男でも女でもない
私のスキンヘッドを見て、職場の男性が「もう、年齢も性別もよくわかんないね」と言った。否定はしない。まぁ見た目はどうあれ、女には違いないのだけど。還暦を窺う年齢になって、世の中の流れから少し降りて社会を眺めている様な心境である。後ろ向きになる訳にも行かず、さりとて流れにドップリ浸かるにはフットワークも気概もない。「流れ」そのものの虚実が見えて来たのもあって、私は私でいいや、となった。「普通」「みんな」「世間体」、そういうものから、距離を置いた。
さてこの年齢は人生の最終章なのだろう。女だけれど女ではない。可愛く、美しく、魅力的に、を意識する事から、清潔で自然でありのままが楽、になる。目尻に刻まれた優しい皺や、誠実で率直な振る舞いなどがパッとしない見た目を少し相殺してくれるんじゃないか、などと考える。女は元々図太い生き物なのだ。現実的で合理的で、したたかなのだ。
そう言えばこの年代は男の人も「おばさん化」して来る気がする。ギラギラが鳴りを潜め、ちょっとしょんぼりしている。何かを諦めた私達は、諦念と引き換えに「落ち着き」「何もないけどまずまず幸せ」を得て、ヨッコラショと生きて行くのだ。男でも女でもない老年期、より一層自分自身となって、それが故の苦しみも楽しみも味わい暮らしていく。