「冒険王」──児童向け雑誌の役割【連載第三回】
こんにちは、バリュープラス アーカイヴ プロジェクトです。
先日動画として発信した三池敏夫さんインタビューの全文を、こちらの記事で公開いたします。
三池さんは特撮美術監督として、ゴジラシリーズ、ウルトラマンシリーズ、平成ガメラシリーズと数多の特撮作品に中心スタッフとして参加してきました。また近年は、認定NPO法人ATAC(アニメ特撮アーカイブ機構)の発起人の一人として、残された特撮作品の資料を保存・研究するアーカイブ活動にも積極的に取り組まれています。
今回はその三池さんに、発掘されたピープロ特撮4作品のフィルムを実際にご覧になっていただきました。そして、
ピープロ特撮そのものの魅力、
その写真資料としての価値、
そして特撮作品の資料アーカイブの意義について、
様々な観点で語っていただきました。
──これらのフィルムを保管していたのは児童向け雑誌「冒険王」を発行していた秋田書店です。三池さんも当時は「冒険王」をはじめとする児童雑誌は読まれていましたか?
三池 雑誌もいくつか種類がありましたから、それらを全部は買ってないですけど、「表紙が良いな」と思って買うようなことはありましたよ。実は今も残していて、実家にあります(笑)。九州は熊本なんですけど、大事に取ってあるんですよ。
──ネットがある現在は、「何話にどの怪人が出てきたのか」など簡単な情報であれば誰でも即座にアクセスできます。しかしネットが存在せず、映像ソフトの登場以前で映像自体も繰り返し観ることができない当時は、そういう書誌情報が生命線ですよね。
三池 そうです、情報発信自体が本当に少なかったですから。そういう子ども向けのテレビ番組情報誌みたいなものは、やっぱり頼りにしていました。当時印象に残っていることとして、他社の話になりますけど「週刊少年マガジン」とかは、雑誌の最初の方にカラーのグラビアページが結構あって、そこで色々な特集をするわけですよ。怪獣ブームの時には怪獣が表紙になったり、グラビアページでも結構良いカラー写真で載っていたりしていた。
そういう中で、完成作品では見えてはいけない、スタッフが写っているような写真もちょこちょこ出てくるんですね。それを見て、子どもながらに「やっぱりこういうものを作っている人がいるんだ。そういう仕事があるんだ」ということを知るきっかけになりました。完成作品の映像とは違うんだけど、そういう写真も魅力的でしたよね。怪獣を作る人がいるとか、怪獣の中に人が入っているとか、それを動かす人がいるとか、そういうことはそこで知るわけですよ。
──大人になって作り手の側に回った三池さんにとっても、児童雑誌やそこに載っている写真からの影響は大きかったと。
三池 第1次怪獣ブームの頃にはテレビ雑誌はまだ無くて、「少年マガジン」とかの漫画雑誌の表ページに特集されているぐらいだったんです。でも70年代に入って第2次怪獣ブームの頃になると、「テレビマガジン」(1971年創刊、講談社)とか「テレビランド」(73年創刊、徳間書店)とか「てれびくん」(76年創刊、小学館)とかが出てくる。これらは本当にテレビ番組の紹介が主体になっていて、カードとして切り取れるおまけだったり、ちょっとした小冊子になっている付録だったりもあって、色々な作品の色々なキャラクターをどんどん頭に入れられる雑誌なんですよ。それらを読んで、みんな怪獣博士・怪人博士になっていくわけです(笑)。
──三池さんが特撮にのめり込むきっかけも、そういう児童向け雑誌などの子ども文化に存在したわけですね。
三池 そうですね。それ以外の情報はなにも無いですから。一般の雑誌とかには、そんなキャラクターものの写真なんか一切載らないんですよ。児童雑誌だけが情報源でしたよね。
【第四回に続く】
クラウドファンディング
「『ライオン丸』『タイガーセブン』『ザボーガー』昭和特撮フィルムを後世に残したい!」
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特撮美術監督 三池敏夫 プロフィール
1961年熊本県出身。1984年九州大学工学部卒業後、矢島信男特撮監督に師事。東映テレビヒーローシリーズに参加した後1989年フリーとなり、東宝のゴジラシリーズ、大映のガメラシリーズ、円谷プロのウルトラマンシリーズなどに特撮美術として参加する。2008年再び特撮研究所に所属。代表作は『超人機メタルダー』(1987)、『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)、『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003)、『男たちの大和』(2005)、『日本沈没』(2006)、『ウルトラマンサーガ』(2012)、『巨神兵東京に現わる』(2012)、『のぼうの城』(2012)、『シン・ゴジラ』(2016)、『Fukushima50』(2020)、『シン・ウルトラマン』(2022) など。
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