AIが作った曲の著作権は誰のもの?AIに学習させたくない権利は認められるのか??
TBSラジオで毎週金曜日8時30分~午後1時まで放送の「金曜ボイスログ」
シンガーソングライターの臼井ミトンがパーソナリティを務める番組です。
このnote.では番組内の人気コーナー
「臼井ミトンのミュージックログ」の内容を書き起こし。
ちなみにyoutube版では動画も公開しているのでそちらも是非。
アーティストによる集団訴訟
今年に入ってにわかにAI関連のニュースが増えて来ました。ChatGPTという、対話型のテキスト生成ツールが一般向けに公開されたということが非常に大きいと思います。そんなAI関連のニュースの中で一つ、非常に興味深いニュースがあります。音楽ではなくて、絵画関連のニュースなんですけど、アメリカはサンフランシスコ在住のアーティスト(画家)が、集団訴訟を起こしたんです。
どんな訴訟かというと、画像生成のAIサービスを提供する会社を相手取って、著作権侵害で訴えたそうなんです。どういうことかと言いますと、AIって、人工知能だから、そのAIに何をやらせるにしても、まずは、人間がAIに色々なことを学習させなければならないわけじゃないですか。
例えば、画像生成をしてくれるAI。ピカソ風に馬の絵を描いて!って頼んだらその通りに絵を描いてくれる人工知能を作るためには、当然、過去のありとあらゆる絵画作品やイラスト、写真や画像をまずそのAIに覚えさせる必要があるんですね。その、AIを学習させる際に用いた絵画、これの著作権の扱いってどうなります??って話なんです。
つまり、絵を描いてる本人からすれば、AIの開発元が「勝手に」自分の絵をAIに見せて、学習させて、その結果AIが絵を描けるようになり、その会社がお金を儲けるっていうのは、ちょっと納得出来ないですわけですよ。
有り体に言って、AIにパクられてるわけですから。なんでわざわざパクられるためにAIに自分の作品を見せなきゃなんないんだよって話です。
音楽業界にもワンクリックで作曲してくれるサービスが…
このニュース自体は絵画の世界での話でしたけど、これってそっくりそのまま音楽にも当てはまるんです。というか、小説、映画、その他ありとあらゆる著作物にも影響してくる非常に困った問題。
実は、音楽もね、AIがかなりのレベルでもう作曲出来ちゃうんですよ。
ワンクリックで曲を作ってくれるサービスっていうのは実際に既に始まっていて。日本で一番有名なのは、FIMMIGRM(フィミグラム)っていうサイト。
キーと、テンポと、ジャンルを指定するだけで、ワンクリックで曲作ってくれます。月額1000円前後くらいで、20曲とか。しかも、商用利用も可能で、サイトで作った曲を自分の曲としてリリースしても全然問題ないそうです。もう現実としてそういうところまで来ちゃってるんです。
曲調は、ダンスとか、エレクトロニカとか、テクノとか、やっぱり電子音楽系が強いみたいで、サイト見てみたら、今のところはまだNeil Young風とか、The Band風とかは作れないみたいだけど。
でも本当に冗談抜きで、近い将来間違いなく具体的なアーティストを名指しでその作風で作ってもらうってことだって、可能になるはずなんですよ。
じゃあ、Neil Young風って指定してAIが曲を作ったとして、生成されたその曲自体はNeil Youngが作ったわけではないにしても、Neil Youngの曲をめちゃくちゃ聴かせて学習させるわけだし、その曲の著作権って一体どうなるんだろうね、っていう話なわけです。
AIに学習させない権利は主張できるのか?
AIを学習させるために収集したデータに対する著作権使用料が、通常のレコードを聴くのとは別のものとして支払われるべきなのか、っていう。
多分、「Neil Young風」っていう風に具体的なアーティスト名を出してAIサービスを提供しちゃうと、Neil Youngに少なくとも名義使用料は払わなきゃならなくなるので一般名詞的にボカして指定する感じになるのかもしれないですね。そもそもそれ以前に、AIの学習させるのに自分の曲を勝手に使わないでくれ、というアーティストがいたとして、その希望は聞き入れる否か、という論点もありますよね。
まぁ、さっきも言ったように「なんでAIのアルゴリズムのために自分の作品が使われなくちゃならないんだ」っていう釈然としない感情は当然、アーティスト側にはありますから。でも冷静に考えてみれば、例えばThe Beatles風だ、Motown風だ、なんていうのは、これまでもごくごく日常的に、音楽業界内で当たり前に行われて来たことなんです。
AIがそういうことをやるっていうとなんか不気味な気がしますけど、そもそも、作品を作る人っていうのは、絶対に先輩のアーティストの影響を受けているわけです。みんな自分にとってのヒーローの影響を受けてるんですよ。もちろん僕だってそうだし、有名なところで言えば例えば大滝詠一さんがいろんなアメリカンポップスのメロディやフレーズを上手に引用して曲を作っているのだって、AIが大量のデータを学習してその特徴をアウトプットしていることと、行為の中身は変わらないと思うんです。
というか、そもそもそういう人間の当たり前の営みを人工的に再現するのがAIですからね。ただ唯一違うのは、「そこに愛はあるんか?」っていう部分なのかな。でも愛があったらパクって良いわけでもないし、実際音楽業界内では愛のないパクリも当たり前に存在しますから、ただでさえこのあたりは線引きがかなり難しいわけですよね。オマージュとかインスパイアと、パクりの線引きが。
そこにAI絡んでくるんだから、まぁややこしい。人間が作ったって、全ての作品はすべからず過去の作品の影響下にあるし、だからこそ文化は継承されて来たわけだけど、それを感情や感性を持たない人工知能がやってるっていうのが、お金とか著作権の問題以前に、なんか気味悪いし、いまいち釈然としないっていう話なんですよね、多分。
今後ね、個人情報なんかも含めて、AIが学習するデータの範囲をどう定めるのか、AIに自分の情報や作品を学習されたくない、っていう、人類にとって新しい権利をどう守っていくのか、っていう議論がこれから進むことになるとは思うんですけど、音楽やアートに関して言えば、本来はアーティストとして作品をリリースしている以上、例えば「俺の作風をパクらないでくれ」っていう主張はある意味で結構無理のある主張だったりするんですよ。
だって、むしろ真似されてナンボの世界なんで。
The Beatles風のアレンジ、とか、Motown風のアレンジ、とか。
まぁ絵画で言うならPicasso風だMatisse風だ、Monet風だ、とか。
スターになる人っていうのは、裏返せば、つまり真似したくなるようなアイコニックな要素を持っている、ってことでしょ。
当然のことながらAIのアルゴリズムにもどうしても入って来ちゃうよね。
自分の作品を、生身の人間にはたくさん聴いて欲しいけど、AIには絶対に聴かせたくない、っていうような主張が、果たしてアーティスト側の権利として認められるような法整備が今後進むのか。
あるいは、Neil Young風に生成された曲の印税の何%かが入る、とか。
そういう解決策があり得るのか、・・・いや、あり得ないだろうなぁ。
とにかくアートとAIの関係は課題が山積み。金曜ボイスログでも著作権関係の専門家なんかを呼んで話聞きたいトピックですよね。
まぁ作曲だけじゃなくて、演奏とかミックスとかも、誰々風って言うのが今後出てくると思いますけど、せっかくなんで今日はNeil Youngを。まぁ、「AIにこのフィールが出せるもんかよ、やれるもんならやってみろよ!」って感じですけどね。お聞きください、Neil Youngで、「Walk On」
金曜ボイスログは毎週金曜日8時30分~午後1時にて放送。
AM954/FM90.5/radikoから是非お聞きください。