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ベルナルド・シウバ――フォア・ザ・チームの"小さな魔術師"
マンチェスター・シティに所属する個々の選手の生い立ちやそのキャリアを紹介する連載記事City Stories。第6回は、ベルナルド・シウバ。フォア・ザ・チームを貫く小さなテクニシャンの栄光の裏に隠された物語とは。
夢への第一歩を踏み出したリスボンの神童
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1994年8月10日、ポルトガルの首都リスボンに生まれたベルナルド・シウバは、幼少期からボールとともに過ごす時間が何よりも好きだった。家の前の狭い路地や近くの公園で友人たちと夢中になってボールを追いかけ、その小さな足元から生み出される技術は早くから周囲を驚かせていた。彼の家庭はサッカー好きで、ポルトガル代表の試合があるたびに家族みんなでテレビの前に集まり、熱心に応援していたという。その環境が、彼のサッカーへの情熱をさらに掻き立てることとなった。
7歳のとき、名門SLベンフィカのアカデミーに入団。ベンフィカの育成組織は世界的に評価が高く、未来のスター選手を多く輩出している。小柄なベルナルドは、同年代の選手と比べてフィジカル面で劣っていたが、技術と戦術理解度の高さでそれを補い、指導者たちの目を引いた。ドリブル時にボールがまるで足に吸い付くような感覚はこの頃から際立っており、まさに「天才少年」として育っていった。
しかし、プロの世界は甘くはなかった。トップチームへの昇格を目指す中で、彼の最大の課題となったのは「体格」だった。ポルトガルリーグの激しいプレースタイルの中で、小柄な彼が生き残るのは決して容易ではなかったのだ。
輝きを増した不屈のプレーメーカー
ベンフィカ――ぶち当たった壁と転機
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ベルナルドはベンフィカのユースチームで着実に成長し、2013-14シーズンにはBチームで活躍。しかし、トップチームには当時、攻撃的MFのポジションに実力者が揃っており、公式戦での出場機会はわずか1試合にとどまった。
それでも、Bチームでのプレーは非常に評価が高く、2013-14シーズンのセグンダ・リーガ(ポルトガル2部)では、卓越したプレーメーカーとして存在感を発揮。だが、トップチームでの活躍が見込めない中で、彼にとって新たな挑戦が必要だった。
モナコ――フランスでの飛躍、リーグ制覇と欧州の舞台
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2014年、ベルナルドはASモナコへレンタル移籍を決断。ここで彼の才能は一気に開花する。最初のシーズンからレギュラーとして起用されると、シーズン途中で完全移籍が決定。フランスのリーグ・アンで、彼はゲームメイカーとして重要な役割を担うようになった。
その後の2016-17シーズン、モナコはリーグ・アンでパリ・サンジェルマンの連覇を阻止し、見事に優勝。この年、ベルナルドはリーグ戦で11ゴール12アシストを記録し、キリアン・エムバペやラダメル・ファルカオと共にチームの攻撃を牽引した。また、UEFAチャンピオンズリーグでは準決勝まで進出し、その活躍が欧州のトップクラブの注目を集めた。
マンチェスター・シティ――名将の元でのさらなる成長
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2017年夏、マンチェスター・シティへの移籍が決定。ペップ・グアルディオラのもとで、彼はさらに成長を遂げることとなる。最初のシーズンからプレミアリーグの激しい戦いに適応し、シティの攻撃陣の一角として確固たる地位を築いた。
2018-19シーズンには、その才能が最大限に開花する。シティはプレミアリーグ、FAカップ、カラバオカップの国内三冠を達成し、彼自身も13ゴール14アシストを記録してクラブの年間最優秀選手に選ばれた。このシーズンの彼のパフォーマンスはまさに圧巻で、戦術的柔軟性とボール保持能力の高さがシティのスタイルに完璧にフィットした。
2022-23シーズンには、さらに歴史に名を刻む活躍を見せる。プレミアリーグ、FAカップ、チャンピオンズリーグを制し、クラブ史上初のトレブル達成に貢献。チャンピオンズリーグ準決勝では、レアル・マドリード相手に2ゴールを決めるなど、重要な試合での勝負強さも見せつけた。
ポルトガルの維持と誇りを背負った司令塔
ロシアW杯――悔いの残る初の大舞台
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ベルナルドの代表キャリアも順調に進んでいる。2015年にポルトガル代表デビューを果たして以来、彼は中盤の要として活躍を続け、2018年6月には2018 FIFAワールドカップ ロシア大会のメンバーに選出。大会では右ウイングのレギュラーとしてプレー。4試合全てに出場し、第3戦のみ途中出場となった。しかし、大きなインパクトを残すようなプレーは見せられず、チーム同様不本意な大会となった。
UEFAネーションズリーグ2018-19シーズン――勝利の美酒を味わうMVP
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2018-19シーズンのUEFAネーションズリーグでは、中心選手として活躍。
2018年10月のポーランド戦で、ベルナルドは1ゴール1アシストを記録し、3-2での勝利に貢献。2019年6月5日の準決勝スイス戦ではクリスティアーノ・ロナウドのハットトリックのうち2ゴールをアシスト。決勝のオランダ戦でもゴンサロ・ゲデスの決勝ゴールをアシストしており、ポルトガルの初代王者戴冠に貢献し、大会最優秀選手にも選ばれ、名実ともに代表の主力としての地位を確立した。
EURO2020 ――死の組での苦闘と早すぎる終幕
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ポルトガルはフランス、ドイツ、ハンガリーと同組という「死の組」に入る厳しい戦いを強いられた。ベルナルドは全試合に出場しチームを支えたものの、決勝トーナメント1回戦でベルギーに敗れ、悔しい結果となった。
カタールW杯――躍進するもモロッコに涙
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2022年のカタールW杯では、ポルトガル代表の中心選手として出場。決勝トーナメント1回戦ではスイスを6-1で圧倒するも、準々決勝でモロッコに敗れた。それでも、ベルナルドのプレーは世界中から高く評価された。
EURO2024 ――躍動するも再び涙を流す
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グループステージ第2戦のトルコ戦で先制ゴールを決め、MOMに選出された。メンバーを入れ替えた第3節のジョージア戦は休養となったものの、その他の試合では準々決勝までをフル出場。右ウイングを主戦場に攻撃陣をリードしたが、準々決勝でフランスに敗れた。しかし、ベルナルド・シウバは、ポルトガル代表のキープレーヤーとして、再びその実力を証明した。
サッカーだけではないベルナルド・シウバの魅力
彼の魅力はピッチ上だけにとどまらない。家族との絆を大切にし、特に母親との関係は深いことで知られる。試合後には必ず母親に連絡を入れ、彼女の言葉を励みにしているという。
また、チームメイトからの信頼も厚く、試合中だけでなく、日々の練習でも常に周囲を鼓舞する存在となっている。さらに、慈善活動にも積極的で、ポルトガル国内の貧困層支援のための活動にも取り組んでいる。
ベルナルド・シウバはどこへ向かうのか
これからの彼の目標は、さらなるタイトル獲得とポルトガル代表での栄光だ。シティでは再びチャンピオンズリーグ優勝を、代表ではネーションズリーグ以来の栄冠を目指している。ベルナルド・シウバの物語は、まだまだ終わらない。