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アニメの制作資料が再生紙に生まれ変わるまで!山陽製紙株式会社 工場見学レポート

こんにちは!バリュープラス アーカイヴ プロジェクトスタッフです。
現在Makuakeで先行販売中のアニメ制作資料をアップサイクルしたノート『Archivist台本風ノート』『ArchivistB6ノート』。

ノートの中面のページって、本当にアニメの制作現場で使われた用紙を使用してるの?
どのように作られているの?などなど、気になっている方も多いんじゃないかと思います。
今回、山陽製紙さんのご厚意で再生紙の抄造工程を見学させていただくことができました。
本記事では見学当時の様子をお届けします。

各工程の説明・質疑応答には生産管理本部 製造課 マネージャー・池宮大樹さんと営業部 試作開発室・松崎英樹さんが応じてくださいました。
要所で補足をいれつつ、工程を紹介していきます。
※所属・肩書は取材当時のものです。

【山陽製紙株式会社 山﨑さんのインタビュー記事はこちら




1.いざ、再生紙製造の現場へ!

ゆめ太カンパニーさんのアニメ制作資料をやっとの思いで搬出したあの日。

ついに制作資料が山陽製紙さんに到着し、再生紙の抄造工程に立ち会える時がやってきました。

最寄り駅は大阪府・尾崎駅。
尾崎駅は関西空港から約40分、南海空港線~南海線と乗り継いだところにあります。
海が近いからか、潮風がなんとも心地良い。

山陽製紙さんの工場へは、尾崎駅から車で10分ほどで到着。

オフィス外観
山陽製紙株式会社 大阪本社工場

見学用の緑のキャップを被り、いざ工場内へ。

2.紙を溶かす

するとそこには、カゴに詰められたアニメの制作資料が用意されていました。
我々が運び込んだ180kgほどの紙が全てここに収められています。


さまざまな色・形の制作資料たち

重機を使ってカゴを持ち上げ、制作資料を大きな穴(※)の中へ投入していきます。
※パルパー(大きなミキサーのような釜)と呼ばれる機械

どさどさどさっ!と大きな音を立てて落ちていく制作資料
散ってしまった紙も拾って投入。1枚たりとも残しません

そして、いよいよ離解工程※に入ります。
※離解(りかい)とは、紙の原料であるパルプを水中で機械的に処理して繊維状に分解する工程です。
制作資料を溶かす重要な部分なので、画像を沢山使って長めに説明していきます。

ぐるぐると動き出す機械。
まさにミキサーを大型にしたようなかたちで、水と合わさって制作資料がどんどん細かくなっていきます。

離解工程で使用される水は、排水を再利用しているそう。その他の工程では井戸水を使用しています。
今回の紙をつくるのに原料600kg(アニメ製作資料30%:古紙パルプ70%)を仕込んでいますが、全工程を通して使用する水の量はその約100倍!
紙をつくるのには、こんなに多くの水を使うのですね。

写真で見るとなんだか餅のよう

紙って、こんなにもあっけなく液状になってしまうのですね。
アニメの制作現場で使われていた紙が生まれ変わっていくさまを見ていると、嬉しいような悲しいような、不思議な気持ちになります。

こうして機密情報などもしっかりと離解(溶解)されているのがこの目で確認できました。
紙を刻む際に粗さの調節も可能とのことで、元の素材の質感をがっつり残したいといった場合の調整も面白そうだなとワクワク。

次に、離解した紙を機械の底にある穴から隣にあるチェストタンクへ流し、繊維を休ませる工程に入ります。

チェストタンク

3.小休憩(工場見学)

繊維を休ませる間、工場内を案内していただきました。

【古紙置場】

外には大量の古紙たちが。中には見覚えのある商品のパッケージなどもありました。

―一週間に運び込まれる古紙の量はどのくらいなのでしょうか?

池宮さん:段ボールが10~20トンくらいですね。クラフト紙も調子が良ければ同じくらい。
ただ、やはり(ペーパーレス化で)数は少なくなってきています。

―ペーパーレス化は環境負荷の軽減には必要なことですが、紙を作るお仕事をされている皆さんはどのように思われているのでしょうか?

池宮さん:製紙会社にとっては脅威ですね。ペーパーレス化が進んでいる中ですが、こうしてオーダーメイドで紙の製造をご依頼いただけるのはありがたいです。
でも、紙でなければいけない、というものもありますし、紙ならではの味もあると思います。レトロ感というか。ビニール類も再利用できますが、あれでは出せない味があります。
そして何より印刷できるという特性があります。ポリエチレンやビニールでも印刷は可能ですが、紙はシワ付け(クレープ紙(※))もできます。そこが強みではありますね。

※クレープ紙 山陽製紙株式会社「crep」
水にも強く、山陽製紙さんでは電線などの梱包紙やオリジナルのレジャーシートを製造しています

以前、ゆめ太カンパニーの山口会長もインタビューで「少なくともこの先10年くらいは紙は完全には無くならない」とは仰っていましたが、地球環境に配慮すればするほど製紙会社の仕事が無くなってしまう。
環境のためにはペーパーレス化を進めた方が良いですが、必要不可欠な紙を作り続けるため、山陽製紙さんは様々な工夫をしています。
ペーパーレス化の全てが良い事だけではないのだな、と改めて考えさせられました。

そして、青空の下に置かれているこの古紙ですが、今回のアニメ制作資料のような機密情報を含むものを取り扱う際はきちんと鍵のかかった倉庫で保管しているとのこと。

【排水処理タンク】

圧巻!
排水処理設備

抄造時に大量の水を使用しますが、その際に排出される水をここの設備で再度処理し、魚の住める水質に浄化して川に戻しています。
これまでも法規制に基づき、水を浄化していましたが、循環型社会に貢献する製紙会社として産業廃棄物・一般廃棄物を最小限に、という取り組みの中で、よりきれいな水を還すという目的で、こちらの排水処理設備も近年取り入れたものだそう。
環境に配慮した素晴らしい設備ですね!

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さて、パルパーへ戻ったところ、底にはたくさんのセロハンテープが残っていました。
これらは紙に付着していた異物たちで、底にある穴を通り抜けきれないほどの大きなゴミはここで取り除かれます。

機械の底に残ったセロハンテープは人の手でカゴに載せられ、運び出されます。中にはクリアファイルのような残骸も

なぜこんなにセロハンテープが…と疑問に思いませんでしたか?
作画用紙はテープを使い紙を貼り合わせ、画に合わせたサイズに作り替えることがあります。
そういった仕事の名残なので、アニメの制作資料ならではの異物といえますね。

4.シートにする

再生紙の抄造工程に戻ります。
今度は、[シクナー]と呼ばれる機械で、休ませた繊維の水気を切っていきます。

ロールに載せたあとに絞って水分を切るようなイメージです。
少し触らせてもらったのですが、もう既に「紙の素!」という感じでした。

こちらは[ポーチャー]。
流れるプールのような形をしており、ここで必要に応じて染料や薬品を投入したり、濃度調節などを行います。

そしてついに、次の工程からシート状に形成していきます。

ベルトコンベアーのような機械が回っており、原料を掬い上げるようにしてシートを作っていきます。
紙漉き体験をしたことがある方ならイメージがつきやすいのではないでしょうか。

原料がくっつきはじめました
だんだんと均一に

そしてここの空間、先程いた場所よりもかなり暑い!
このあとドライヤーで乾かす工程があるのですが、その熱によるものだそう。
乾燥の工程で作業を止めることなく常にラインが稼働しているので、相応のエネルギーを感じました。

5.乾燥、そして完成

ドライヤーで乾かしながら現れたシート

どんどんロールが大きくなっていきます。

完成間近

巻き終えたロールをクレーンで外して…

大きなラップで保護 そして…
ついに完成!!

バラバラだった紙がこんなに大きなロールに生まれ変わりました。

触らせてもらうと、ドライヤーで乾かしたばかりなのでまだほんのり温かい!
出来立てほやほやです。

―本日はありがとうございました。今回、抄造工程を通して見学させていただきましたが、改めて、再生紙の製造に関して、気を付けていることなどありますか?

池宮さん:何よりも一番、品質を大事にしています。いただいた原料をどれだけ無駄にせずに作りあげるか、というところですね。
今回は合計600kgの原料を使用しましたが、「じゃあ600kgの製品が出来るんですか」と言われたらそれは出来ない。どうしてもつくる過程で(溶かした繊維が)流出してしまうんですよ。先程水を大量に使用していると言いましたが、水と一緒に繊維が逃げてしまうんです。
ですので、作り手として、いただいた原料をどれだけ無駄にすることなく作れるかというのが肝になってくる。それがクオリティ・品質管理に繋がってくると思っています。

―セロハンテープの量などでも変わってきそうですね。

池宮さん:微々たるものかもしれませんが、紙にならないものの割合によっては目方が減ってしまったりしますね。印刷するものが同じであればほぼほぼ同量ができるかもしれませんが、そういうわけにはいかないですしね。

―他にアニメの紙ならではの特徴などあったりしますか?

池宮さん:文字(や画)残りですね。上質な紙は撥水効果(溶けにくい効果)がありますので、ミキサーの作業を怠ってしまうと粗く残ってしまいます。

今回のノートのように、元の紙の風合いが残っていたほうが味があって良い場合もあれば、製品によっては細かく綺麗にしないといけない場合もある…。
情報が残りすぎてしまうとそれこそ漏洩に繋がりかねないので、かなりデリケートな作業です。

裁断の工程も見学させていただきました

6.さいごに

我々が運び込んだあの紙が、最終的にあんなに巨大なロールになりました。
一連の作業をこの目で見られるなんて、なんだか感慨深いものがあります。

工場では、池宮さんの他にも沢山の従業員の方が作業していて、真剣にこの抄造に向き合ってくださいました。
改めて、環境に配慮した紙づくりを行う山陽製紙さんに再生紙をつくっていただけて良かったな、と感じた一日でした。
そんな皆さんの想いを受け取って、ついに再生紙が完成!

この再生紙を使用した2種のノートが買えるプロジェクトは
Makuakeにて絶賛実施中ですので
是非、お手に取っていただけると嬉しいです。
そして今回ご協力くださった山陽製紙株式会社の皆さまにも感謝申し上げます!本当にありがとうございました!

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インタビューに応じてくださった製造課・マネージャーの池宮大樹さんと、東京営業課の品川茂莉加さん。
お二人とも暖かい人柄で、快く迎えてくださいました。ありがとうございます!

工場に隣接するオフィスには、これまでの再生紙を利用した商品が綺麗に陳列されていました。

紙として使用する再生紙の他にも、古紙を使用したピクニックラグやテーブルマットなども制作しているそう。
表面に凹凸の入ったクレープ紙がお洒落な雑貨も多数あるので是非リンク先よりご確認ください!
RePePa


「捨てたくない! でも残しておけない! アニメ制作で使われた紙をもう一度使いたい!」
Makuakeにてプロジェクト実施!

運営:株式会社バリュープラス
実施期間:2024年8月21日(水)11:05 ~ 2024年11月17日(日)22:00 
目標金額: 500,000円

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