ニンジャ短歌できるまで
ニンジャ短歌がひとつかたちになるまで、いったいどんな道筋をたどっているのか?
カーラジオ・無職・曇天 おれたちは理論上どこまででもいける
(ニンジャ・サルベイション)
これはツイッターにのせたやつでいちばんくらい評判がいいし自分でも気に入っているニンジャ短歌です。メモ帳を見直していたらけっこう試行錯誤のあとが残っていたので、どうやって完成形に至るのかちょっと順を追って見てみようという試みです。
まずいちばん最初におもいついたかたちはこれ。
未来ある無職の若者ぼくたちは理論上どこまででもいける
なぜか一人称が「ぼく」だけど、下半分くらいはほぼ完成とおなじ。原作に登場する「理論上~」というフレーズがとてもすきでどうしても使いたかった。で、上半分は「未来ある~」でこれも原作のフレーズの引用ですね。これも使ってみたかったけど、両方いっぺんはちょっと引用しすぎだろうということで、
(改1)曇天とカーステレオとぼくたちは理論上どこまででもいける
「未来ある~」は惜しいけど捨てました。ネオサイタマだからまあ曇ってるだろうというのと、ユダカカシイミカリチャン三人で車で逃走中、「「「ウォーラララ!」」」の合唱してるシーンが印象づよく、「曇天」「カーステレオ」という単語が登場。要素としてはわりと完成形に近づいています。
(改2)カーステと調子はずれの合唱と(理論上どこまででもいける)
つぎは合唱シーンの要素を強めにしてつくってみました。短歌のなかに()とか「」とか使われることはときどきあって、うまく使えば効果的ですがこの場合なんかちょっと「逃げ」っぽいよね……と(自分でやっておきながら)いうかんじで、ここでけっこう悩みました。たぶんひと晩くらいこのまま寝かせています。
(改3)曇り空・カーステ・無職 ぼくたちは理論上どこまででもいける
ここで上半分を単語の羅列にすることを思いついたようです。「未来ある~」の引用はやめたけど「無職」の要素はふたたびもってくることに。下半分の「理論上~」のあたりはもう固定するつもりのようです。原作のぐっとくるフレーズが活きる上半分にしたい……。
(改4)カーステレオ・無職・曇天 ぼくたちは理論上どこまででもいける
もうかなり完成に近い!自分でもこの時点で「けっこういいんじゃない?!」という気分になれます。けっこういい気がするけど、「カーステレオ」は7音でじつは字余り……そんなにリズムはわるくはないけど……ウーンウーン
行き詰まったので原作を読み直したりします。よくみたらウォーラララのシーンでカーステレオという単語は使われていなかった(レディオだか車載ラジオだか書かれていた)。やっぱり困ったときは原作に当たったり単語の意味とか調べなおしたり……フーム……アッ?!
(完成)カーラジオ・無職・曇天 おれたちは理論上どこまででもいける
「カーステレオ」を「カーラジオ」に変えて無事字余り問題が解決!一人称も「ぼくたち」から「おれたち」に変えてサルベイションのアトモスフィアに近づけるかんじに。「理論上~」のフレーズもいいかんじに使えて、悩んだかいがあって自分の満足度はかなり高い!ヤッタ!
このサルベイションのニンジャ短歌は、「理論上どこまででもいける」という原作の最高のフレーズにそうとう助けられていて、このフレーズがうまく使えればいいかんじのニンジャ短歌に辿りつきやすかったのだとおもいます。ぽっと思いついたかたちがすごくよくきまるときもあるけど、基本的にはこんなふうにウンウン唸って迷って絞り出して最終形になっていくかんじです。頭のなかでこねていてメモ帳とかに残ってないときもあるけど、ちゃんと文字で試行錯誤の痕跡を残したほうがたぶんいいのだとおもいます。文字で残しておくとこうやって完成までを辿れるし、捨てたつもりのフレーズもメモにしておくとつくってる途中でよみがえらせたりできる。
このニンジャ短歌できるまでがひとの参考になるかはわからないけど、ほかのひとのニンジャ短歌がどうやってできるのかとても気になるので、よかったらこれをみたニンジャ短歌するひとやってみてほしいです。
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