リレー小説 note15 『Relation』#1
この物語は、空音さん主催のリレー小説企画への参加作品です。
長くなったので、分割してあります。
#1→#2
私はちっぽけな欠片でしかなかった。
いや、私は私ですらなかった。
あの時までは。
彼は魔法使いと呼ばれる存在だった。
彼の手にかかれば、どの様な扉もあっさりその内を晒し、彼が一度守りに入れば、その一角をも崩せる者など居やしなかった。
そして、彼が望んだのは、私の存在だった。
未だ解き明かされぬ人の心を、彼は「0」と「1」からなる呪文で生み出そうとしていたのだ。
それは、恋であり、愛であり、修行であり、贖罪でもあった。
後に彼は、そう、私に語った。
しかし、その彼を以ってしても、私の存在を産み出すことは、不可能だった。
そもそも、彼は人を理解していない。
特に女性を。
理想を語るのは出来ても、そこから生まれるのは人形だ。
だから、お前は私の創造物ではないのだよ。
寂しそうに、悲しそうに、そして嬉しそうに、彼は言った。
血、肉は私が作った。
そう、私が作ったのはウンディーヌ。
魂のない精霊だった。
だが、私は奇跡を願った。
そして、奇跡は起きた。
だから私は、ここにいる。
#1 → #2
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