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「選択と集中」と「多角化」は矛盾しない? リユースを軸に新規ビジネスを創出~戦力外Jリーガー社長の道のり39
事業規模の拡大とともにオフィスを変遷させてきたバリュエンス。その成長とともに事業も多角化していきました。企業の戦略として事業転換やピボットはむしろ「いいこと」として受け止められていますが、むやみにやることを増やしたり、変えたりすることは、軸のない、芯の通らない企業体質につながる危険性もあります。
私たちバリュエンスが、パーパス、ミッション、コアバリューを大切にしているのも、企業としての核になるものをブレずに突き詰めていくためでもあります。
今日は「事業の多角化」と「軸」。一見すると相反する2つのことについて話してみたいと思います。
先駆者から学ぶ成長戦略
Amazonや楽天といえば、日常的な買い物に欠かせないサービスです。みなさんも利用していることでしょう。
両社はもともとeコマースからスタートした会社ですが、AmazonならクラウドサービスプラットフォームのAWS、楽天でいえば楽天銀行や楽天証券といった金融サービスへと、営業利益の割合をシフトさせています。
トラフィックが生む事業を軸に、親和性の高い新たな収益機会を見込めるような付帯サービスをしっかりと広げている。これがビジネス拡大の一つの方法です。
軸となる“天職”
バリュエンスは、これまで紹介してきたように、『なんぼや』を皮切りに、
予約制を取り入れた『ブランド コンシェル』
ハイブランド、人気ブランドのブランド品、古着などのプレオウンド(リユース)品を扱う『ALLU』
骨董品・美術品を主に扱う『古美術八光堂』と、リユース部門を拡張してきました。
「家業を手伝う」というきっかけだったにせよ、私にとってリユースは勝手知ったる本職であると同時に、そこにやりがいや働く意味、もっと大きな視点で考えても「働く」と「幸せ」がニアイコールになるような“天職”でもあります。
すでに一度行っている「選択と集中」
過去には洋菓子専門店『パティスリーブラザーズ』、焼き立てチーズケーキの店『パブロ』など文字通り異業種への展開を経験しました。結果的に企業としてのリソースをリユースに集中することを選んだわけですが、
この過程も大きな学びになりました。
幸運なことにプロサッカー選手引退からすぐにこの仕事に就けたこと、父がこの仕事をしていたこと、兄たちとスイーツなどの多角経営を進める中で、リユース業をメインにすることを選んだことなど、すべてがかみ合って現在があります。
「選択と集中」か「多角化」は、二者択一ではない
「選択と集中」と「多角化」は、必ずしも二者択一ではありません。
そもそも「選択と集中」という概念は、アメリカのカリスマ経営者で、GE(ゼネラル・エレクトリック)社のCEOなどを務めたジャック・ウェルチの著書から日本で広まったとされています。
「本業以外に手を出すな」「経営資本を一つの事業に集中投下せよ」という意味で理解されていますが、どうやらウェルチの真意はそこにはないようです。
そもそもウェルチ自体、GEのCEO時代の約20年間に、本業の製造業以外に保険商品、クレジットカードなどの金融事業をはじめさまざまな事業を展開しています。
ウェルチの手法が現代でも通用するか、巨大複合企業となったGEのその後がどう評価されるかはまた別の話ですが、「選択と集中」は、新規事業を戒める考え方ではありません。
一つの事業に集中することのリスク
これだけ世界が劇的に変化し続けている現代ではなおさら、一つの事業に集中してしまうことに大きなリスクがあります。
本業、主事業だけに集中して、成長性が確保できるか? 将来をコントロールすることは誰にもできないことを考えれば、長期的に見て一本道を進むことが停滞や失敗を生むことすらあるでしょう。
Amazonや楽天が自らの顧客、トラフィックを有効活用して新規事業にピボットしていったように、業種や事業形態に拘るのではなく企業としての“軸”さえあれば、むしろ多角化していくことの方が自然ともいえるのです。
リユースを “軸”に事業の枠を広げていく
バリュエンスでいえば、ブランド品の取り扱いだけでなく、そのやりとりの中で出てきた顧客の課題を解決する付帯サービスを設けていくことが、新たな成長機会につながります。
リユースを“軸”に、そこで出会える顧客、得られる情報や顧客の潜在的な課題などが新たなビジネス=多角化につながっていくのです。
もう一つ、“軸”となるのはリユースという事業体だけではありません。
話は前後しますが、バリュエンスが、
Circular Design for the Earth and Us
地球、そして私たちのために
循環をデザインする
というパーパスを持ったことで、「ブランド買取専門店を運営する企業」から、サーキュラーデザインカンパニーへと進化し、その可能性を大きく広げることになりました。
循環型社会における重要な取り組みの一つであるリユース事業を中核に、持続可能な世界の実現にかかわるすべての事業が企業としての“軸”と密接に結びつくことになったのです。
パーパスについてはまた詳しくお話しするとして、話を事業の進化と多角化に戻しましょう。
ブランド買取、リユース事業は引き続き進化させつつ、さらにバリュエンスをスケールさせるための事業を育てたい。顧客の潜在的な課題を新たな事業に。
この構想を最初に具体化したのが、2017年10月にリリースした※資産管理アプリ『Miney (マイニー)』でした。
つづく
※現在はALLU Fashion Marketにサービスを移行
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