父親の一言で、“声優を仕事”にしていこうと本格的に考える
「声優になる!っていっても、何をすればいいんだ???」
志高く意気込んだのは良いものの、面接をするのかテストを受けなくてはいけないのか、全くわかりませんでした。高校教師をしている父親に相談したところ
「オープンキャンパス行けよ」
と、言われたのでとりあえず行ってみることにしました。
「あ、大学じゃなくて専門にしてな。お姉ちゃん(が大学に行って)で無くなったから。奨学金の話も聞いてこい」
やったぁ!声優になるのはOKなんだ!なんて思っていたのも束の間。
「でも、食えなくなったって言って帰ってきても食わしてやらないからな」
この一言で「あ、夢じゃなくて仕事にしなきゃいけないんだ」と喝を入れられた気がしました。
声優科がある専門学校学校に手当たり次第毎週、毎週見学にいきました。友達と遊ぶこともせずにとにかく行きまくった結果、通うことになる専門学校には入学前に98回行ってましたね。
何をそんなに見てたの?と言われるんですが、見てたんじゃなく体験レッスンを受けに行ってたんです。何回でも来ていいよと言われていたので。どうしても早く声優になりたかったから。
前回「好きな子が、声優になると言ったから」
【声優適正86%‥?】
結果、渋谷にある演劇学校へ行くことになるんですが、渋谷だけでも何校も演劇系の専門学校があるので見学に行くのだけでも一苦労。声優養成所に通っていた高校2年生のとき、土日はほぼ毎週オープンキャンパスに行っていました。
「何を基準に選んだらいいんだ?」
どんな専門学校があるのかは調べれば出てきますが、選ぶ基準に関しては個人の感想なので、自分で作るしかありません。
学校選びをしていたときに見ていたポイントは2つ。1つ目は現役で活躍している出身者がいるか?2つ目は学校のお手洗いがキレイかどうか?
1つ目の理由はそのまんまの意味です。現場で活躍している人はいるのかどうか?個人の頑張り次第とはいえ、声優のお仕事を(現役で)やっている人がいなければ、「教え方に問題があるのでは?」と考えていたからです。
こんな事を言ったら怒られてしまうかもしれませんが、学校はビジネスです。良い所をたくさん言って、入学してもらおうと説明(説得)してきます。
良い所だけを聞いて「いいかも!」と思わずに、わからないことがあれば聞いて、疑問点をゼロにするくらいたくさんのことを聞いてください。
2年(大学であれば4年)通う場所です。
ここで“基礎”が作られていくと言っても過言ではありません。ちょっとの疑問でもいいです。もう一度言います。わからないところは、たくさん聞いてください。
あ、もう1つ見ているポイントがありました。ごめんなさい。
“絶対に声優になれます。あなたには才能があります”
と言ってきた学校は無条件に選択肢から外しました。理由は、そんなことわかるわけがないからです。僕がひねくれていたからとかではなく、絶対に声優になれる方法や才能があるかどうかわかる手段があれば、学校なんていらないんですよね。自分でやればいい。
どこの学校とは言いませんが、(若干名前は変えていますが)声優能力診断なるものがありました。要は、声優としての素養があるかどうかをパーセンテージで出したものです。
「86%」
僕に出された数字。僕はすっかり驚いてしまいました。なぜか?入学事務局の方と話しただけで(演技をしたりナレーションを読んだりしていないのに)この数字が出たからです。僕は素直に
「え、すみません。何を見て数字を出してくださったんですか?」
と、聞きました。
『声も良いし聞き取りやすい。養成所に通っているんですよね?だからです』
声の良さや聞き取りやすさはまだしも、話しただけで演技力があるかどうかなんて、どうやったら分かるのでしょうか。今思えば(意地悪いですが)1%の人はいたんですか?なんて聞いてみてもよかったですね。
そこの学校さんは「私たちが必ず声優にさせます」とも言っていました。正直、怖いです。みんななれているなら、なれなかった人たちは何をしているの?どこへ行っちゃったの?
ちなみにその学校さんの「声優」の定義は食えているかどうかではなく、一度でも声を当てた経験があるかどうかでした。たしかにそれなら“声優”を名乗れます。数字以外の情報もしっかりと調べましょう。
【読みの力はお手洗いの使い方から学ぶ】
そしてもう一つのポイント。お手洗い。なんでお手洗いなの?と思われた方もいらっしゃるかと思います。これは独断と偏見ですが
生徒の人柄がお手洗いの使い方に出ると思っていたからなんです。
清掃員の方がいらっしゃるので定期的に清掃はされています。でも当たり前に、清掃されていない時間もありますよね。手を洗った後に使う紙タオルはちゃんとゴミ箱に入っているのか?鏡にベタベタ触っていないか?個室はキレイに使われているか?
お手洗いは個人的な空間になりがち。いつでもいい顔をしていなさいということではなく、人に見られないところでも、次の人のことを考えられているかなんです。嫌じゃないですか?使いたいときに誰がしたのかわからないもので汚れていたら。
これ、お芝居やナレーションにも繋がってくる話しなんです。自分が用意してきた事を読めれば、考えてきたパフォーマンスができればそれでいいのか?もちろん、ダメです。
話しかける相手(聞いてくれる視聴者さん)がいるからこそ、そこで初めて“話し”が成立します。誰にも聞かれていない、自分勝手な話は話ではなく“独り言”です。僕らは独り言を鍛えるために学校や養成所に行くわけじゃない。
“聞いてもらう喋り”
を学びにいくんです。これを身につけるには、直接的なレッスンも大事なんですが、“芸は日常生活”から得られることの方が多いんです。むしろ、こっちの方が大事。そのためにお手洗いを見ていたんです。
養成所、学校、個人レッスンやワークショップ。今では色々なところで芸を学ぶ手段はありますが、どこか決めきれない場合「出身者」と「施設の清潔感」を基準にしてみてはいかがでしょうか。
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ナレーター
有野優樹(ありのひろき)
正直に言います。話を上手くするため、映画を見たり本を読んだりのお金に当てます。直近、島に暫く住む予定なのでそちらの生活費に。