パラレルワークとしてのものづくりが、グッと身近になった3つの理由
2019年にVUILDに新卒入社し、現在では各プロジェクトの設計・製作業務に携わる野田慎治さん。学生時代に「いつか一緒に仕事しよう!」と飲みながら話していた友人との約束を、入社半年で果たしてしまいました。
「パラレルワークとしてのものづくりのすすめ」シリーズでは、VUILDのメンバーが多方面で繰り広げている個人活動を紹介しています。シリーズの第2弾となるこの記事では、野田慎治さんの活動をご紹介します。
野田 慎治 Shinji Noda
ジュニアアーキテクト
1994年岐阜県生まれ。滋賀県立大学環境建築デザイン学科を卒業し、同大学院を修了。在学中は2回生から木匠塾に参加し、木材の加工技術を身につける。2019年3月よりVUILD株式会社に入社し、ジュニアアーキテクトとして各プロジェクトの設計・製作業務に携わる。
個人でプロジェクトを担う経験
野田さんのものづくりの原点は、大学時代の活動にあります。滋賀県立大学の学生有志団体「多賀木匠塾」では、夏休みに泊りがけで1つ作品をつくる習慣があり、在籍中には子どもたちが遊べる木製遊具を製作した経験もあります。また、所属していた研究室では、町のお祭りで展示される作品「ヨシドーム」を製作したり、倉庫を改修して本屋にするプロジェクトを行なってきたそう。
これらの経験を通して野田さんは、手を動かしながらものづくりをする楽しさや、利用者や施主の方との「繋がり」「コミュニケーション」を通じてお客さんの要望を実現していく過程の楽しさ、そして完成したものが町の方々に活用されることのやりがいに目覚めたそう。
そして、卒業後もクライアントや実際に作品を使う方々の顔が見える範囲でものづくりを続けていきたいという思いから、VUILDに入社しました。
VUILDでは会社設立当初から、事業も労働環境も「自律分散協調型」を目指して、個々人が行える仕事の幅を最大限に広げることで、物理的に全国に散らばるメンバー同士が協調できる体制を整えています。野田さんも、入社1年目から設計や金物・材料の発注、切削データ作成、仕上げから外部依頼、アルバイトのアサイン、見積もり作成・・・と、プロジェクトに関わるあらゆることを任されてきました。
この経験を通して、プロジェクトを形にしていく楽しさを体験すると共に、自分で追求したいデザインや、一緒に仕事をしたい仲間への意識が生まれてきたそうです。会社として行うプロジェクトは、色々な人の意見が入るのが醍醐味な一方で、自分がやりたいことや形を100%追求できるわけではないからこそ、「もっとこうしたい」を追求したいという思いがふつふつと湧いてくるそう。この思いが、社外での個人活動につながっていくのです。
「いつか一緒に仕事をしよう!」が実現
そこで、野田さんがVUILDに新卒入社してから半年後に個人ワークとして初めて着手したのが、友人が声をかけてくれたプロジェクト「『町にはみ出す家具』のある長居したくなるトレーニングジム」の家具製作でした。
学生時代に「いつか一緒に仕事しよう!」と飲みながら話していた友人が立ち上げに関わっているこのプロジェクトは、ただの施設ではなく、人々が交わる仕掛けのある場所、暮らしにもっと「健康」を溢れさせる場所にするために、クラウドファンディングで資金を集めて「町にはみ出す家具」を製作するものです。
野田さんはここに、デジタルファブリケーションの強みを活かして、お尻の形状にあわせてゆるやかな曲面に座面がデザインされたベンチを製作しました。身体に合わせて大きさを変更できるこのベンチは、それらがランダムに並び集まることで波のようなファサードを演出します。
クラウドファンディングでは目標金額を大幅に超えることができ、追加で看板も製作しました。ベンチ製作後も、室内に設置する物販販売用の棚の製作をお願いされているとのこと。
ものづくりがグッと身近になった3つの理由
野田さんの活動を通してご覧いただいた様に、「デジタル化」により、ものづくりの分野でも個人がリスクなく挑戦できる環境が整ってきました。
これまでYouTubeやwebsite製作など、パソコン一つで完結できる仕事が副業の中心となっており、デザイナーや建築家という職業は、経験・実績を積んだのちに独立して会社をつくることが主流でした。しかし、「デジタル化」により在庫と工房を持たずにいくつも作品を複製できるようになったこと、そして誰もがインターネットを通じて個人で発信できるようになったことで、ものづくりのフィールドでも学生・新卒・20代のうちから、「個人の名前」で挑戦できる時代、パラレルワークを行える可能性が拓けてきています。
理由① 何度でも再現可能なものづくり
デジタルファブリケーションの一番の魅力は、「再現性の高さ」です。一度データを作ってしまえば、二度目以降は機械に切り出してもらうだけで幾つでも複製することができます。
デジタルを介さないDIYでは、同じ作品をつくるために同じだけの労力をかける必要があります。しかし、デジタルファブリケーションの世界では、自分が欲しいものを誰かが欲しいと言ってくれたときに、データさえあれば同じものを簡単にあげることができるのです。自分のためのものづくりが、結果として誰かのためになる。それを気軽に実現できるのが、デジタルファブリケーションの魅力です。
理由② 『EMARF』で工房も在庫も不要に
木製ものづくりを速く、安く、デザイン自在に。
2020年5月にリリースした、日本初のクラウドプレカットサービス「EMARF(エマーフ)」。イラレやCADソフトなどで作成したデータの見積りを瞬時に確認でき、クラウド上で加工発注した後に加工された部材が自宅に届くサービスです。これらの加工を担うのは、これまでVUILDが全国に55台以上導入してきたデジタル木工加工機器「ShopBot」です。自宅から一番近い提携先のShopBotによって加工された部材が配送されることで、工房や在庫を持たずに、欲しいときに欲しいものをより安価につくることを可能にします。
理由③ EMARF×ECサイトで出来ること
自分のサイトを作成して、サイトでクレジット決済を可能にし、認知のためのPR...と、自分でオンライン販売を行うには、膨大な労力が必要です。そんな面倒な手続きをすっとばして、実際の店舗を持たずに誰もがものを売れる環境を用意してくれるプラットフォームが沢山生まれてきています。
ものづくりをもっと身近に、もっと気軽に
野田さんが個人で受けたプロジェクトでは、クラウドファンディングでお金を集め、VUILDの拠点がある神奈川に住みながら、兵庫のクライアントとデジタルデータを活用することで効率的にコミュニケーションを取りながら製作を進めました。資金面で環境面でも個人が負担なくものづくりに挑戦できることを実感すると共に、VUILDの業務と個人ワークを両立することの意義を体感したそうです。
個人ワークの中で自分の挑戦したい造形にチャレンジし、そこでの学びをVUILDの業務にも応用していきたいという野田さん。色々なお客さんと密にコミュニケーションを取りながら、もっと色々な新しいことに挑戦して、自分も成長する中で、VUILDも成長して欲しいと語ってくれました。
野田さんの直近のものづくり願望は、最近引っ越した家の家具を製作することだそうです。家のモデリングまでは終わったので、これっから棚やベッドなど、実際の家具を製作していく予定です。乞うご期待!