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皇居の白鳥も桜田濠と和田倉濠の二羽に。好きだった居酒屋を思う

麻布十番駅に、王道の居酒屋があった。
あった、という表現だが、けっして潰れた訳ではない。
店主であるマスター、またの名を大将が勇退され、お店を閉められたのだ。見た目は若いので気付かなかったが、私の父と変わらない年齢ということを聞いていたので、一線を退かれるのは当然なのかもしれない。

あれから二年、いまも大将の味を探し求めている。
もちろん、お金を積んで、『田中田』に行けば、満足する味は見つかる。が、そんな贅沢ばかりが出来る訳ではない。
食べて飲んで7,000円前後に収まっていた王道の居酒屋に出会いたいのだ。

たとえば、帝国ホテルなどシティホテルのメインレストラン、『ガストロノミー ジョエル・ロブション』であれば、シェフが勇退されても、後任がその味を引き継いでいく。
しかし、大衆酒場はそうはいかない。
特に店主自らが料理を一人で作り、パートの方がそれ以外を担当されるスタイル(だからこそ一人7,000円前後で至高の和食が食べられるのだが)だと、味を引き継がれる事は稀である。
グランドメニューのゴマサバ、牛ハツ、高菜炒飯はもちろん、その日によって提供される事もあるちゃんぽん等々、もはや味わえないお皿となってしまった。
おそらく日本各地で、私のような思いを抱いている方がいるのではないだろうか。

そんな事に思いを巡らせるのは、ウォーキングを混ぜたランニングをしている時が多い。とある日、夜中に皇居に行くと、大きな白い物体がお濠で佇んでいた。
田舎育ちの私も初めて見る光景を東京のど真ん中で目にしたインパクト。帰宅後、ネットで調べると、『東京新聞』が記事にしてくれていた。

『皇居のお濠からシンボル・白鳥が消える? 実は外来種の翼を手術し放鳥…高齢化と動物愛護から見直しも』
https://www.tokyo-np.co.jp/article/185365

要約すると、高齢化と動物愛護の観点から、現存の皇居の白鳥以降は新たに飼育されない。
2022年の記事では五羽だったが、2024年11月現在は桜田濠と和田倉濠にそれぞれ一羽の二羽になってしまった。
つまり、この皇居のお濠に白鳥のいる光景は、あと数年しか見られない可能性が高い。

桜田濠の白鳥は、内堀通りの堀端側にいることもあり、死角的に見えないことも多いので、和田倉濠の方が見やすい。
また桜田濠の白鳥はこちらの正門石橋から半蔵門まで広いお濠を移動。和田倉濠は元宮城和田倉門守衛所から見れる事が多い。

有限な時間に存在するアナログの美しさ、そして儚さ。今しか堪能できない事である。

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