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灰東京、焚き火

 逆巻くさまを聴いている。旋回し、外れ、舞い上がりながら落ちる。白いビニール袋が、何かの実のようにして浮かんでいる。 たとえば、ある時代、国ということがあって、中に高円寺という街があったとして。 そこは他から見ると何をしなくても生きていられる森があり、昼間から酒を飲み、道ばたに寝る人々があった。 高円寺を包んだ東京という大きな都市は、いつも細胞を新陳代謝させ、成長していなければならない。 その星には東京以外に数え切れないほど都市があって、彼らとは常に綱引きをし続け、勝ち続け

    • オデュッセイアのなかのオデュッセイア

      『オデュッセイアのなかにはいくつのオデュッセイアがあるか。(略)物語さえ見つかれば、たとえ結末がよくてもわるくても、イタケーは、長年続いた時間も法もないあの無形の状態から脱出できる。(略)帰還が推測され、考慮され、のちには回想される。だがそれはまた、実現する以前に忘れ去られる危険を孕んでいる。(略)オデュッセウスは、じぶんがたどらなければならない道すじ、それは彼の運命のかたちなのだが、を忘れてはならない。ということは、とりもなおさず、オデュッセイアを忘れてはならないことになる

      • 曖昧な字幕のあなた

        長さのせいか上映は二回に分けられ、文字を追う目は理解から遠ざかる。 光を漢字に奪われ続ける間も進んでいるようだった映画に私は、置きざりに取り残されている。下へ流れはじめた俳優と監督の名が黒くなっていった。 どんな映画なんだろうね、紙コップを袋へ放り投げながら囁きあう音がする。 どうしてわかんないの  日本の映画だからだよ  字幕があったじゃない ある冒険家/ライターを内から締めあげた、冒険とノンフィクションのアンバランス。 冒険の実際はひどく退屈な行為で占められるしかないか