コールミーオーバー
あまりにもひどい嵐
誰も助けてはくれない
割れた皮膚
連なる地割れ
皇帝の嘆きと身体の裂ける音
恐ろしいことはもう起きない
安全な暗闇で
眠るだけ
眠るだけ
遠いサイレンの音
ちいさな声で応える
まだここにいます
もっとそばにいて欲しかった
ずっと寄り添って欲しかった
父ではない雄の香の中で眠る
興奮と恍惚と虚しさにまみれて
新しい光に照らされて
古いものたちは蒸発する
LEDの祝福を受けて
繁茂する半導体
エレクトリカルに動く不動明王像
想定の範囲内で変化する自画像
母の足を踏んだインドの象
何もない公園で遊ぶ
シーソーもブランコもジャングルジムも
錆びて危険だから
取り払われた
残った砂場でオシッコする
血の色の尿が光って跳ねた
AIに任せきりの精神衛生
内的で外的な人口肛門
人工衛星の愛撫
クラウドの憂い
無骨なライフログ
スライド式の本棚の
後ろ側にずっと隠れてた
今開けて
取り出して
みんなのこと
全部記録して
全部公開して
全部燃やして
全部飲み干して
全部忘れて
全部溶かして
全部愛して
全部失くして
またアラームが鳴って
戦争の朝がくる
小さく応える
まだここにいるよ
見る必要がないから目をくり抜いた
嗅ぐ必要がないから鼻を捥いだ
聞く必要がないから耳をちぎった
食べる必要がらないから口を縫った
考える必要がないから頭をはずした
頭をはずした
頭をはずした
頭をはずした
頭をはずした
頭をはずした
頭をはずした
脊髄が飛び出して
頸動脈が暴れてる
今は手で考えてる
明日の眠り方を
イトマキエイ千広