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怪談短編集「ドレスを着た女」

「ドレスを着た女」

この話は、石田さんの妹さんが体験したお話。

高校卒業をきっかけに、群馬の実家を離れ東京で暮らす事になった石田さん。自分が使っていた部屋は妹が使う事になり、こりにこって模様替えをした結果、ベッドの横に窓がくる状態になった。

オレンジ色の常夜灯に切り替え、眠りにつこうとしたある夜。横を向くと、数センチ開いているブラインドから闇に染まった空が見えた。そのうち、瞼が開いたり閉じたり船を漕ぎ始める。数センチ開いているブラインドの隙間。

見慣れたベランダを、白いドレス姿の女が通り過ぎて行った。

ベランダがあるとはいえ、人が通り過ぎていくのは不可能だ。しかも白いドレスを着ている。ブラインドを下までピッタリと閉め、布団を頭までかぶり窓を背にして震えながら眠りについた。


「わかりません」


いきつけのカフェで店員さんと怪談話をしていたとき、隣に座った男性から
「今、怪談って言いました?いきなりすみません。実は親父から“うちに、心霊写真あるんだけど見る?”と言われたことがありまして」
と話しかけられたので、詳しく聞いてみることに。

その男性のお父様が、新婚旅行に行ったときのお話だという。

ネガフィルムのカメラを持ち歩き、旅行先や宿泊施設の写真を撮って思い出を残した。新婚旅行も無事に終わり、家に帰ってフィルムを現像する。

“一枚、撮った覚えのない写真があった”

ロッカーが並ぶ更衣室のような場所。真ん中に一人の男性が、赤富士が描かれている大きな額を持って立っている写真。

「これの何が心霊写真なの?」
「立ってる人。額で顔が見えないけど、これ、死んだ親父なんだよ。仮にこの写真を撮っていたとしても、行ったときにはもう亡くなってたから映るのは変なんだ」

男性は僕に

「亡くなった人が写っているという意味では心霊写真なんですけど、赤富士って縁起物だから、もしかしたら祝ってくれたのかと思って。これ、良い話なのか怖い話なのかどっちだと思います?」

と聞いてきたので「わかりません」と答えた。


「ひとりがこわい」


秋葉原のカフェに勤める女性、Iさんの体験談。

小学校一年生頃、一緒に寝ていた両親と離れひとりで部屋で眠ることになった日のこと。眠りつくまで喋ってくれていた母親の声が今日から聞こえなくなる。心細いが一人で寝れるようにするための一歩だ。布団をかぶり目を瞑る。

タッ、タッ、タッ。

部屋に近づいてくる足音。ひとりなのを心配してくれて、両親のどちらかが来てくれたのかもしれない。

タッ‥。タッ‥。タッ‥。

期待とは裏腹に、足音は離れていった。扉が開いた音はしなかった。来てくれたわけではなかったのかと残念に思う。するとまた

タッ、タッ、タッ。
タッ‥タッ‥タッ‥

どうやら、部屋の前を行き来しているらしい。

タッ‥タ。

扉の前で足音が止まった。足元にある扉が開き、廊下の光が入ってくる。

「やっぱり来てくれたのかな」

顔を見ようと上半身を起こしたとき、右から左に足首より下色のない足がゆっくり歩いて行くのが見えた。

一人で眠るのが怖くなったが、両親の部屋に行こうとは思えなかった。足が向かった先は、両親の寝室だったから。


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ナレーター
有野優樹(ありのひろき)

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有野優樹(ありのひろき)@ナレーター
正直に言います。話を上手くするため、映画を見たり本を読んだりのお金に当てます。直近、島に暫く住む予定なのでそちらの生活費に。