【複雑な建築の施工や製作を請け負います】施工者・製作者としてのVUILDについてーCEO NOTE 01
CEO秋吉の最近気になるトピックをお伝えする「CEO note」シリーズをスタートします。
第一回目に秋吉が真っ先にあげたのは、あまり知られていないVUILDのプロダクションについて。創業当初から一貫している、「自分たちで製造体制をもつ意味」について、CEO・秋吉との会話から探ります。
Topic ①:なぜ自分たちで製造体制を持つのか?
学生時代に一人でShopBotの輸入から始め、設計から製作まで、すべての工程において自ら手を動かしてきたVUILD代表・秋吉。その姿勢は、川崎に1台のShopBotと共に本社を構えた2017年の創業後、メンバーが増えたなかでも変わりませんでした。
設計して、ShopBotでプロトタイピングして、エラーがあったらまた設計に戻る。設計工程の中でPCとShopBotを往復する手法は、今では50名を超えるメンバーが在籍していますが、誰が教えるでもなく、自然と定着しています。
2022年には、横浜・本牧に大型工場を構え、ShopBotのほかに5軸CNC加工機・Biesseを導入しました(2024年に海老名に移転)。当時、2023年に竣工した「学ぶ、学び舎」のプロジェクト立ち上げに伴い事業規模を拡大していくにあたり、自社設計・自社製作のポリシーを保ったまま、大規模案件にも対応できるようにしていくためです。
しかしこのように、自分たちで製造体制を持つことにどんな意味があるのでしょうか?
まずはじめに、第一回目のテーマにVUILDの製造体制を選んだ理由を教えてください。
秋吉 VUILDのSNSやメディアで見られるものの多くは、自社設計・施工の建築や、ワークショップイベントなどが大半で、実は加工や内装施工の依頼を外部の設計者から受けていることはあまり知られていません。コストと納期と表現。どの部分においても、妥協なく設計者のニーズに応えることができる製造体制がVUILD社内にあること、そして今その製造技術を外に開いていること、部品加工はもちろん施工もできる ということを知ってもらいたいと思っています。またこのような体制を整えるために、2023年には建設業法を正式に取得しました。
そもそもなぜ自分たちで製造体制を持つのでしょうか?
秋吉 VUILDは創業当初から社内にShopBotを導入し、設計から製作まで一気通貫で行っています。例えば、外部の工務店やゼネコンに入ってもらったりすると、見積もりを待たなくてはいけなかったり、想定より高かったりすることが多くあります。つまりは、時間とコストのコントロールをすることが難しい。それが原因で、やりたかった表現を諦めないといけないこともあるでしょう。そもそも、我々のような複雑で自由な形態を実現しようとすると、施工を受けてくれない場合もあります。
自社で製造体制を持つことで、見積もりから自分たちで作成し、設計・施工までのすべてを地続きで進められるため、設計の初期段階から予算・スケジュール共にコントロールできる。そもそも「施工できない」と他社に言われないことが最大の武器です。
表現したいものを、コストやスケジュール含め実現可能な範囲に収めていくためには、例え規模が大きくなったとしても設計と同時に金額や施工もこまめにデザインしながら、そのすべてに自分たちで対応できる製造体制が必要であると考えています。外部のゼネコンや工務店と協働する場合も、こちらで数字的根拠を持った上で、同じ目線で協議できるのが強みでもあります。
その製造技術を外に開いていこうとしているということですが、どういう意味でしょうか?
秋吉 やりたい表現があって工務店に依頼した際に、少し変わったデザインだったり面倒くさそうな内容だったりすると、どこの工務店にも受け入れてもらえないことは往々にあると思います。それはひとつ、儲からないことにあると思いますが、そもそもそれを実現する方法も、コストの収め方も知らなかったりするのも理由にあると思います。
VUILDはそんなプロジェクトをずっとやってきたので、内装や小規模な建築案件であれば、これまでの経験と実績への自負をもって、他社プロジェクトも受け入れられるような体制が整っているといえます。他で断られてしまっても、僕らと一緒に表現を諦めずに実現しませんか?というメッセージを、挑戦し続ける建築家・設計者・デザイナー・アーティストの方々に届けたいです。
VUILDが社外からの受託先になった時に、先におっしゃっていたスケジュールや予算のコントロールの課題を少なからず発注元の方も感じる可能性があると思うのですが、どのように乗り越えていけると思いますか?
秋吉 最終的にはNESTINGやEMARFのようなプラットフォームに繋ぎこむと自動で見積もりが算出されるような仕組みを作りたいと思っているものの、当面は、構造エンジニアや環境エンジニアと同じような感覚で、VUILDを加工・制作エンジニアのような位置付けて打ち合わせしていく方法になると思います。
基本はデータのやりとりになるので、細かくやりとりしながらやっていくことになると思いますが、VUILDが実際に社内でやっていることとほとんど変わらないので、特に問題はないと思います。工務店等にお願いする場合、一般的には図面などがまとまった状態で工務店に依頼する流れになると思いますが、アイデアがふわっとしている初期の段階からでも相談していただいて構いません。
VUILDにお願いしていただければ、できないことはないということですかね(笑)?
秋吉 基本的には全部やってみようという精神。逆に他で断られたものはVUILDに投げて欲しいです。むしろその方がメンバーもモチベーションが上がる気がしています。ただ、あまりにも予算がない場合はドライにお断りさせて頂きますが(笑)。
そもそもなぜそんなことができるのでしょうか。
秋吉 一番の理由としては、自分たちがそれを実践してきたからだと思っています。複雑なかたちをしたものや特殊なおさまりをしたものを、設計者としても施工者としても、自分たちで行ってきたので、ノウハウもあるし、能力もあるのです。その実績と経験に伴って、しっかりとした製造体制も保有しています。
一方で、表現したいことや自由なことをやろうと思うと、既存のやり方から外れてしまったり、既存のやり方から外れると、そもそも実現方法がなかったり、あったとしてもかなりのコストがかかってしまったりと、今後どんどん表現したいことができなくなってしまうのではないかと、危機感も感じてきました。
製造の手段を社内で完結せずに、外部へひらいていくことは、VUILDが掲げる会社ビジョン「生きるとつくるがめぐる社会へ」、そしてパーパスである「ひとびとの創造性を解放する」に繋がっていくと考えています。アイデアはあるけれど、実現する方法がなく、やりたかった表現を諦めないといけない時は、ますばVUILDにご相談ください。
【事例紹介】
●日建設計|東京オフィス コレクティブフロア PYNT 内装什器(一部)製作サポート
株式会社日建設計による自社ビルの改修プロジェクトの製作をサポートを行った。具体的には、フロア全体に立体的な流れと滞留を生み出す、多様な高さのくの字形の什器の製作を担当した。30mm角のルーバー材で複雑な曲面形状を構成するために、治具のような役割を持った柱や棚板をShopBotで加工している。
●SUGAWARADAISUKE建築事務所|Ecological Co-WorkScape製作サポート
SUGAWARADAISUKE建築事務所の複雑な三次曲面で構成されるオフィスパビリオンの製作サポートを行った。それぞれがユニークなパネルで構成されている三次曲面のパネルはshopbotで加工。現場施工時には墨だしからホロレンズを駆使して、モデルと現実空間を繫げ、複雑ながら施工精度の高い立体物を製作した。空間の中心に配置された「メガデスク」は、オフィスの共用部や窓から見える都市の風景など、周辺環境に対応するように起伏を変化させ、それに応じてテーブル席やベンチ席といった場所を生み出している。
●株式会社山下設計|くまもとアートポリス「立田山憩の森・お祭り広場公衆トイレ」加工・製作サポート
小径の丸太材(Φ100程度)を用いたレシプロカル構造の架構における加工・サポートを行った。丸太加工用の特殊な治具を開発し、熊本にあるShopBotで加工を行うことで、木材の調達から施工までを県内で完結することが可能となった。
●オンデザイン|屋外ベンチ レテ テニスクラブ 設計・製作サポート
2023年に大田区西馬込でリニューアルオープンした「レテ テニスクラブ」のテニスコート脇にて、株式会社オンデザインパートナーズと共同設計を行った。グラスホッパー(3Dプログラミングソフト)を用いたデザイン検討、日射計算に基づいたルーバーのデザインを提案した。材料は杉の無垢材を使用している。