見出し画像

[UE5]”恐竜少女カプア”ライティング環境の紹介



はじめに

Volcaのテクニカルアーティスト"Riku"です。
恐竜少女カプアでは、Unreal Engine を使った質感・ライティング環境の制作を担当しています。

"恐竜少女カプア"のライティングは間接照明を重視し、
シャドウ(Shadow)が黒くならないように工夫しています。
ディレクショナルライト(Directional Light)を軸に、
スカイライト(SkyLight)と補助となるレクトライト(Rect Light)を組み合わせたライティングの仕組みをこの記事で紹介します。

リアルタイムレンダリングにおけるライティングの参考になれば幸いです。

恐竜少女カプアのライティング環境作成

1. 方向性確認

実作業に入る前に、デザイン画の分析は重要です。

デザイン画と参考画像からのイメージ:

  • 背景:
    暑く湿度の高い恐竜時代を舞台としている
    環境は植生が豊かで、水が豊富にあり、
    生き生きとした自然が広がっている

  • 大気:
    暑く湿気の多い気候により、空気がより密度の高い状態に感じられます。
    青みがかった空には大きな白い雲が浮かび、
    日光は少し暖色寄りの色調

  • 地形:
    熱帯のジャングル+渓流+遠景に活火山

  • 植物:
    広葉の熱帯植物、巨大キノコ、巨大なシダ植物が共存

以上を踏まえ、今回のライティング環境を下記の手順で作成していきます。

2. ライティング用アクターの配置

  1. Directional Light

  2. SkyLight と SkyAtmosphere

  3. VolumetricCloud

  4. PostProcessVolume

上記の Actor を Level に配置します。

3. 空色の調整

青色寄りの空に変更する方法は以下の手順で行います:

  1. SkyAtmosphere を選択し、詳細パネルを開きます。

  2. Ground Albedo を白色に設定
    地面の反射色を白色にすることで空がより明るくなります。

  3. Rayleigh Scale の値を変更します
    この係数を増やして、青い散乱効果を強調します。
    今回は0.04にしています。

  4. Mie Scattering Scale の値を少し下げます。
    光の散乱が減少し、より澄んだ青空の効果が得られます。
    今回は0.002にしています。

  5. 大気の色調整
    Rayleigh Scattering で青寄りの色を指定し、
    全体の大気の色合いを調整します。
    自然な青空になるよう微調整を行います。

  6. 太陽光の色を調整する
    太陽光(Directional Light)の Light Color を少し暖色寄りに変更します。

4. 雲の調整

  1. Cloud Materialの設定を開く
    VolumetricCloudアクタに割り当てられた雲のマテリアルを選択し、
    その詳細を編集します。

  2. 雲の密度の調整
    BaseNoiseExpの数値を上げると雲の面積が小さくなります。
    デフォルト値は雲が大きすぎるため、
    今回は値を上げて20にしています。
    ErosionExpを6.0から1.0に変更、大気高層の雲を減らし、
    全体の面積をさらに減らします。

  3. 雲の厚みの調整
    BeerPowderを上げることで、雲をより白く密度の高い見た目にします。
    今回は35にしています。
    BeerPowderPowerを0.6にしています。

  4. 雲の減衰(Extinction)の設定
    ExtinctionScaleを下げることで、光の吸収量が減らせます。
    これでより白い雲にすることができます。

  5. 雲のディテール調整
    ErosionNoiseScaleを0.00001から0.000015に変更、ノイズの細かさを上げることでディテールを足します。

5. 影が暗くならないように間接照明・空の反射光の調整

  1. SkyLightのIntensity Scaleを調整
    Intensity Scaleの値を増やすことで、
    間接照明の強度を高めることができます。
    初期値は1.0です。今回は3.0にしています。

  2. Directional LightのIndirect Lighting Intensityを増やす
    今回は1.5にしています。

  3. Post Process Volumeでの微調整
    Post Process Volumeの設定でGlobal Illuminationを調整し、
    間接照明の明るさと全体のバランスを整えます。

6. キャラクターに補助用ライト

RectLightでキャラクターの顎など部位に
ピンポイントでライティングを行っています。

手順は下記のようです:

  1. シーンにRectLightアクタを追加します。
    照らしたいキャラクターの部位に合わせています。
    顎や腹など、Keyライトが当たりにくい部分をピンポイントで照らすイメージです。

  2. Intensity(強度)を調整する。
    気持ち程度で、あまり目立たないように調整します。
    今回のKeyライトはIntensity 8.0cd の太陽光なので、
    補助ライトの Intensity は 0.5cd にしています

  3. Light Color(光の色)を設定する
    Key ライトの色に合わせて、キャラクターの発色が濁らないように調整します。
    今回は5 500k の自然色にしています。

  4. Source WidthとSource Heightの調整
    光源のサイズ調整で光の広がり具合を設定します。
    キャラクターのサイズに合わせて調整しています。
    今回キャラクターの身長は140センチぐらいなので、補助ライトは32*32センチにしています。

  5. 影の設定(Cast Shadows)を無効にする
    場合によりますが、今回はShadowがないほうが望ましいので、Offにしています。

  6. Attenuation Radius(減衰半径)を調整
    ライトの減衰半径が大きいままだと、補助ライトの存在がばれやすくなります。
    今回は小さめの200にしています。

終わりに

調整後の様子:

今回の記事は以上となります。最後までご覧をくださりありがとうございます。
今後の記事では、「Constraint機能を活用した効率的なキャラクター用ライティング制作フロー」について紹介する予定です。

いいなと思ったら応援しよう!