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#3 岐阜県博物館|4Kタッチディスプレイで刀剣鑑賞⚔リアルを超える!?刃文まではっきりと【インタビュー】

◇サク読み◇

1.  岐阜県博物館で、鑑賞システム「刀剣鑑賞 自由自在」を公開
2. かんたん操作で超高精細な刀剣画像を拡大・縮小して楽しめる
3. 肉眼では見づらい刃文・やすり目といった細部まで確認できる

岐阜県博物館は、所蔵する刀剣コレクション64振(49振+追加15振)を、超高精細画像で鑑賞できる「刀剣鑑賞 自由自在」を公開しました。55インチの巨大タッチディスプレイに表示された刀剣画像を、自由自在に拡大・縮小して鑑賞することができます。現物の展示では見ることが難しく、鑑賞上級者でしか視認できなかった刃文や地鉄の見どころややすり目・鏨跡(たがねあと)といった細部まで楽しむことができます。

今回は、岐阜県博物館の刀剣担当で、本システムを企画した南本 有紀 様に導入までのお話を伺いました。

◇ ◇ ◇

——刀剣の現物展示に関する課題はありましたか?

南本:どこの博物館でも刀剣展示には苦労されていると思います。刀剣は鏡のように光を反射しやすく、照明の当て方によってはうまく見えないことが多いです。また、刀剣は平面ではなく3Dで、直線ではなくふっくらとした曲線があるため、展示ケース内で固定した状態で照明を全体に当てるのは非常に難しいです。刃文が見えなくてがっかり……という展示も結構多いようです。

日本刀は非常に鋭利で危険なため、来館者に手に持って鑑賞してもらうこともできません。以前、手に取ってみる鑑賞体験講座を行ったことがありますが、特にお子さんはすぐに手が出てしまい、これは難しいなというのがありました。刀剣を可動式の小さなケースに入れて鑑賞するという方法も試してみましたが、自由自在に動かすことは難しく、思ったほど効果的ではありませんでした。

刀剣鑑賞に習熟した人でなければ、見どころを十分に読み取ることが難しいというのも大きな課題のひとつです。

展示の様子(2022年撮影・ボイジャー)
展示の様子(2022年撮影・ボイジャー)

——「刀剣鑑賞 自由自在」について教えてください

南本:博物館の刀剣コレクションを超高精細画像で楽しむ鑑賞システムです。55インチの巨大ディスプレイに超高精細な刀剣画像を表示し、鑑賞者が画面をタッチして刀剣を自由に移動・拡大して細部まで見ることができます。

電子黒板をタッチして
自由自在に鑑賞することができる

——超高精細な刀剣画像の撮影はいつ頃から始まりましたか?

南本:2018年頃から始まりました。2018年に大規模な刀剣の展覧会を開催したのがキッカケです。特別展を開催する時には図録を作るんですけれども、写真が良くないと台無しになってしまいます。特別展では新規撮影が必要なお借りした作品も多く、魅力的な形で記録に残したいと考えていました。いろいろな方の情報をたどって、刀剣を専門に撮影しているカメラマンさんを見つけて依頼をしました。

その方の撮影技術が高く、写真の評判が非常に良かったです。図録にも力を入れて、通常よりも高品質な印刷で制作しました。A4のページに実物大で掲載したのですが、刀工の銘や「茎」(なかご:刀身の柄に収まる部分)の「鑢目」(やすりめ:茎に施した滑り止め)をハッキリと読むことができました。

刀剣画像は12,600 × 4,200ピクセル(5,000万画素以上)のものを表示している

また、刀剣の鑑賞をどうしようか……と悩んでいたときに、カメラマンさんから「大きなモニターに刀剣を写して、いっぱい拡大して見せれたらいいんじゃない?」とアイディアをいただきました。ちょうど博物館にタッチパネルとPCを搭載した電子黒板があったのとコロナ対策にまつわる給付金が出ていた時期だったので、新規事業として企画提案をしました。

——デジタルコンテンツの作成と公開の必要性は高まっていますか?

南本:来館しなくても提供可能な博物館サービスのニーズは高いと思います。博物館法の一部が改正になり、博物館の事業として「博物館資料のデジタルアーカイブの整備と公開」が明文化されました。今後、博物館はデジタルアーカイブに取り組む必要がありますが、学芸員が1人や職員が3人とかそういう小規模な館が多いので、公開まで持っていける余裕のある館は少ないのではないかと思います。

デジタルアーカイブはすごく関心の高い話題ですが、人手もお金も技術もなくて困っている……というのが現状です。

——「刀剣鑑賞 自由自在」導入後の成果はいかがでしたか?

南本:実物大以上の拡大表示ができて、場合によっては実物の鑑賞以上の効果がありました。例えば、「鏨運び」(たがねはこび:鏨とは金属に模様や文字を彫るための道具。刀工によって字形、書き順や鏨を入れる方向が異なるため、鏨をどう入れたのかというのも見どころのひとつ)といった肉眼では確認が難しい細部まで鑑賞できるのは利用者のみなさんに喜ばれています。電子黒板の操作も直感的で、初めて利用してしていただく方も上手に鑑賞していただくことができました。

鑑賞する刀剣を選択するメニュー画面
種別や区分で絞り込むことができる
刀剣を鑑賞する画面
この画面で拡大・縮小・回転の操作ができる

——今後の展望についてお聞かせください

南本:館外での「刀剣鑑賞 自由自在」の利活用を考えています。

例えば、刀剣を学ぶ場として、入札鑑定という刀剣の当てっこをするゲームのような鑑賞・勉強方法があります。刀剣の「茎」を隠して、刃文や刀身だけを見ていつの時代で誰が作った刀剣なのか……というのを各参加者が入札し合うのですが、実物の刀剣だと小さくて、後の解説のときに大勢で見づらいということがあります。「刀剣鑑賞 自由自在」を利用することで、みんなで一緒に刀剣を鑑賞するという使い方ができそうです。

また、岐阜県博物館では定期的に出張授業を行っています。GWや夏休みなど、県内のショッピングモール等商業施設で行います。そういったイベントで展示として「刀剣鑑賞 自由自在」を設置して、解説をしたり、実際に触って体験してもらうようなことができたら良いなと考えています。

インタビュー日:2024年6月19日

◇展示情報◇

岐阜県博物館・正面入口(2022年撮影・ボイジャー)

岐阜県博物館
〒501-3941
岐阜県関市小屋名1989(岐阜県百年公園内)
電話番号:0575-28-3111
https://www.gifu-kenpaku.jp/

刀剣鑑賞 自由自在
2023年2月11日〜 本館4階ロビー
https://www.gifu-kenpaku.jp/toukenjiyujizai/

◇SNS情報◇

◇メディア掲載◇


※本記事で紹介した展示の一部に、高精細Webギャラリー「Gaze-On」が活用されています。製品の詳細を知りたい方や展示アイデアでお困りの方は、ホームページのお問い合わせフォームよりご相談ください。

https://www.voyager.co.jp/products/go/