一番なんだけど。(そこかい)
うわー!今日は長くなっちゃいました!!
では、また!
"プリマヴェーラのカリテスについての記述"
参考図書:高階秀爾「ルネサンスの光と闇」「名画を見る眼」
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