山男
弟はたくさんの趣味があって、その中の一つが山登りでした。
山登りに全く興味のない私は『一体何が楽しいの?』と聞いたことがあります。
弟の答えは
『登った時の達成感と山の美しさだよ!
登って行ったときにまさかこんなところに
と思うような場所に可愛い花が咲いているのさ!
その美しさはとても感動なんだ。
おれは美しい山が好きだ
だから、山や自然のなかの草や木、動物、すべての物に敬意を払うのさ』
ところどころに咲く可憐な高山植物が心を癒し、自然に触れることで元気をもらうんだそうです。
(写真は全て弟が撮った写真です。)
退職し治療に専念しているある日、先輩から送られてきた一枚の写真。
それは、就実の丘という秘密の場所から撮ったパノラマ写真でした。
その写真をベッドから眺められる場所に飾り、うれしそうにしていましたが『行きたいな・・・』小声でそう言ったのです。
無理だと本人は言いましたが、行きたいところ、気のいい場所にいく事は体にいいに決まっています。
高速道路を使って片道約三時間。
夫の運転で、その場所には何度も行きました。両親とも行きました。
もちろん呼吸器や、薬など万全の用意をしながらです。
休憩を何度も取りつつ、身障者が使える車椅子用のトイレの場所なんかもいつも確認しました。
健康な私たちでも疲れる道のりでしたが、行きたいところに行って、エネルギーをもらうことを優先させました。
何度も行ったのは、その場所に行くと必ず元気になったからです。
繊細な美しいものが大好きな山男は山々を眺め、自然と会話を楽しんでいるように思いました。