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『ボリュメトリックビデオ』について (2)画質


<(1)からのつづき>

『ボリュメトリックビデオ』の画質について

ボリュメトリックビデオの画質について整理します。
3Dで使える素材である『ボリュメトリックビデオ』では、これまでの映像のようにSDサイズ(640x480)、フルHDサイズ(1920x1080)のように画面を切り取るような『フレーム/枠』みたいな仕様がありません。

ですが、『(同じ大きさの人を)どのくらい細かく表現しているか』みたいな説明はできます。それが細かい方がよりリアルで繊細な描写ということになります。

ポリゴンの"メッシュの大きさ"やそこに貼られている"テクスチャの細かさ"や"ボクセルの大きさ"、レンダリングの品質(などとしておきます)で決まります。

ボリュメトリックビデオの画質の現状

Netflix『幽☆遊☆白書』で使用されたハリウッドでの高額なボリュメトリックキャプチャのスタジオで撮影した『ボリュメトリックビデオ』は(繊細なデータ+ハイレベルな仕上げのなせる業の結果で)他の実写映像と混ぜても大きな違和感がない画質を実現できているので『顔の寄り』があります。

しかし、そうではないバジェットが大きくない映像企画では(顔の寄りはもとより、バストショットサイズでも)なかなか各所からOKが出ないのが現状です。

『顔の寄り』『バストショット』で比較するなら、各社、造形としてしっかりと描写できていてもHDレベルの解像感の世界に混ぜると「まだ少し足りないね」と判断されることが多い状況です。

(商用としては生まれたての技術ですし、日進月歩でみるみる進化しているのを実感していますから私は悲観的ではありません)

なので多くの場合は、人を見せるシーンよりはカメラワークや人の周りの様子を見せるシーンにボリュメトリックビデオを使っています。いまのところ。

4Kカメラを使っても高画質にはならない理屈

4Kカメラで撮影していてもそれは「広範囲を高解像度で記録した映像データが欲しいから」です。
撮影範囲が広くなればカメラは高解像度が求められ、
あらゆる範囲を記録する必要があるためカメラの台数も増えていきます。
考え方としては、撮影した人が大きくなるわけではありません。

これは諸刃の刃で、台数が増えればコンピュータの処理が膨大になり、レンダリング結果を表示するまでに時間がかかるようになります。そこをどうやって乗り越えるか、軽減して業務としてやっていくのかも各社のノウハウやアイデアがありますので面白いところです。

そこにも関連する話題ですが、
画質のポイントは映像(画像)をもとに生成するレンダリングのアルゴリズムによります。ここが撮影スタジオ・システムを構える各社の技術のキモであり『画質の差』になります。

仕事で『ボリュメトリックビデオ』を使われる際は各社の画質の比較をしてもよろしいかと思います。詳細は伏せますが意外と違いがあるものです。

2D映像で使われるボリュメトリックビデオ事例

個人的にはボリュメトリックビデオの醍醐味は3Dでの自由視点/XRにあると思っているのでそういう企画が楽しいし好きなのですが。MVなどで2D使用での可能性も楽しんでいます。

ミュージックビデオ等で、最終的にテレビ画面やスマホ画面で『2D映像』で視聴するものはお客さんにとっては、テレビだろうがハリウッド映画だろうが実写だろうがグリーンバック合成だろうが『映像』です。
見たことがないシーンを表現しているからと言って画質を見る目が甘くなることはありません。つまり、制作者の意識も厳しくなります。

(すでに書いている理由もあり)
『ボリュメトリックビデオ』を使っていてもアーティストがとても小さく写っている空撮のようなシーンが多く、
顔の寄りはグリーンバックやバーチャルプロダクション(LEDウォール)で撮影した2D素材を使っていることが多いです。

どんな風に使われているかMVを見ていきましょう

例えばこちら『King Gnu -Stardom』3'15"からの4人のシーン。ボリュメトリックビデオ化されたメンバーはすごくメンバーが小さい状況です。

もう少し寄ったサイズでも使っているのが
『Aqours -DREAMY COLOR』3'30"あたりから。寄りはグリーンバックで撮影していることがわかります。

一方で、大胆にしっかりと『ボリュメトリックビデオ』を使ったアーティストもいます。
『MIYAVI -Need for Speed』は全編にわたってボリュメトリックビデオのMIYAVIさんを見ることができます。
ボリュメトリックビデオのザラッとした質感と映像全体の質感を調整しているので、ホコリっぽいような空気感の演出にもなっていて見事なMVです。

MIYAVIさんと同じくらいに、ボリュメトリックビデオをシッカリと見せているMVは『Vaudy / ZERO』(57"あたりから)ですね。
ダイナミックなカメラワークとCG化していることを活かした演出。ヘアスタイルの表現にボリュメトリックの特徴が見受けられますがそれも含めて映像表現として魅力的です。
全体のルックはやはりノイズ感を加えてボリュメトリックの見え方をなじませていますね。

ボリュメトリックビデオの採用は事前に検証を

このように、ボリュメトリックビデオの表現や質感の特徴がありまして、事象によっては後処理でどうにもできないこともあります。しかし、ボリュメトリックビデオならではの表現もありますので
事前にしっかりと検証して、試作映像も作ってみてから採用するかを考えるのが良いです。2DでもXRでも。

少し古い映像ですが、橋本環奈さんのアクションシーンのメイキング動画です。SONYのボリュメトリックビデオ技術を自社映像作品で使っていく姿勢には私もワクワクさせてもらっています。(超解像技術をもってしても)画質の違和感があっても、誰かが現場で使っていかないと進化していきませんから。さすがです。

これが『王様戦隊キングオージャー』の最終回での『アベンジャーズ・エンドゲーム』インスパイアのシーンの表現につながっていきます。
案件によってはLEDバーチャルウォール撮影の方がメリットがあることも多々あるにせよ、日本の作品がアカデミーVFX賞を獲得する時代になったことですし、さまざまなVFX技術とミックスされていくのは楽しみですね。
『画質』については一旦、こんか感じです。

<(3)へつづく>

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