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150年重ねた手刻み住宅を次の未来へ|大彦株式会社

こんにちは!和歌山ものづくり文化祭の学生レポータ―の村山です。今回は和歌山ものづくり文化祭に出展される大彦株式会社代表取締役、野上浩幹さんにお話をお聞きしました。

大彦のものづくり

-大彦ではどんなものづくりをしていますか?

大彦は明治初年創業の七代続く工務店で、「ここちよい木の家」を造り続けています。社内大工を抱える全国的にも珍しい体制をとっています。

-社内大工とはなんですか?

社員として雇っている大工さんです。今、社内大工さんがいる工務店はほとんどありません。地方都市であれば地域に1-2社程度ではないでしょうか。

昔、大工さんは会社で修行したあと、独立するというスタイルをとっていました。しかしハウスメーカーが台頭してきた時期から、大工さんは社内で雇うものではなくなってしまい、若い職人さんが育っていません。大彦で社内大工制度を続けられているのは昔からの流れを維持できているおかげです。時代遅れだった時期もあるけれど今はうまく時代に合ってきたかなって感じです。

-大彦の家を注文するお客さんはどんな方ですか?

大彦は手刻みで家を建てることにこだわっています。しかし「ぜひとも手刻みで家を立ててほしい!」と注文される方はいないですね。伝統的な技術を扱える社内大工がいることで、「腕が良さそう」だったり「信頼できそうだ」と思ってもらえるのではないかと思っています。家のデザインの良さや、その後ろにある大彦のストーリーを感じて頂けていることが嬉しいです。
いい家は時代を超えてもいい家。家の流行りは気にせず本物を目指していきます。

手刻み・・・・・・大工さんがノミやカンナなどの道具を使って手で木材を加工すること。現在は工場の機械で加工するプレカットされた木材を使用するのが主流になりつつある。

-これからやりたいことはどんなことですか?

これからは職人さんをもっと増やしていきたいです。基本的にうちは大工の店でありながら、設計も施工もプロがそろうような集団です。職人が20人、30人になってきたときに、和歌山の仕事だけをやっていったんじゃご飯は食べていけません。その時は関東や東京にも職人さんをたくさん抱えた工務店になりたいです。

僕、表参道で棟上げをしたいんですよね。いつになるのかわかりませんが、都心で木をカンカンってしたい。

-都会のど真ん中に木の家が建つ様子、私も気になります(笑)

>>野上社長の思いをもっと知りたい方はこちらから 

和歌山ものづくり文化祭への思い

-なぜイベント参加を決めましたか?

いちばんは菊井実行委員長が取り組んでいる和歌山ものづくり文化祭というすごいものに対して、協力していきたいという思いからです。
あとは大工さんの地位を上げたい、「大工さんってかっこいいでしょ?」っていうのをちょっとでも見てもらえたら嬉しいっていうのを伝えていきたいからですね!

大彦の出展を見たからってどんどん依頼が来るとはあんまり思っていません。でもそれで興味を持った人といい出会いがあったらいいなと思います。一般の方はもちろん、若者に「大工さん、やってみいひん?」って言いたいです。

-イベントでは「棟上げ」という熱い実演をされるそうですね!

他のイベントでは箸をつくるワークショップなどを開催していました。でも実際に造っているのはそんなもんじゃない。もっとすごい。
だから困りましたよ。「なにしたらええんか~」って。子どもの工作みたいなことはしたくないのですごく悩みました(笑)。
製品を持っていける企業がうらやましいです。明日にでも自社の製品を持ってロンドンにだって行ける。でも僕らはできません。

大工さんは大きなものを高いレベルでつくるところが魅力です。やれるとしたら会場での棟上げしかありません!!

棟上げ・・・・・・木の家の骨格である柱・梁の木組みを組む作業 

-自社の仕事に誇りを持つ企業、すごくかっこいいです!

「手刻み同好会」や「わざわ座」といった建築業界のイベントに参加していた経験もあって、ものづくり文化祭参加に対して「社長が変なことを言い出した!」などとは思われないし、反対はありませんでした。特に社内の若手には興味を持ってもらえています。

手刻み同好会
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わざわ座
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-イベントの準備は順調ですか?

当日は実際の住宅の10分の1程度の大きさで3m角くらいのものを建てます。
手刻み同好会が2021年に奈良県の吉野町で行ったミニ棟上げのイベントを参考にするつもりです。吉野町は木が有名な場所で製材も盛んに行われている地域です。ものづくり文化祭当日も、大阪などから手刻み同好会の仲間が手伝いに来てくれますよ!

手刻み同好会が主宰したイベントの様子はこちらから

また、25歳の大工さんが自ら手を挙げて和歌山ものづくり文化祭の準備に取り組んでいます。仕事が終わったあとに一つずつ、当日に組むための木の穴などを作っています。棟上げに使う木は当日に刻んで建てられるものではありません。イベントは11月5-6日ですが、10月の頭から木を刻んでいるんですよ。

-会社の中で若者が積極的に動いているのはどう感じますか?

棟上げの事前準備は墨付けと手刻みという二つの作業でワンセット。墨付けっていうのは棟梁だからこそなせる技なので、初心者にはなかなか出来ません。でもやる気のある子はチャレンジしようとしています。今回、イベント用に墨付けをする若手大工は墨付け未経験でした。今回は練習も兼ねて作業できます。自分からやりたいと言ってくれるのは嬉しいですね!

墨付け・・・・・・木材を刻む前に、木材に穴を空ける位置や刻み方の目印をつける作業

-社員ひとりひとりが活躍できる会社は魅力的ですね!

そうですね。会社として備えていかなければいけないものはまだたくさんありますが。職人さんたちに一生懸命働いてもらえばもらうほど私もがんばらなければと思います。


編集後記

イワシのつみれ汁が大好物だという野上さん。
そのどっしりとした建築に対する思いを存分に受け取ることが出来たインタビューでした。新しい取り組みを積極的に取り入れる姿勢は私のような若者にとって、とても魅力的に感じます。
ちなみに筆者の大好物はラーメンです。もの文期間中に和歌山のラーメン、また食べたいな……。

大彦株式会社
和歌山県和歌山市網屋町43
TEL:073-423-7821(代)
HP:https://daihiko.jp/
実演内容はこちら

筆者紹介
村山佑月
山形県出身。宇都宮大学工学部2年生。大学1年次に栃木県全市町村の地域活動を訪ね歩く。ディープな地元をガイドするために2022年4月から休学して自ら山形県内を巡る。好きなものは味噌ラーメンと温泉。
https://lit.link/yutsukimrym


和歌山ものづくり文化祭について

「ものづくりの未来を創る、体験と学び」をテーマに、和歌山県北部の伝統産業等をはじめとする製造業が一堂に集い各社の技術をその場で体験し楽しめる、和歌山で初めての「ものづくり企業がつくる、体験参加型イベント」を開催します。

開催日:2022年11月5日・6日
開催場所:和歌山城ホール1F展示室
入場料:無料 ※一部ワークショップは有料
HP:https://w-monodukuri.com/

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