『倫理資本主義の時代』の核心 マルクス・ガブリエルの倫理観と市場観
私たちの人間性に訴えてくる「道徳的事実」がある
例えば、かつて奴隷制の邪悪さは、奴隷の人々にとって、自らの苦しみによって明確に示される事実だった。しかし長い間、奴隷ではない人々や奴隷を持たない社会には、必ずしも認識されていなかったのである。著者はこれを、奴隷制は人を苦しめる=悪であり廃止すべきという「道徳的事実」が、明らかになっていく過程(道徳的な進歩)であると考える。道徳的事実とは「奴隷制を廃止すべき」のように、人類共通の人間性に根ざしたとき、ある行為を「するべき」または