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千羽鶴からコーヒー豆まで!こんなものも再生紙にできる!

映像制作現場で使われている「紙」についてお話を聞くシリーズ第三弾です!

私たちは、デジタルアーカイブ後に廃棄されてしまう制作現場の紙を生まれ変わらせて、もう一度使えないか?と考え、再生紙の製造について調べることにしました。

再生紙をつくるとはどういうことなのでしょうか。様々な業界から出る古紙で再生紙を製造している山陽製紙株式会社に相談してみました。


―まず、基本からお伺いしたいのですが、「再生紙」とはどういったものなのでしょうか?

山﨑貴史さん(以下:山﨑) 一度使用された新聞紙やクラフト紙といった「古紙」を原料として作る紙のことを「再生紙」といいます。
一般的に紙を製造するには、木材をほぐして繊維にした「パルプ」を使用します。一方で再生紙を製造するには、その木材を使用せずに古紙を原料とした「古紙パルプ」というものを使います。ですので、資源の再活用や、木材の伐採の削減といった環境負荷の軽減を期待できるのが再生紙です。
ただ、一度使用された紙を基にしているので、木材のパルプを使うよりも、繊維が短かったり細かったりしますので、どうしても強度が弱かったり、「紙粉」(紙面に生じる粉末状の塵)が多く発生することから印刷時に支障をきたしてしまうといったデメリットもあります。
私どもでは、できるだけ環境負荷の低い薬品を添加して強度を補填するなど、工夫をしながら再生紙作りを行っております。

―山陽製紙の再生紙は、他社と比べてどういった特徴があるのでしょうか?

山﨑 弊社では長きに渡り「クレープ紙」という紙を作っています。クレープ紙とは、シワのついた紙のことで、主に米袋や、セメント袋の口縫いの部分に使われています。また、シワがついているため、伸びやすく、破れにくいこともあり、ラミネート加工を施して電線や鉄鋼を巻く、包装資材としても使われます。
弊社は2007年より「私たちは紙づくりを通してお客様と共に喜びを共有し、環境に配慮した循環型社会に貢献する」という経営理念を新たに掲げました。この理念に沿える紙づくりのため、工場で使用する電力は再生可能エネルギーを使用しています。また、製紙業はとても水を多く使う産業なのですが、排水する際には淡水魚が問題なく棲める水質まで浄化をするといったような点にこだわっております。「循環型社会に貢献する」という理念を掲げておりますので、環境負荷の高い漂白剤などを使用せず、茶色いクラフト系や白色系の古紙の配合を変えて色を調整するなどして、化学薬品による水質汚染を極力減らす等、様々な工夫をしています。
私たちは再生紙づくりのプロとして、自覚と責任を持って日々取り組んでおります。

―今までどのような古紙を再生紙にされてきたのでしょうか?

山﨑 昨今、世界的にもSDGsという機運も高まっており、さまざまな業界の方からお問い合わせをいただいております。
例えば、食品を扱うメーカー様から自社で出る抽出後のコーヒーかすを紙に抄き込み社用ツールを作りたいというご依頼や、モルトかすを紙に抄き込んでレストランのランチョンマットやコースターにご活用いただいたこともあります。
また繊維を扱う企業様からのご相談も多く、ジーンズの製造過程で発生するデニムの端材や、廃棄衣類を粉砕して紙に抄き込み、再生紙として循環しています。
あとは平和記念資料館などに寄贈される千羽鶴ですね。廃棄物として処分するのにはためらいのあるものかと思いますが、元の折り紙の色も何となくわかるような再生紙にさせていただきました。
このようにさまざまな分野、地域、業種の方からお問い合わせいただいております。原料に「異素材」を混ぜることになるので、元の素材の色味だったり風味を反映するという、ちょっと個性的な紙ができてきます。

―昨今はペーパーレス化をしていくという風潮も広がっているかと思います。一方で「紙ならではの魅力」というのはどのような点だと思われますか?

山﨑 私たちは製紙会社ではありますが、「資源を大切にする」というところに立ち返ったときに、やはり不要な紙の使用というのは控えたいですし、ペーパーレスを推進すべきということは間違いないかと思います。
一方で紙の持つ温かみや質感も、何ものにも代えられない価値があると考えています。特に私どもが携わっている再生紙に関しては、そのルーツの持つ背景やストーリーが色濃く反映されるので、そういったものを大切にしていきたいなと思います。
例えば、「ものを包む」とか「ものを書く」といった行為の中で、どうしてもペーパーレスにできないものは間違いなく残る。ただし、大量生産/大量消費というわけではなくて、長く大切に使ってもらえれば、紙の価値はこれからもあり続けると思っています。そういったストーリーや想いも込めて、紙作りを続けていければと思います。

―今回は、映像制作現場の想いやストーリーのこもった再生紙作りにご協力をいただきます。山﨑さんは、映像やアニメの制作現場について、どのようなイメージをお持ちですか?

山﨑 主観ですが、映像コンテンツを作られる業界の方々には、華やかな世界というイメージがあります。ですが、一つの作品が世に出るまでには、恐らく私たちが計り知れないくらいたくさんの人の手があり、見えない陰の努力がある業界なのだろうなと想像しております。どの業界もそうかもしれないですが、光がまぶしいとそれだけ裏方さんの努力があり、陰で頑張っている方がいるんだろうなと思います。

―近年、映像業界の労働問題に関する話題が続いていますが、環境問題についてはまだそこまでスポットが当たっていない印象があります。

山﨑 意識されずにまだ使えるものが処分されているということもあるのかと思います。他の業界でも、「今まで捨てていたものを新たな価値に変えられないか?」ですとか、それを「お客さんに喜んでもらえる新たな仕組みに変えられないか?」とか、少しずつご相談いただけることが増えています。映像業界でも、古紙を新たなプロダクトに変えて喜んでいただける機会が増えたら嬉しいです。

―今回、制作現場から出る古紙を再生紙にしたいという相談をさせていただきました。この企画への印象をお聞かせください。

山﨑 このようなお問い合わせをいただいて、私たちも新鮮に感じており、感謝を申し上げたいです。本来の役目を終えたものが、形を変えてお客様のもとに、あるいは必要とされるところに戻って、再び喜んでいただけるということは、私たちの理念にも重なりますし、こういった機会にご一緒させていただけて嬉しいです。
ぜひ形にして、一度きりではなく継続してお客様に喜んでもらえて、業界に対しても一石を投じられるような、前向きなアクションになればと思います。

―本日はありがとうございました!


「捨てたくない! でも残しておけない! アニメ制作で使われた紙をもう一度使いたい!」
Makuakeにてプロジェクト実施!

運営:株式会社バリュープラス
販売サイトURL:https://www.makuake.com/project/anime_note/
実施期間:2024年8月21日(水)11:05 ~ 2024年11月17日(日)22:00  
目標金額: 500,000円

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※プロジェクトの詳細は、SNS公式アカウントにて更新していきます。

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