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スコットランドでティータイム(雑誌ミスター・パートナー片手に)|ティーハウス巡礼



序章

雑誌「ミスター・パートナー」と私


「2023イギリス/スコットランドの覚書」の記事の中で何度か触れているとおり―

この旅の最大の目的は、「旅するウェデングフォトグラファー」として、
スコットランドで結婚式を撮影することだった。

コロナ前の2019年まで毎年、ウェディング撮影のために渡英していた私だが、スコットランドまで足を伸ばす機会がなく、今回、実に20年以上ぶり。

せっかくなので、ウェディング撮影の前後に、つかの間の観光を楽しむことにした。

ググれば何でも分かる時代とはいえ、良いガイドブックがあればと探してみたところ、イギリス専門雑誌「ミスター・パートナー」が絶好のタイミングで「スコットランドのティールーム」という特集号を発売中なのを発見。

もちろん、即買い。

何を隠そう、この私、「ミスター・パートナー」には古いご縁がある。

2008年11月号から1年間、同誌で「英国ウェディング物語」というフォトエッセイを連載していたのだ。

イギリスに留学した1999年から数年に渡って撮影した英国ウェデングにまつわる写真と文章。
1年に渡り巻頭2ページ目に掲載していただいた。
毎回、写真のセレクトと文章の推敲に七転八倒しながらも、
担当編集者さんに支えられて続けることができた。
大切な思い出。

また、2010年10月号では「ゾエさん&クリスさんの手作り結婚式」という、全5ページ/オールカラーの単発フォトエッセイを掲載していただいた。

イギリス留学時代のホストファミリーの娘さんの結婚式を撮影。
花嫁の母が作った手づくりウェディングケーキのレシピも掲載した。

2年間のイギリス暮らしを終え、帰国して間もない当時の私は「英国ウェディング物語」というタイトルでポートフォリオを作り、京都から電話でコンタクトを取って、東京の編集社へ売り込みに押しかけたのだった。

そんな鼻息荒い、無名のウェディングフォトグラファーにも目を留め、チャンスを与えてくださったことが、その後の私にとってどれほど励みになったことかー
今でも、とても感謝している。

とはいうものの
日々の仕事に忙殺され、しばらく「ミスター・パートナー」から遠ざかっていた私。
久しぶりに手にしてみたところ、以前にも増して一段と面白くなっていることに、正直、驚いた。

特集のスコットランドのティールームについてだけでなく、紅茶の歴史や文化、イギリスの事細かな情報に、日英比較文化論、世界情勢に関する記事まで、読みやすく掘り下げられた文章、豊富な資料、そして魅力あふれる写真が、それこそアフタヌーンティーの卓上のように、盛りだくさん掲載されている。

迷わず私は、この雑誌を今回のスコットランド旅のガイドブックに決めた。

さらに最新号の書店巡り特集号と、
バックナンバーの紅茶特集号も続々購入。
紅茶特集は、ありがちなグルメや貴族趣味一辺倒ではなく、シビアな歴史的・社会的観点からの掘り下げが興味深い。
今年2月に資格を取ったティー・アドバイザーの身としても知っておきたい知識が満載。

紙面版は家に残し、気軽に持ち歩けるよう追加購入したKindle版をお供に、
グラスゴーとエジンバラ(あまり時間がないので)それぞれ1つづつ、ティールームを巡ることにした。

The Willow Tearooms |Glasgow

グラスゴーの「ウィロー・ティールーム」

ロンドンから夜行列車「カレドニアン・スリーパー」号に乗って、
早朝6時、グラスゴー・セントラル駅に到着。

結婚式の会場へは、グラスゴーから更に電車を乗り継いでダンディーまで行くのだが、その前に、ちょっと寄り道。

早朝のグラスゴー。
8月下旬、猛暑の只中にあった日本と違い
スコットランドは長袖でも若干肌寒かった。

めざすは、「ウィロー・ティールーム」。

グラスゴー出身の世界的な建築家
レニー・マッキントッシュのデザインが堪能できる店だ。

”ウィロー”には
本店の、格式高い「マッキントッシュ・ザ・ウィロー」

支店の、カジュアルめな「ウィロー・ティールーム」

と、2店舗ある。

本店のほうは、20年以上前のスコットランド旅の時に行ったことがあるので、今回、私が訪れたのは支店のほう。

ステンドグラスや電灯など、随所にマッキントッシュ・デザインが散りばめられた店内。
ショーケースの上には焼きあがったばかりのスコーンが。
マッキントッシュといえば、この背高椅子。
もたれてお茶をすするだけで
そこはかとなく優雅な気分に浸れる。
ティールーム上階にある青い間。
ランチタイムやティータイムには満席になるだろう。

支店を選んだ理由が、もう1つ。

本店や大抵のティールームと違って「ウィロー・ティールーム」は、なんと開店時間の午前9時からアフタヌーンティーをオーダーできる。

朝なのに「アフタヌーン」とは邪道の極み(笑)だが、
私のような急ぎ足の観光客に、けっこう需要があるのかもしれない。
あるいは
「1日3回、英国式朝食(English Breakfast)を食べたい※」派に加え、「三度の飯よりアフタヌーンティー」という新派の流れでもあるのだろうか?
※「英国式朝食は美味しい」という賛辞と「英国では朝食以外は食べるに値せず」という皮肉を掛けた古くからの常套句。今なお真顔でこれを言う人も少なくない。

ともかく、
清々しい朝の空気の中、
私の目の前にスリーティアーズ(三段式ケーキスタンド)が現れた。

素敵なブルー&ホワイトのティーセットは、”ウィロー”のオリジナル。
ペーパーナプキンにも、さりげなくマッキントッシュ・デザインがあしらわれている。
下段皿のフィンガー・サンドウィッチ。
スコティッシュ・サーモン
キュウリ
ハム
たまご(食べかけ)
中でも、サーモンは流石の絶品!
スイーツとサンドイッチの組み合わせは
「あんみつに塩昆布」的な最強の味覚。
中段皿の焼きたてスコーン
たっぷりのクロテッドクリーム
自家製ラズベリージャム
良い意味で定番の味。
上段皿のケーキ。
「映え」を気にせず好物のレモンメレンゲパイを選んだ結果、なんとも地味なエヅラに…
でも最っ高!に美味しかったので、悔いなし。
スコットランド名物ショートブレッドが添えてあるのが嬉しい。
フワッサクッの食感と
鼻腔を満たす新鮮なバターの香りが
有名な既製品より遥かに美味だった。
開店早々から賑わう店内。
なお、このとき朝っぱらからアフタヌーンティーを食べていたのは私だけ。
多くの人が「スコットランド式朝食(ハギスという臓物料理付き)」をオーダーしていた。
店を出たところで街角のバグパイプ奏者に遭遇。
心なしかトレイン・スポッティングぽい若者パイパー。
グラスゴーだけに。
「ミスター・パートナー」に載っていた
もう1つのグラスゴーのティールーム
「The Butterfly and The Pig」の店先。
時間があればここも入ってみたかった…

Clarinda's Tearoom | Edinburgh

エジンバラの「クラリンダス・ティールーム」


無事に結婚式の撮影を終え、
ダンディーからエジンバラへ移動。
今度は夜行バスでロンドンへ戻るため、夜まで街歩き。

荘厳!
お洒落!
都会!
スコティッシュハットが可愛い
イギリス全体に言えることだが
軒先に飾られたハンギングバスケットが
とにかく美しい。
これが見られるだけでもイギリスを旅する価値あり!
街の至るところで犬連れの人が目を引いた
エジンバラは「忠犬BOBBY」の街でもある。
街なかにあるボビーの銅像が有名だが、
こちらは実話の舞台であり
実際のお墓がある教会の銅像。
エジンバラの街角バグパイプ奏者。
古都の風格を感じさせる老練パイパー。
キルトの正装は見惚れるカッコよさ。



そしてティータイムには、
「クラリンダス・ティールーム」を訪れた。

いかにも
まちがいないティールーム
という雰囲気が店先にまであふれ出ている。

店内に飾られていた刺繍作品。
ティーポットって
なんでこんなに可愛いんだろう!
テーブルいっぱいに並んだ焼き菓子は
イギリスのティールーム名物
「目移り地獄」
でも今回の旅では「アフタヌーンティーまたはクリームティー」のミッションを貫き、
ここでもクリームティーをオーダー。
メニューまでもが美しい。
プレーンは売り切れだったので
ドライカラントの入ったフルーツスコーンと
オリジナルブレンドのポット・ティーを。
スコーンはナイフを入れるとたちまち崩れるほど、ホロッホロ♪
上質なミルクの風味がする優しい味。
ちょっとした手毬サイズの大きさを、ペロリ。
クロテッドクリームとジャムに加え、
バターもセットされていたので
塗ってみたら想像以上に美味しかった。
(余談だが、私はクロテッドクリームの代わりにマスカルポーネチーズを塗るのも好き)
観光客や地元っぽい人で常に満席(私も20分ほど並んだ)。
店内いっぱいにティータイムの花が咲く。

結論

スコットランドはとってもおいしい!

渡英中に一度は食べたいフィッシュ&チップスも
スコットランドが美味しいだろうという読みで
夜行バスに乗る直前に
心地の良いPUBで。
こちらも大正解。


急ぎ足の旅ではあったけれど
こうして身も心も存分に満たされ
私はスコットランドを後にした。


スコットランドの結婚式を撮影した話」は
いつか、改めて、、、


「旅するウェデングフォトグラファー」としての私の活動については、富士フイルム公式メディア「IRODORI」に掲載された、こちらの記事を読んでいただけると嬉しいです。








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