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ルベン・ディアス ―― シティの防壁となった男
マンチェスター・シティに所属する個々の選手の生い立ちやそのキャリアを紹介する連載記事City Stories。第4回は、ルベン・ディアス。頼れるDFリーダーの栄光の裏に隠された物語とは。
幼少期とサッカーとの出会い
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ルベン・ディアスは1997年5月14日、ポルトガルのアマドーラで生まれた。サッカーが盛んな環境で育ち、幼い頃から兄とともにボールを蹴る日々を送っていた。9歳のとき、親戚の紹介で地元クラブCFエストレラ・ダ・アマに入団。当初はフォワードとしてプレーしていたが、徐々に守備の才能が認められ、センターバックへと転向した。
11歳になると、ポルトガルの名門ベンフィカのアカデミーのトライアウトに合格。加入当初は体格が小さく、ミッドフィールダーとしてプレーすることもあったが、成長とともに本来のセンターバックのポジションに定着した。ユース時代からリーダーシップを発揮し、各カテゴリーでキャプテンを務めるなど、早くからチームの精神的支柱としての役割を担っていた。
2015年、18歳でベンフィカBに昇格。ポルトガル2部リーグでプロデビューを果たし、2シーズンでリーグ戦54試合に出場。2016-17シーズンにはUEFAユースリーグで決勝進出を果たし、ヨーロッパでも注目される存在となった。
クラブでのキャリア――リーダーシップで守備を再構築する柱
SLベンフィカ――若き才能が開花した守備の中核
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2017-18シーズンにベンフィカのトップチームへ昇格し、9月16日のボアビスタ戦でプリメイラ・リーガデビューを果たした。若手ながらも冷静なプレーと強靭な守備力で瞬く間にレギュラーに定着。UEFAチャンピオンズリーグのマンチェスター・ユナイテッド戦でも存在感を示し、シーズン終了後にはプリメイラ・リーガ年間最優秀若手選手賞を受賞した。
2018-19シーズンにはベンフィカとの契約を2023年まで延長。守備の中心として活躍し、ジョアン・フェリックスら若手の台頭とともにチームをリーグ優勝へ導いた。2019-20シーズンもリーグのベストイレブンに選出され、ポルトガル国内屈指のセンターバックとして評価を高めた。
2020-21シーズン開幕直後、移籍が噂される中、モレイレンセ戦でゴールを決めた後、試合後に涙を流し、クラブへの愛情を示した。数日後、イングランドの強豪マンチェスター・シティへの移籍が発表された。
マンチェスター・シティ――世界屈指のリーダーへ成長した守備の要
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2020年9月28日、マンチェスター・シティに移籍。移籍金は6800万ユーロ(約82億円)で、ニコラス・オタメンディがベンフィカへ移籍する形となった。加入直後からグアルディオラ監督の信頼を獲得し、プレミアリーグの強度に即座に適応。守備を安定させ、シティの守備力を飛躍的に向上させた。
1年目でプレミアリーグ優勝、EFLカップ制覇、UEFAチャンピオンズリーグ準優勝に貢献。個人としてもFWA年間最優秀選手賞やプレミアリーグ年間最優秀選手賞を受賞し、移籍初年度から世界屈指のセンターバックとしての地位を確立した。
2021-22シーズンもディフェンスリーダーとしてチームを支え、プレミアリーグ連覇に貢献。2022-23シーズンにはヨシュコ・グヴァルディオルが加入したが、ディアスは変わらず守備の中心として活躍し、クラブ史上初のトレブル(プレミアリーグ、FAカップ、UEFAチャンピオンズリーグ制覇)を達成。
2023-24シーズンもプレミアリーグ4連覇に貢献し、現代最高のセンターバックの一人としての評価を不動のものとした。
代表でのキャリア――盾を象徴する存在
2017 FIFA U-20ワールドカップ――未来を感じさせたポルトガルの若き守護神
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ルベン・ディアスは若くしてポルトガルの世代別代表に名を連ね、特に2017年のFIFA U-20ワールドカップでは主将としてチームを牽引した。グループステージではザンビア、コスタリカ、イランと対戦し、1勝1分1敗で決勝トーナメントに進出。ラウンド16では韓国を1-0で下し、準々決勝へと駒を進めた。
準々決勝のウルグアイ戦では120分間を0-0で戦い抜いたが、PK戦の末に敗退。この大会を通じてディアスは守備のリーダーとしての資質を示し、将来のポルトガル代表の中心選手になることを予感させた。
2018 FIFAワールドカップ――初の大舞台での経験を積んだ大会
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2018年3月チュニジア戦でポルトガルA代表デビューを果たし、同年のFIFAワールドカップ・ロシア大会では、23人のメンバーに選ばれたものの、本大会での出場機会はなかった。当時のポルトガルはベテランのペペとジョゼ・フォンテが主力センターバックを務めており、ディアスは控えに甘んじることとなった。
この経験は彼にとって貴重なものとなり、大舞台での戦い方やベテラン選手から学ぶ機会を得た。その後、ポルトガル代表はウルグアイに敗れ、ラウンド16で敗退した。
UEFAネーションズリーグ2018-2019――歓喜を味わい、貴重な経験を積んだ大会
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ワールドカップ後、ポルトガル代表の世代交代が進み、ディアスはペペと並ぶセンターバックの主力として定着した。特に、2018-19シーズンのUEFAネーションズリーグでは圧倒的なパフォーマンスを発揮。
グループリーグではイタリアやポーランドを相手に無失点試合を記録し、チームの守備を支えた。そして迎えた決勝ラウンド(ファイナルズ)では、準決勝でスイスを3-1で破り、決勝へ進出。決勝のオランダ戦では、堅実な守備と冷静なビルドアップで、世界屈指のアタッカー陣を封じ込めた。
この試合のパフォーマンスが評価され、ディアスはマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。ポルトガル代表は1-0で勝利し、初代ネーションズリーグ王者に輝いた。
UEFA EURO 2020――苦戦の中でも守備の中心として奮闘
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EURO 2020(2021年開催)では、ポルトガルの主力センターバックとして全試合に出場。しかし、グループステージではドイツ戦でオウンゴールを献上するなど、苦しい展開が続いた。
ポルトガルはグループFを3位で通過したが、ラウンド16ではベルギーに0-1で敗れ、大会を去った。この大会での経験を糧に、ディアスは守備の課題を修正し、さらなる成長を遂げることとなる。
2022 FIFAワールドカップ――世界にその存在を知らしめた堅守のリーダー
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カタールで開催された2022 FIFAワールドカップでは、ポルトガルの守備の要として出場。グループステージでは韓国戦を除く2試合にフル出場し、ポルトガルの決勝トーナメント進出に貢献した。
ラウンド16ではスイス相手に6-1の大勝を収めたが、準々決勝のモロッコ戦で試練が訪れる。
モロッコのユセフ・エン=ネシリに決勝点を許し、ポルトガルは0-1で敗退。この試合では、モロッコのカウンター攻撃と空中戦に苦しみ、ディアスも十分な対応ができなかった。大会後、多くのファンやメディアが「ポルトガルのセンターバック陣の課題」を指摘することとなった。
UEFA EURO 2024――ポルトガルを牽引する闘将
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EURO 2024(ドイツ大会)では、ペペと再びコンビを組み、ポルトガルの最終ラインを支えた。39歳のペペはベテランとして経験を活かし、ディアスはリーダーとしてチームを統率。グループステージでは安定した守備を見せ、3試合で1失点という堅守を披露した。
ラウンド16ではスロベニアと対戦し、PK戦の末に勝利。しかし、準々決勝ではフランスの強力な攻撃陣を相手に耐え抜くも、PK戦で敗退。試合後、ペペが代表引退を発表し、ディアスが正式にポルトガル代表の守備のリーダーとしての役割を担うことになった。
ルベン・ディアスの代表での未来
2026 FIFAワールドカップでは、ポルトガル代表のディフェンスリーダーとしてチームを率いることが確実視されている。ペペの引退により、ディアスが新たなディフェンスの大黒柱となり、若手選手とともに新時代のポルトガルを築いていく。
また、彼のリーダーシップは代表だけでなく、クラブでも発揮されており、今後も世界屈指のセンターバックとしてさらなる高みを目指していくことは間違いない。
類稀なるリーダーシップ
ディアスはプロ意識の高さとリーダーシップに定評がある。幼少期から周囲を鼓舞する姿勢が目立ち、ベンフィカのユース時代からキャプテンを任されることが多かった。シティでも加入2年目でキャプテンマークを巻いたことがあり、チームメイトからの信頼も厚い。
家族との関係も深く、幼少期から兄の影響でサッカーに打ち込んできた。プロになってからも家族を大切にし、試合後には両親への感謝を述べることが多い。
さらなる高みへ
ルベン・ディアスは現在26歳(2024年時点)。センターバックとして全盛期を迎える時期にあり、今後もマンチェスター・シティとポルトガル代表の守備の要として活躍が期待される。
2026年のFIFAワールドカップでは、ポルトガルを悲願の優勝に導くことが期待される。クラブレベルでは、プレミアリーグ5連覇や2度目のチャンピオンズリーグ制覇を目指し、さらに高みを目指していくだろう。