DeFiにプライバシーをもたらす「Railgun」
DeFiにプライバシーをもたらすスマートコントラクトシステム「Railgun」について紹介する記事です。なお本記事は、紹介した企業・クリプトへの投資勧誘、投資助言を目的としたものではありません。
DeFiにおけるプライバシーの必要性について
ブロックチェーンの大きな特徴として、取引データが記録され改ざんすることが難しく、データが公開されていることが挙げられます。このことにより私たちは取引を即座に確認することが出来たり、取引が正しく実行されたかを確認することができるメリットを享受していますが、その一方でウォレットの残高を誰かに覗かれるかもしれないというデメリットも存在します。
このことをあまりデメリットと感じない方も多いと思いますが、今後仮想通貨での決済が普及したときのことを考えてみてみましょう。例えばスターバックスでコーヒーをETHで決済したとします。この時お店のウォレットにETHが着金するのはもちろんですが、それと同時に支払元のウォレットアドレスと残高も見ることができます。
それでは、ウォレットを銀行口座に置き換えてみるとどうでしょうか。スターバックスでコーヒーをデビットカードで決済したとします。この時にお店側に自分のデビットカードに紐づいた銀行口座の残高が見られる状態だと、抵抗を感じる人も多いと思います。
最近では、クリプト長者を狙った誘拐事件も増えてきています。ウォレットアドレスと残高が知られるというのは、大きなリスクになりえるのです。また、現在はDeFiサービスを利用して資産運用する人も増えてきました。上手な人の戦略を真似したいと思うのは必然ですが、真似される側は内緒にしておきたいことも多々あると思います。どんな仮想通貨を購入していて、どんなNFTを購入したかを他人に知られるのはあまり気持ちがいいことではないですからね。
それでは、本題に入りまして上記の問題を解決するために、DeFiにプライバシーをもたらすことを目指している「Railgun」について紹介します。
Railgunとは
Website : https://www.railgun.ch/
Twitter : https://twitter.com/railgun_project
Telegram : https://t.me/railgun_privacy
Github : https://github.com/Railgun-Privacy/contract
RailgunはEthereumなどのブロックチェーンにzk-SNARKs技術を利用して、プライバシーをもたらすスマートコントラクトシステムです。現在こちらのシステムはEthereumに対応しており、まもなくBinance Smart Chain(BSC)、Polygon(Matic)版が正式ローンチされる予定です。今後はSolana、Polkadot、Stellar等への対応が予定されています。
また、ガバナンストークンとしてRAILトークンを発行しており、上記の3つのチェーンで発行されており、今後も対応チェーンも増える予定です。RAILトークンの総発行枚数は1億トークンで、初期サポーター及びエアドロップ25%、開発チーム25%、残り50%はDAOのリザーブとなっており未発行状態でロックされています。今後、プロトコルの手数料や方向性についてはDAOを通したガバナンスによって決定されていきます。ガバナンスへの参加方法は、RAILトークンをステーキングすることで可能になります。Railgunの初期サポーターであるRight to Privacy財団は、配布されたRAILトークンを売却することなく、ガバナンスへの参加を望んでいるとのことです。
今回、RAILトークンをステークしているアドレスに対して、RAIL(BSC)、RAIL(Poly)がエアドロップが実施されましたが、Solana、Polkadotでも同じくスナップショットを利用したエアドロップが予定されています。
ゼロ知識証明(ZKP)とは
ゼロ知識証明(zero-knowledge proof<ZKP>)とは、「命題が真であることを、それ以外の情報を与えることなく証明すること」を指す暗号学の理論です。この理論をブロックチェーンに応用すると、取引が正当(真)なことを証明することで、送金元・受取元アドレスや送金額などといった他の情報を一切提供しなくて済むということになります。これをブロックチェーンに適応した技術が「zk-SNARKs」であり、ブロックチェーンの取引にプライバシーを適応することができます。zk-SNARKsは取引にプライバシーをもたらすだけでなく、ブロックチェーン自体のノードの軽量化を実現しておりMina ProtocolやZcashでも利用されています。余談ですが、ゼロ知識証明の提唱者の1人であるシルビオ・ミカリ氏はAlgorandというブロックチェーンを創設しています。
Webアプリについて
Webアプリを起動しメタマスクなどの一般的なウォレットを接続すると、上のような画面になります。Railgunを利用するには、まずRailgun上に資産を移動させなくてはいけません。このことを「SHIELD」と呼び、Railgun上に移動させた資産は追跡することができずプライバシーが保護されます。反対にRailgun上から一般的なウォレットに資産を移動することは「UNSHIELD」と呼びます。「SHIELD」「UNSHIELD」の処理金額の0.25%が手数料としてプロトコルに徴収されます。注意点としては、「SHIELD」「UNSHIELD」は外部ウォレットからのトランザクションになるので、プライバシー保護はされません。
また、ERC20規格のトークンであれば対応しており、初期表示ではこのようなトークンがリストされています。
リレイヤーネットワーク
2021年11月にはRailgun上での完全なプライバシーを実現するために「リレイヤーネットワーク」の実装が予定されています。このリレイヤーネットワークの実装によって、プロトコル利用料もプライバシー保護することができ、ユーザーがどのDeFiサービスを利用したかも隠すことができるようになります。
現状はプロトコルを利用する際の利用料を自身で負担する必要があります。リレイヤーネットワークでは、まずユーザーが希望する利用料をリレイヤーが算出し、ユーザーはリレイヤーにその利用料を支払うことによって、トランザクションを実行することができます。
今後のロードマップ
2021年11月
・リレイヤーネットワークとRailgun1.0の完成
・RailgunでNFTをサポート(β版)
・Solanaチェーンのサポートに向けて
RAILをステーキングしているアドレスのスナップショットを取得
2021年12月
・Railgunスマートフォンアプリのβリリース
・ビデオコンテストの実施
・Polkadotチェーンのサポートに向けて
RAILをステーキングしているアドレスのスナップショットを取得
2022年1月
・Railgunスマートフォンアプリのパブリックリリース
・Railgun上の独自DEX「RAILYSWAP」のβリリース
2022年2月
・Solanaチェーンでローンチ
・Polkadotチェーンでローンチ
・RAILYSWAPのパブリックリリース
まとめ
まもなくBSC・Polyチェーンでローンチされ、11月にはRailgunのフルリリースが予定されています。その後はスマートフォンアプリや独自DEXのリリース、対応チェーンの増加など大きなトピックが目白押しです。
DeFiサービスが広く展開していく中で、今後プライバシー保護の重要性もますます高まることが予想されます。個人的にも自分のウォレットアドレスや残高を知られることは極力避けたいので、Railgun対応チェーンが増えるとともにユーザビリティが向上してくれるとありがたいです。
執筆者:ビニール