エチオピアの砂漠に置いてかれ、その後足を切断しかけた話
アフリカの東側に位置するエチオピアとエリトリアの国境付近にはダロル火山や塩湖などといった世界でも過酷な地がある。
しかしここでは現実を感じないような絶景を楽しめる。しかし、それらは個人で行くことはほぼ無理と言ってもいいだろう。
なぜなら国境付近では未だに紛争が勃発し、盗賊集団に襲撃される可能性があるからだ。
現に邦人が殺害されてからこの地域において観光する場合は兵士を雇う事が決定されている。
外務省による渡航危険度は最大レベルの4であり、退避命令が出されているので、いくらツアーが組まれているからと言っても安全は保証できないしツアーの中ではかなり過酷な方である。
そんな世界一過酷なツアーと呼ばれるこのダナキル地方を巡るツアーに行ってみた話を書いてみようと思う。
首都アディスアベバの町に到着
早朝にエチオピアのボレ空港に着いた自分が向かったのはこの地方を巡るツアーで有名なETT(エチオピアトラベルツアー)のオフィスへ。
中国資本によって開発された町並みと建設されたビルが並ぶ町は治安が悪く、集団での首絞め強盗やスリが多発しているためタクシーを使って移動した。
ツアー代理店にてツアーを申し込んだ自分に待っていたのは従業員の家族による豪華な歓迎だった。
近くにある床屋で営む家族に床屋の中でパンやエチオピアスタイルのコーヒーやパパイヤアボカドジュースを無料で提供してもらった。
「特に何もしてないのにこんな沢山貰っていいの?」と聞いたたら
「あなたは私達のお客さんなんだから気にしないでいいのよ」
と言われ、イスラム圏のホスピタリティを超えるような優しさを受けてしまった。
「急で悪いけどツアーは明日からだけど大丈夫かい?」と言われて
「全然大丈夫。だけど今日の宿はまだ取ってないんだよね…」
と言うとなんと無料のホテルまで取ってもらった。ホスピタリティが熱いですね…
ということで支払ったお金はツアーの二泊三日で400USDだ。セメラまでの往復飛行機と宿泊と水と食料とガイドと4WDの車チャーターで日本円で6万は安すぎるだろ…
1日目
首都のアディスアベバからプロペラ機に乗ってセメラの空港に向かう
到着した空港に待っていたガイドとツアーの代理の拠点へと向かった。
今回ツアーで一緒になったのは中国人4人とノルウェー国籍のスリランカ人と自分だ。
中国人4人は普段本土には住んでないので英語ペラペラ。スリランカ人も学生ながらトリリンガルで英語下手なの俺だけやん…とか思いながら各自自己紹介をしながらミーティングを兼ねた朝食を食べたのだった。
セメラの町は田舎だ。町と町を繋ぐ道路はコンクリートで舗装されててもそれ以外は土の道であり、人力車やボロボロのトラックや車が走り、辺りに人が多く生命力を感じる町である。
そんな街を車で20分も走ればあたりは一面の地平線の世界へと変わる。
エアーズロックさながらの大岩や砂漠や緑荒廃した土地しかなくなるのだ。
ダロル火山という目的地へ向かう中、スケジュール確認や野原でトイレをするために時々小休憩が入りながらまた進む
3回目の小休憩に入った。
複数台あるランドクルーザーを運転するドライバー同士で何かを確認し合っている間に用を足すことにした。
ドアを開けて降りると気温50℃を超える暑さを通じて過酷なアフリカの大地を実感する。
強い日差しとアスファルトに反射する熱、吹く風は熱風だ。そんな中だがアフリカの広大な大地と砂漠と地平線を眺めながらするおしっこは人生で一番清々しい気分だった。
ワイ「よし、終わったし車に戻るか」
車「ブウゥゥゥンwwwww(加速)」
ワイ「HAY! STOP IT!!!!!(ガンダッシュ)」
なんと運転手が自分が乗ったのを確認しないまま出発してしまった
後部座席で隣に乗ってた中国人の人も寝てたし俺が居ないことにこのままだと気づかない。
このままだと砂漠に置いてかれてディスカバリーチャンネルが始まってしまう。いや、笑い事じゃねぇマジで。
全力ダッシュをするも加速する車を叩くまでの手の距離があと1m届かない(悲痛の思い)
そのまま車は加速して自分が到底追いつけない速さになってしまった。
ワイ「はは…ははは」
人ってどうにもならん状況になった時はまず笑いが出るんだねということが今回分かった。
持ち物を確認した。何も無い。携帯もパスポートもだ。
どうしよう。生還する方法を考えたけどたまに通る大型トラックをヒッチハイクしてセメラの街に戻ってツアーの代理店へ行き事情を説明するしか思いつかない。
しばらくして車は地平線へ消えた。自分以外の音が存在しない。体感時間が長い。
体感5分くらい経っただろうか、地平線から白い物体が走ってきた。
人生初のヒッチハイクが車に置いてかれたアフリカのダナキル砂漠っておもろすぎるだろ
と最初のチャンスを伺っていた。
しかしトラックかな?と思ったら俺を置いていった車が戻ってきたwwwww
うおおおお!!ようやく気づいて戻ってきた!!!助かった!!!!
ドア開けて一言目
ワイ「死ぬかとおもったじゃねぇか!!😡」
運転手「すまん(笑)」
笑ってんじゃねぇぞ!!いやマジで笑い事じゃなかったんだぞ!!!😡
次からトイレに行くときは隣の中国人の女の子にトイレに行くことを絶対言ってからトイレに行くようにした。
それから途中で小さな村へ寄った。ちなみに僅かだが電波も通る。田舎の子供は観光客にスレてなくてかわいい。お金も要求してこないし黒人以外は基本来ないので興味津々なので一緒に遊んだ。皆振り払ってるなか子供一緒に遊んでるの俺とスリランカの人だけや
こいつら恋バナ大好きで食堂に入ってきて誰と誰が付き合ってるの?とか色々聞かれたけど大人に怒られて追い出されてた(笑)
それからもずっと砂漠の道を走り続ける。
出発から8時間、ようやくダロル火山についた………
火口からはグツグツやシューシューとガスが漏れる音が聞こえてくる。
近くに行けば有毒なガスの濃度が高くなり、マスクをしないと蒸せて息苦しい。
たまに熱した岩石が噴出されて空に舞う。
ダロル火山の麓で野営をすることになった。
光害が何も無いので夜空が果てしなくよく見える。
今まで見た星空で一番綺麗だったかもしれない。
そして遠くの積乱雲から落ちる沢山の雷を見ながら眠りに落ちる贅沢をした。
2日目
朝5時起きからのサンライズを見に再びトレッキング
ガイドに「綺麗すぎるので叫んでいいですか?」と言って朝焼けに向かって叫んだ(受験パルキア)
因みにガイドによるとインジェラは大不評なので出なくなったそう。美味しくないのはわかるが…いくらエチオピアの国民食でもこの扱いはちょっと悲しいような
飯を食べて村から出発。アサレ塩湖とエルタアレの硫黄の湖までは近い。
ここは手垢の付いた絶景のウユニ塩湖と違い観光客が誰一人も居ないし高山病の心配も無い。トリックアートとかもしなくて良い。ただしここまで来るのには過酷である。
湖の温度は106℃(ph1.5)もあるとガイドから説明された。
もしこれ舐めたら死にますか?ってガイドに質問したら多分死ぬって言われた…
こうして棚田の所をガイドに沿って歩いて行く。地面に思える場所も脆く、体重をかけるだけで崩れる箇所もあるのだ。
硫黄の湖の場所は日々変動するらしい。なので、ガイドの言うことをよく聞いて歩くように。
しかしガイドの言うことをしっかり聞いてもやばいことが起きかけた。
ガイドの言う通りの場所に足を置いて進んでいったら急に足元が崩れて足が沈み込んだのだった。沈み込んだ先は少しの熱湯溜まりだった
ワイ「アッツ!!!!!!!(105℃)」
熱湯はちょっと靴まで浸水し、長ズボンにも熱湯がかかり足にも少し被弾した
脊髄反射で足を上げてしまった衝撃でスリランカの人にも飛び火させてしまった。
なにが起きたか確認するのにはそこから少し時間が経過したあとだった。
ガイドに大丈夫か!?と駆け寄られ水を靴の中にかけられた。
結果、ひどい火傷とかは無かったけどガチで熱かった。
スリランカ人にはめっちゃ謝った。
その後過去にあったことの話をガイドからされた。
ガイド「以前ここをガイドしたときにある人がここの湖に落ちてしまったんや」
ガイド「その人は両足まで池に浸かってしまって大火傷してその後ドクターヘリでケニアのナイロビの病院まで運ばれたんや。」
ガイド「この後どうなったと思う?」
ワイ「正直予想できない」
ガイド「まぁなんだかんだあってそれから半年後に両足切断することになったんや」
ガイド「だからあんたはそうならなくてラッキーだな!」
ワイ「((((;゚Д゚))))ガクブル」
怖すぎるだろ……
下手したら以前の人みたく足切断の世界線があったわけだ。そうならなかったことに感謝
こんな事故があっても規制されないのはさすがアフリカという感じがする。もし日本だったら閉鎖だね。
という事が起こるように不発の地雷がある紛争地帯のような危険があるので、ガイドの言うとこは必ず聞いてください。でないと池に落ちてマジで死にます。
しばらくしたら昼を食べた村に帰還するため車に乗った。帰りは塩湖とサンセットを見ながら世界一濃い死海に行くと言う。
現存する世界一濃い死海、男3人で一緒に入ったけどどうあがいても沈まなくて面白い。
福島のイスラエル産塩使用の死海風呂なるものに入ったときは上を向いてコツを掴まないと浮けなかったのに何もしなくても浮くの凄すぎる……
一日目の夜もそうだったけど他の参加者との他愛もない話が楽しかった。
ツアーガイドが持ってきた死ぬ程強い酒をノリで飲んだらあまりの度の強さに吹き出した。めっちゃ爆笑された。
夜は涼しく、星も出ているが疲労が溜まっていたのですぐに寝た。
3日目(最終日)
この日は帰路に着くだけだったけど野生動物をたくさん見れたので結構満足度が高かった。
そのほかにハゲワシも見たけどめちゃくちゃデカかった。運転手が眠気覚ましのためにカートを噛んでいたので(エチオピアでは合法)試しに噛んだらめちゃくちゃ苦かった。いい経験
注意点
個人的に旅の中でもかなり満足度の高いツアーだったのだけど注意しないと砂漠に置いていかれる可能性もあるし熱湯の池に落ちかけるので注意すべきです
繰り返しになりますが、ダロル火山は隣国エリトリアとの国境付近で一応紛争地帯でもあり、盗賊団が邦人56しをした事件があった場所でもあり、外務省渡航危険度レベル4なので行く場合は自己責任でお願いします。
(そういえば今回雇われ兵士居なかったけど本当に大丈夫だったのか………?)
でもその過酷さを超えて凄い心に残った景色を見ることができたので行く機会のある人はぜひ。