「声を上げる勇気」第一回:舞(明治支部創設者/代表)

聞き手・編集:ひな

行動を起こす
── 社会に対して声を上げたいと思ったきっかけは、何だったんですか?

舞:
小さいきっかけ・動機が積み重なって、明治支部を立ち上げようと思うようになりました。小さい動機が何だったのかというと、例えば私の親戚に、すごく固定概念を強く持っている人がいるんです。「大学に行って働くのはいいけど、女性は結婚をして子供を産むのが幸せなことだよ」ってずっと言われてきたし、服装も、特に露出することが多い夏には、「それ着てたらレイプされてもおかしくないよ。自己責任だよ。」って言われたりして。私はそれに対してずっと疑問を抱いていました。そこから大学に入って、ジェンダーの授業を受けたり、留学先でもWomen Gender(女性ジェンダー)のクラスを取ったりして、それでやっぱりおかしいんだっていうことに気がついたんです。「これは変えないと」って思って、声を上げることにしました。

── 社会に声を上げようか迷ったこと、声を上げることに関して気になったことは何かありましたか?

舞:
2つあって、1つは社会面においてですね。就活をしていたら、アクティビストであることは会社側から警戒されてしまうというマイナス面があります。私も就活をしていた時は、こういう活動をしていることは抑えてやってました。でも、それがすごく私の中では苦痛で、「やっぱり自分がやりたいことはこれじゃない」って気づいたんです。それで大学院進学を決めたんですけど、なんかそういう社会的な圧力っていうのかな、そういうのはあると思います。あと身内でいうと、友達の中には理解してくれる人もいると思うけど、過激派って思われて、遠目で見る人もいると思うんですよね。私の仲良い子達は受け入れてくれているけど、例えば「知人とかにはどう思われてるんだろう」って気になったこともありました。でも、そんなの気にしてると時間がもったいないって思うようになってからは、気にしなくなりましたね。

── 就活の時は一切触れなかったんですか?

舞:
自分が行きたかった第一志望の総合商社での面接で、女性活躍に関する質問をされた時がありました。そこで、もう話が止まらなくなっちゃったんですよ。それで「あ、やばい」って思いました。話しすぎたし、なんかすごく上から目線になったし。でも、これだけ自分が話せるっていうことは、きっとこれが自分のやりたいことなんだなってその時に気づいたんです。

── 行動を起こす方法として、どんなものがあると思いますか?どうして学生団体という場所を選んだのでしょうか?

舞:
個人でできることも、もちろんあると思います。あると思うけど、やっぱり私が個人で始めるのと、Voice Up Japanという団体の中で始めるのとでは、初期段階で持てる影響力が全然違いますよね。Voice Up Japanって、新聞で取り上げられたり、記者会見をやったり、力があるし認知度があります。それが最優先項目だと思ったので、個人でやるのではなくて何人かメンバーを集めて、影響力持ってやろうって。そこで明治支部の設立を決めました。あとは、Voice Up Japanのインスタとかを見てて、「ああ、確かに。こういう問題あるよな。」って共感することが多かったっていうのもあります。一緒に活動したいし、自分ももっと学びたいって思いました。
行動を起こしてみて
── 学生団体という場で行動を起こしてみて、どう感じていますか?行動を起こすなかで、大変だと思ったこと、辛かったこと、逆に、得られたこと、嬉しかったことがあればぜひ教えてください。

舞:
辛かったことは、なんだろう。2つありますね。私は本当になんでもポジティブに考える人だから、そんなに追い込まれたりすることはないんですけど、最初の方にメンバーが抜けちゃったことがあるんです。最初、実はもっと人がいたんですよね。最初はメンバーの数をすごく増やしたかったから、周りの仲良い子達の中で興味のありそうな人たちに声をかけてました。でも、就活で忙しかった時期だということもあって、5、6人くらい一気に抜けたんです。その時に、マネジメントに失敗したなって思って、それは結構ショックでした。でもそこからまた新しいメンバーたちが入ってきてくれて、すごいスピードでスケジュールを立ててやってくれたから、立ち直れたんだと思います。逆にその時は、周りのメンバーのスピードに着いて行けなくて一杯一杯になったりもしました。リーダーだけど、「あ、ついていかなきゃ」って(笑)。それで「どうしよう、すごい忙しくなったな」って思ったんですけど、同時に、やってて楽しいって思った瞬間でもありましたね。イベントとかを通じて今では21人にまでメンバーも増えて、それは私の力じゃなくてメンバーが一生懸命やってくれたおかげなんですけど、そうしてみんながついてきてくれて、頑張ってくれることが今は本当に嬉しいです。あとは、友達に「Voice Up Japan Meijiの投稿見たよ!」って言ってもらえたり、最初に取り組んだLGBTQIA+の投稿シリーズはすごく評判が良かったので、「こうやって見てくれる人がいるんだな」って思ったし、そこからまた意見を聞くのが楽しいなと思いました。

── ポジティブじゃなかったら辛かっただろうなって思うことはありますか?

舞:
どうでしょう。最近いろんなプロジェクトに参加し始めたんですけど、特に本部のプロジェクトとかって、支部の他のメンバーはどういうのをやってるのかを知らないと思うんですよね。みんなはどういうことをやっているのかがわからないから、私はそこまで忙しくないって思われていると思います(笑)。私は忙しくても「忙しい」って言いたくないタイプだから、余裕を持っているように振る舞うんですけど、それでタスクがたくさん自分に降ってきた時に「あ、どうしよう」って思った時があって。その時は多分、ポジティブじゃなかったら辛かっただろうなって思いますね。そこで沈んでしまう人もいれば、それをパーって乗り越えられる人もいます。私は後者だったけど、そうやってタスクが重なって忙しい時期に、自分がどうやったら乗り越えられるのかが分かっていないと、きつく感じるかもしれないです。

── 本部や学生支部にかかわらず、Voice Up Japanには社会問題に詳しいメンバーがたくさんいると思うのですが、そこで大変だと思ったり、良かったと思うことはありましたか?

舞:
私が参加している、本部の包括的差別禁止法のプロジェクトだと、今は社会人メンバーと学生メンバーが混じってて、しかも議員さんと話す機会が結構あるんです。そこで初めて話した時に、私、本当に分からないことがたくさんあったんですよ。包括的差別禁止法って言っても、そもそもどんな禁止法がすでに存在してるのか、とか全く知らなくて。でも他のメンバーは法とか人権とかに詳しいので、そういうメンバーに色々教えてもらいました。地域市民教育学修士課程修士号を持っている人もいて、その人はプロジェクトの進め方とかすごく上手だから、マネジメントとかもすごい参考になるんですよね。Voice Up Japanに入って、本当に色んなことを学んでいると思います。

── 実際に行動を起こしてみて、社会に何かしらの影響を与えることができていると実感していますか?

舞:
団体の外の人、例えば議員の方々や他のイベントの登壇者の方とお話する時には、そう感じることが多いかもしれないです。例えば、他の有名団体のイベントに登壇した時に、イベントの視聴者がこれまでにないくらいの大人数だったんですよ。あとは、議員さんと話した時にそれがニュースに取り上げてもらえて、「自分の行動ってこうやって世界に発信されていくんだな」って思ったし、「この活動をやってて意味あったな」って思いました。そうやって新聞に公式に発表されたことで、今まで活動に反対していた親にも認めてもらえたっていうのも、影響の一つに入ると思います。

── ニュースに取り上げられることで、自分の存在が明らかになることには不安を感じなかったんですか?

舞:
周りを見ていると、表舞台に立つことは決してプラスのことだけではないというのが分かります。でも自分がまだそういう経験をしていないから、恐怖とかはまだ感じないですね。まだ。だけど、今後そういうことを感じることもあると思うので、その準備はしていかないといけないなと思います。
これから
── この先、社会に対して声を上げ続けていく中で、気をつけたい、意識していたいと思うことはありますか?

舞:
私がいつも気をつけている、胸に置いていることは、「人の意見を否定しないこと」。例えば、以前友達に「フェミニズム死ね」って言われたことがあるんです。「フェミニズムは男性嫌いだ」って。フェミニストの中には、それを聞いてその場で怒る人もいると思います。でも、私はそこで怒るのではなくて、まずはその人の意見を聞くようにしてるんです。なぜそう考えるのか、なぜそういう意見なのかっていうのを、理解するというよりは、聞く。理解するのは不可能だと思います。相手が全くもって矛盾するような意見を話してて、かつ感情論で話す人の場合は、擦り合わせよりも説得にまわるんですけどね。それで、まずは聞いてから、自分の意見と相手の意見をどう擦り合わせるのか、っていうのを考えます。今まで人との会話や意見交換ではそうしてきたから、それはこれからも気をつけていきたいですね。

── なるほど。

舞:
相手に理解させたい時って、一方的に話しても無駄だと思うんです。特に相手が反対意見の時には。逆に、聞くことがすごく大事だと思います。それで、感情的にではなくて論理的に返すんです。感情的に返してしまうと、意味がわからなくなってしまうので。自分を一貫して通すことができるのは強みになると思うし、感情的だと、不確実性が高まって不安定になってしまいます。そうすると、「この人、この前はああ言ってたのに、今はこう言ってるじゃん」って信用してもらえなくなるし、説得力がないって思われてしまうんですよね。なので、論理的に物事を考えて、かつ意見をマイルドにしていけると、すごく強みになると思っています。

── では、どんな形で社会に対して声を上げていきたいですか?

舞:
短期間の話で言ったら、私は大学を卒業してもVoice Up Japanには所属し続けると思います。海外の大学院に進学するから時差があるけど、活動を一緒にできる時はあると思うので、それは続けていきたいなって。あとは大学院も卒業して社会人になってからですが、高校生の時からずっと国連職員になりたいと思ってます。当時興味があったのは難民問題なんですけどね。パリ同時多発テロが2016年にあった時、私は高校生で世界史を選択していて、それで歴史を学んだ時に国連職員に興味を持ったんです。それからはずっと国連職員になりたいなって思ってたんですけど、やっぱり人生色々変わってくる中で、就活をしたりもして。でも、その就活で結局自分のやりたいことが何なのかが分かったんです。今は国連職員になってUN Womenで働きたいって思っています。そこだったらVoice Up Japanでやっているような活動を続けることができると思うし、そういうところで活躍していきたいですね。

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