【VRの話をしよう】やってみてはじめてわかる価値と意義。この一年半のバーチャル展示会サービスを振り返る。
こんにちは、newtraceの柴原です。
新型コロナウイルス感染症が日本を襲ってから3年目。オフラインでの日常も少しずつ再開してきました。ここ数週間は再び新規感染者数が増えて心配ですが、なんとか今年中にはもう少し落ちついてほしいですね。
withコロナとも言える状況下で、いくつかの社会活動が半ば強引に進化を遂げています。今回は、コロナ禍で非常に伸びたサービスの一つ、「バーチャル展示会」について、その開発・制作を手掛けた弊社が知り得たことをnoteにしてみたいと思います。
パンデミックを機にニーズが高まった「バーチャル展示会」
コロナが急速に拡大し、緊急事態宣言が発令されるなど人の流れが著しく制限された頃にその影響が顕著にあらわれたもののひとつが、今回取り上げる展示会や見本市といったビジネスイベントです。
なんと言ってもコロナは感染症ですから、ひとつの場所に人をたくさん集めることそのものが難しいわけです。
そうなると困るのが企業側です。特に中小企業の場合、新製品を作ったはいいが発表する場を失うことに。大手と違って大々的にプロモーションをかけるわけにもいきません。やはり展示会というのはある一定の分野の顧客層が一気に集まる年数回の祭典。最も効率よく商談を進められる唯一の場でもあったんですね。
それがコロナ禍によって開催できなくなった。
そこでCG制作を得意とし、建築パース制作で得た空間演出の知見がある私たちのもとにご相談が寄せられるようになったんです。展示会をバーチャルでできないものか、と。
そんな経緯もあって急遽開発したバーチャルプラットフォーム『360 SPACE』を活用した展示会をこの1年半でいくつか手がけてきましたが、やってみるとわかること、逆を言うとやってみないとわからなかったことがいくつかあるんですね。それを一つずつお話していきます。
わざわざ3Dでやる意味
ユーザー体験がリッチに
まず取材でも質問によくあがるのが「そもそも3Dにする意味ってあるのか?」ということ。ネット上で同じ業種が集まったいわゆる「まとめサイト」のようなものでいいんじゃないか、という意見ですね。
わざわざバーチャルにするメリットって何か、ということでいくと、やはり2Dを3Dにする意味はありまして。いちばん大きなインパクトは参加者、つまりユーザーの体験(UI/UX)です。自分でいろいろ探しながら見ていくという体験の提供こそがバーチャルにする最大の意味でありメリットであると言えます。
ユーザーがより興味を持って商品を見るという点において、バーチャル展示会はまとめサイトとは大きく異なります。実際にわかったのは、滞在時間に圧倒的な差が生まれているということですね。
「回遊」を促す効果
まとめサイトは非常に見やすくわかりやすく整理されていますが、そのおかげで目的を果たすまでが早い。そして用事が済んだらさっさと離脱してしまう。あっさり終わってしまうんです。見たい所だけ見ておしまいという。
一方でバーチャル展示会でも自分が見たいブースやお目当ての展示はあるにはある。でもそこにたどり着くまでにいろんな出会いがあるんです。ブースからの呼び込みとかもありつつ、見るつもりがなかったものまでちょっと冷やかしてみたりして。
結局、冒頭でも言ったように、展示会って中小企業にとってはもってこいの環境なんです。膨大な露出で認知させる大手と違って、出会い頭のセレンディピティの有無は商機を大きく左右する。実際に出展企業も9割が中小企業様だし、ここぞとばかり力を入れて見てもらおうと努力される。
それが報われるのは、いい意味であちこち歩き回ることになる導線。これがリアルと同様に用意されているバーチャル展示会は、やはりまとめサイトとは違う。逆にまとめサイトなら見え方は均一ですよね。そして広告費をかけたらかけただけ目立てる。大手向きです。
この差は大きかったんじゃないかな、と改めて思います。
ちなみにバーチャル展示会の滞在時間は平均して30分から1時間でした。
“プッシュ型営業”の実装は助走段階
ここで言うバーチャル展示会におけるプッシュ型営業とは、「出展企業の中の人」がアバターなどに扮してバーチャル展示会場内で来場者に声をかける・やりとりをする等の直接アプローチをすることを指します。
リアルな展示会だと自社のブースに一人でも多くの人を呼び込むために声をかけたり、場合によってはキャンペーンガールなどを起用することもありますよね。それと同じです。
でもバーチャル上ではアバターまで実装する企業はまだ少ないです。もちろんアバターが登場するタイプのバーチャル展示会をされる企業もあったのですが…費用対効果を考えると手を出さないお客様のほうが多かった。
なぜならアバターを使ってプッシュ型営業をしようとなると、それに対応する専任者が少なくとも1名は必要になってきますよね。しかもリアルタイムで張り付きで、という条件。おまけにオンラインですから基本的には24時間対応しなければならない。人件費が嵩む。工数面でも費用面でも難しいねそんなのできっこないよね、という結論に陥ったわけです。じゃあ対応時間を区切ればいいじゃないか、というのもまたちょっと違いますよね。
企業側の感覚値としてはチャットボットとか、AIが24時間対応してくれるぐらいまでやらないと、ニーズとして顕在化しないのです。
これ結構面白いところだと私は思っているんです。お客様からいろいろヒアリングさせていただく中で、現時点での技術だと費用対効果含め追いつかないのだなあ、と。
そういったお客様には、弊社のサービス「360 SPACE」をベースとしたパッケージプランがいちばん使い勝手が良いということで、選ばれました。プッシュ型の営業はできないまでも、まとめサイトでは物足りない。そういういい塩梅なところに着地できたんだと思っています。
まとめサイトみたいに大手企業にばかり人が集まるサービスではなく、ある程度自由に動きながら見て回るにはちょうどいいんですよね。でもプッシュ営業まではいかない、そのあたりが費用対効果につながってくるんでしょうね。
開催方式ごとの利用傾向
「合同展示会」の場合
展示会を主催する企業・団体が複数の出展社を募るタイプのいわゆる「合同展示会」では、リアル展示会と同様にイベント会社様のご利用もありましたが、特徴的だったのは医療・介護・福祉業界のご利用が比較的多かったことです。
これらの業界に従事される方々はコロナ禍で特にひっ迫した状況におかれ、展示会等で新たな情報を得る機会が限られてしまったんですよね。そこに移動距離と時間をかけずに多くの情報に触れることが出来るバーチャル展示会が非常に効果的だった。医療福祉業界として初となるバーチャルでの合同展示会の制作・運営もさせていただいたんですが、数千人~1万人近くの来場者を集めることができました。第1回目にしては上出来です。その団体はいままでイベント的なことをやったことがなかったわけですから、その動員数はかなり手応えを感じていただけたんじゃないでしょうか。
「プライベート展示会」の場合
プライベート展、つまり一社のみでの開催だと機械系の業種が多い傾向です。そもそも精密な機械や装置などを表現する上で3DCGは非常に相性がいいですから。機械などの利用シーンを見せたい時も、バーチャル空間であればあらゆるシチュエーションを表現できますし。オンライン+CG+機械という組み合わせがベストですね。
大型産業機械を展示会会場に陸送することを考えただけでもリアルな展示会に比べてかなりのコスト削減になりますよね。
気になる費用対効果、リアル展示会との違い
来場者数、滞在時間
費用対効果という言葉が出てきたのでまとめると、結論、バーチャル展示会の費用対は相当大きかったと思います。オンラインだけあって、来場者が本当に多かったんですよね。リアルでやるより全然多かった。正直、何万人クラスならすぐに集まるんです。期間も一週間でも一ヶ月でも大してコストが変わらない。加えて滞在時間の長さ。平均して30分以上見てもらうことができているので、合同開催の場合でも一社開催でも認知が相当高まったことと思われます。
デジタルマーケティングが容易に
来場者の行動履歴が簡単に取得できるのもオンラインならでは。ユーザーごとに確認できるので、そのお客様の興味関心に適したアプローチを検討することができますよね。また、どの商品のクリックが多かったか、どのカタログのダウンロードが多かったか等、結果に応じて次の施策を考えることもできます。つまり、デジタルマーケティングへの移行あるいは導入がスムーズに行くわけです。リアル展示会ではそこまで細かく行動履歴を取るのは難しいですから、これはお客様に喜んで頂けました。
費用面
作り込み具合やどこまでこだわるかで変わってきますが、上記のような数的効果の割に、費用はかなり抑えられます。リアルの場合だとブース一つ出展するのに300万円以上、人件費やその他準備に掛かる工数を足したらその倍くらいは平気でかかっちゃいますから。でもブース出展をしたい企業によっては手軽に10万ぐらいで出したい予算感なわけですよ。
ブースの作りこみにそこまで拘らずに展示会を開催したい場合は、弊社の「360 SPACE」をベースとしたパッケージプランなら相当コストパフォーマンスが高いと思います。
もちろん、予算があり、空間のオリジナリティを出していきたい、世界観に拘りたいという企業にはオーダーメイドプランを選択いただきご要望を伺いながら作り込んで行く形で技術提供させて頂きました。営業活動なのか、ブランディングなのかといった展示会の開催目的と予算に応じてプランを使い分けることで、費用対効果が高まるでしょう。
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守秘義務があるため全てを具体的にオープンにすることは出来ないのですが、やってみていろいろとわかってきたバーチャル展示会のメリット、課題、そして効果をまとめてみました。
もちろん、リアル展示会の良さもありますし、いきなり全てをバーチャル化するのは…という企業もあると思います。リアルとバーチャルそれぞれのメリットを活かした「ハイブリッド開催」という形での展示会も増えています。顧客属性や開催目的によって、オン/オフ両軸という形でのイベント開催も視野に入れて頂くと良いでしょう。
これからも事例を分析し、プロダクト開発に反映していきます。
newtrace株式会社は、建築ビジュアライゼーション領域のCG制作で14年の実績のある最大手「スペースラボ株式会社」から派生したデジタル領域の新会社。手強みである高品質なCG技術と空間演出力にテクノロジーを融合させたあらゆるデジタルトランスフォーメーション施策をご提案することで、ビジネスを一歩進めるお手伝いをいたします。
バーチャル展示会を始めとした仮想空間上のコミュニケーション構築の実績も豊富です。ぜひお気軽にご相談ください。
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